来たるべきカメラ
マイクロフォーサーズ
昨年オリンパスがカメラ部門を切り離し、事業を他社に譲渡するという衝撃的な出来事がありました。「オリンパス・カメラはなくなるの?」という不安がファンの間でも吹き荒れ、カメラ業界全体へも暗雲が立ち込めました。
現状ではバトンタッチする日本産業パートナーズ株式会社JIPが、オリンパスから映像事業を承継させたうえで、2021年1月1日付で映像新会社を発足するとのことです。カメラのブランド名がどうなるか等は不明ですが、とりあえずは、オリンパスのカメラは今年も昨年からのロードマップをもとに開発、販売が続けられていく模様です。JIPはソニーのパソコンVAIOを受け継いでいまも事業を継続中の企業なので、オリンパス・ユーザーの期待を裏切るようなことはしないと思います。順調に行けば、今後もOM-Dシリーズのカメラはバージョンアップを、好評の高性能コンパクトなズイコーレンズは、より幅広いラインアップを展開させてくれるはずです。 もう一方のマイクロフォーサーズ陣営の雄、パナソニックは今年新たな展開が期待されています。アナウンスではハイエンド機を優先的に出していく予定だそうで、おそらくフォーサーズよりフルサイズのマーケットに的を絞っているようです。
とはいえYouTuberの間で長らく絶対王者として支持されてきたLUMIX GH5の後継機がいよいよ発売されるという噂も現実的ではあります。長らく待たれてきたこの次世代機への期待は大きいのですが、時代はすでにフルサイズ・ミラーレス。ここ数年で多くのYouTuberはメインのカメラ機材をフルサイズにシフトしていきました。果たして一時代を築いたパナソニックのフォーサーズ・ミラーレスが市場に返り咲くことができるのでしょうか?
AI技術を導入するカメラ
カギを握るのはオートフォーカス。これまでずっとソニーの爆速オートフォーカスの後塵を拝してきたパナソニックですが、Lumix S5で示した被写体自動認識AFはカメラの新たな未来像を示すものでした。AIのディープラーニング技術によって、被写体を予測するカメラ。これはもはや「考えるカメラ」の嚆矢となるものです。今後カメラはAIを搭載し、撮影状況を把握、判断し、なにをどう撮るべきかを判断していくものとなるはずです。
これはパナソニックだけでなく、各カメラメーカー、さらにはAppleやGoogle等もすでに着目し、新たなデバイス作りを模索していると聞きます。
カメラユーザーとしては、どこまで人の領域に取って代わるのか、それも気になるところ。今後は急速にカメラの自動化が進んでいくような予感がします。
原点回帰からその先へ
今最も目を離せないカメラ・メーカーと言えば富士フィルムです。
カメラのトレンドがすっかりフルサイズへと移行する中、フジは一貫してAPS-Cフォーマットに固執しています(正確には中判機からチェキまで幅広いですが)。気が付けばカメラ本体、レンズともに結構なラインアップが出そろい、今後も後継機を続出させる様相を呈しています。昨年11月に発売されたX-S10は新たなシリーズの幕開けで、カメラ入門者からミドル・ユーザーまで幅広く親しまれる、撮る楽しみにあふれたAPS-C機です。
富士フィルムの強みは何といっても、フィルムシミュレーションでしょう。長年フィルム製造に携わってきたフィルムメーカーならではのフィルムのよさ、それが今日の富士フィルム製カメラのよさに直結しています。年配のカメラユーザーには懐かしく、若い世代にはデジタルにない暖かさ、つややかさを感じさせる富士フィルムのカメラは他社と一線を画する独自性を感じます。人とは一味違う写真を撮りたい方には、ぜひ注目していただきたいブランドです。
カメラのトレンド
今年は去年よりさらに動画撮影を強化したVlogger向けのカメラが増えるとみています。これもスマホで簡単に撮れるビデオ映像が世界に溢れ、動く映像を見たいという需要が急成長しているためだと思われます。また影響力のあるビデオ・ブロガーの映像制作技術やセンスの向上が目覚ましく、より美しい映像を提供する必要に迫られています。
