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2021年8月6日金曜日

建物を見て楽しむ旅

サムズアップ・アメリカ!
アメリカン・アーキテクトの醍醐味


建築好きな人のためのアメリカ10都市巡り


建築物が好きな人にとって、アメリカを旅することは、目を見張るような実りある経験となるでしょう。2世紀以上の歴史を持つアメリカでは、スペインやヨーロッパの植民地時代の影響を受けた伝統的な建造物が数多く見られます。
私はアメリカに来て真っ先に教会建築の美しさに心奪われました。空を突くような高く細長い尖塔の伸びやかなライン、ゴシック調の壁、凝りに凝った壁面の彫刻など、見るものを魅了する壮大な建築様式にはその国の歴史が詰まっています。

いっぽう、賑やかな都市の中心部では、壮大な超高層ビルが建ち並び、巨大な都市のスカイラインを形成しています。ダニエル・バーナム、ルイス・カーン、ウォルター・グロピウス、フランク・ロイド・ライト、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ、フィリップ・ジョンソン、ザハ・ハディド、レンゾ・ピアノなど、世界的に有名な建築家の作品も多く、全米50州には幅広い建築様式が存在しています。

歴史的なスタイルがお好きな方も、現代的な美意識をお持ちの方も、アメリカにはたくさんの美しい建築物があり、あなたの発見を待っています。ここでは建築が好きな方には、特にお勧めの10都市をご紹介します。



ニューヨーク市(New York City)


まずは地元自慢ですが、やはり建築物でもニューヨークは全米随一の多様性を誇ります。
アメリカの作家カート・ヴォネガットは、1976年に発表した小説「スラップスティック」の中で、ニューヨークを「摩天楼国立公園」と呼んでいます。
実際、アメリカで最も観光客の多い都市であるニューヨークには、シュリーブ、ラム&ハーモンのエンパイア・ステート・ビルディング、ダニエル・バーナムのフラットアイアン・ビルディング、キャス・ギルバートのウールワース・ビルディング、ラインハルト、ホフマイスター&ウォルキストのアール・デコの象徴であるクライスラー・ビルディングなど、世界で最も印象的な高層ビルがあります。

しかし、ニューヨークが建築的に素晴らしいのは、超高層ビルだけではありません。ボザール様式のアンソニア・ホテルや、サンティアゴ・カラトラバ設計の世界貿易センター・トランスポーテーション・ハブ、トーマス・ヘザーウィック設計のハチミツの巣のようなビジター・アトラクション「ベッセル」など、新しい建築物も印象的です。
ニューヨークの建築物だけでも書き始めれば何時間もかかりそうです。また後日、NYの建築については掘り下げないといかんでしょう。



サンフランシスコ(カリフォルニア州)



東のニューヨークに対するのは西のサンフランシスコ。これは建物でも同様です。
サンフランシスコの急な坂道には、さまざまなビクトリアンスタイルの建物が並んでいます。その中でも最も一般的なのは、1800年代後半に建てられた、愛らしい出窓と装飾的なジンジャーブレッドの縁取りが特徴のクイーンアン・スタイルの家です。
最も写真に撮られているクイーン・アンは、アラモ・スクエアにある「The Painted Ladies」と「Haas-Lilienthal House」で、これらは一般公開されていることもあります。

サンフランシスコで見られるその他のビクトリアンスタイルとしては、ノブ・ヒルのグレース大聖堂に代表されるゴシック・リバイバルや、プレシディオ・ハイツ周辺でよく見られるチューダー・リバイバルなどがあります。
近代建築がお好きな方には、ウィリアム・ペレイラ&アソシエイツによるコンクリート、ガラス、スチールでできた近未来的なトランスアメリカ・ピラミッドや、フランク・ロイド・ライトが設計し、ニューヨークのグッゲンハイム美術館の前身とされるザナドゥ・ギャラリーがお勧めです。



ワシントンD.C.



国際色豊かなアメリカの政治の中心地であるワシントンD.C.には、ギリシャ、ローマ、フランス、イギリス、そして古代エジプトの影響を受けた建築物があります。
ローマのパテオンをモデルにした連邦議会議事堂とジェファーソン記念館は、ワシントンD.C.に威厳と重厚な雰囲気を与えている古典的なローマ様式の建物のひとつです。
ホワイトハウスは、アイルランド出身の建築家ジェームズ・ホーバンによって設計され、アイルランドのダブリンにあるジョージアン・スタイルの邸宅「ラインスター・ハウス」をモデルにしていると言われています。
また、リンカーン記念館は36本のドーリス式円柱で構成されており、紛れもなくギリシャ風のデザインであり、ワシントン・モニュメントの高さ600フィートのオベリスクは、エジプトの古代ピラミッドをモチーフにしています。

他にも、第二帝政様式で設計されたアイゼンハワー大統領府ビルや、ヴィクトリア朝時代の建築家ジェームズ・レンウィックによる中世の城のようなスミソニアン研究所など、興味深い建物がたくさんあります。




ボストン(マサチューセッツ州)


『清教徒の街」というニックネームを持つボストンの建築物は、1962年にイギリスからメイフラワー号でやってきた清教徒の入植者たちの影響を強く受けています。
街の大通りや狭い路地を散策すると、魅惑的なクラフトマン・バンガローや、重厚なジョージアン・チューダー、ビクトリアン・チューダーに驚かされます。

建築物では、アメリカの著名な建築家ヘンリー・ホブソン・リチャードソンが初めて手がけたトリニティ教会や、フェデラリスト様式のマサチューセッツ州議会議事堂、ファニエル・ホール、アメリカの革命家ポール・リビアのコロニアルハウスなどが見どころです。

また、コンクリートを多用し、複雑なフロアプランで知られるポール・ルドルフによるブルータリズム様式のボストン・ガバメント・センターやリンデマン・センター、フィンランド系アメリカ人のバウハウス派建築家エーロ・サーリネンによる宇宙船のようなクレスゲ・オーディトリアム、フランク・ゲーリーによる超現実的なレイ&マリア・スタータ・センターなど、注目すべき堂々としたモダニズム建築物が市内に点在しています。




ルイジアナ州(ニューオーリンズ)



ニューオリンズには、フランス、スペイン、カリブの影響を強く受けた建物が数多くありますが、
この街の建築の特徴を最もよく表しているのは、クレオールタウンハウスでしょう。1788年のニューオリンズ大火の後、フレンチ・クォーターに建てられたクレオール・タウンハウスは、有名なミルテンバーガー・ハウスに代表されるように、急勾配のパラペット付き屋根、アーケード、スペイン製の鋳鉄製バルコニーなどを備えた、ロマンチックな外観のレンガ造りまたはスタッコ造りの多層階の建物です。

クレオールのタウンハウスのほかにも、ここにはさまざまな時代様式の建物があります。
アメリカ最古の大聖堂であるルネッサンス様式とスペイン・コロニアル様式が融合したセントルイス大聖堂、地元の建築家ジェームズ・ガリエSr.が設計したパリ風のレンガ造りの長屋門「ポンタルバ・ビルディング」、蒸気船時代に船頭が建てた「ドゥルット蒸気船ハウス」など、ニューオリンズの多文化な伝統を反映した建物があります。