昨年ソニーから発売されたZV-1は水準を超える美しい映像を気軽に楽しめる扱いやすさがウケています。ここアメリカでもしばしばストリート・ビデオグラファーがこのカメラ片手にスケボーの映像を撮ったりするのを見かけています。パナソニックからも同様のVloggingに特化したカメラが出ましたし、今年はどのカメラにも動画の質、操作性の良さなどが組み込まれるでしょう。昔は動画機能などオマケ程度のものでしたが、これからはカメラ単体に対する評価も動画機能の充実が大きなポイントになる時代なのです。
初心者にふさわしいカメラ
最新の各メーカーのラインアップを見ると、上級者よりの高級機に力を入れているのは明白です。しかしそれに乗っかる必要はありません。はじめてカメラを手にされる方には、ずばり使いやすさ中心で選ぶことをお勧めします。多機能、高性能はいいに決まっていますが、カメラを習い始めるのに、読むのも難しいカメラマニュアルを必要とするような機種は不要です。
各社から出ているエントリー機の最新機種を選ぶ、これがいいカメラを購入するコツです。なによりビギナーの使い勝手を第一に設計しているはずなので、操作に迷うわずらわしさもありません。新しい機種は最新の映像エンジンですし、上位機種から受け継ぐ優れた機能も期待できます。メーカーや販売店のキャンペーンの対象となることも多いので、お買い得であることも間違いありません。
技術進歩の著しい業界ですから、どの入門機でも、5,6年前の上位機種を凌ぐ性能を得ることができます。各メーカーから出る最新情報をキャッチし、よりアップデートされたカメラの実機を店頭で確認しましょう。
ポイントは、
1 手にして馴染むかどうか。
2 操作系のボタンや液晶の配置、デザインがわかりやすいか。
3 自分の求める機能を優先する。
例えば、オートフォーカス、暗所性能、シャッタースピード、レンズの明るさ、モニター、ファインダーの認視性、バッテリーの持ちなど。
4 最後にビギナーが見落としがちなのが、メーカーの将来性です。特にレンズ交換式のカメラの場合は、選択で将来のレンズ、周辺機器の揃え方も違ってきます。どのメーカーのどのフォーマットでいくのか、今後のカメラとの付き合いを視野に入れながら、慎重に選んでください。
おススメの入門機
個人的にはいま使っているパナソニックのLumix G8はビギナーにとって普通に名機と呼べる万能型ミラーレスです。マイクロフォーサーズはフォーマットが小さめなので、不安視する方もいるようですが、パソコンモニターで見る程度なら十分に美しい写真です。操作性もシンプルですし、ソフト的なバグも少ない。マイクロフォーサーズの利点で言えば、望遠、手ブレに強く、コンパクトでどこにでも持ち歩ける気軽な高性能機です。価格もフルサイズ機の半分以下で買えるので、その分で広角や単焦点レンズを買う方が、撮影の幅を広げることになります。
APS-C機ならフジフィルムのエントリー機、X-T200がおススメです。小型軽量で暗所にも強く、オートフォーカス性能も水準以上です。豊富なレンズ資産も選べる楽しさがあり、今後のステップアップにも役立つ一台です。
それでもやっぱりフルサイズが夢という方には、キャノンの EOS RPがお手頃です。上位機種譲りのスペックはビギナーに必要十分。それでいて文字通り破格のお値段でフルサイズが楽しめます。アメリカでは日本よりも安い、レンズキットが出ています。本体に24-105mmのRFズームレンズがついて$1299。クリスマスセールではそこからさらにディスカウントもあったようで、飛ぶように売れたそうです。
いずれのカメラであれ、最初の一台は、大げさに言えば人生を左右するかもしれない大切なもの。ぜひ検討を重ね、自分に合う最高の一台をお選びください。
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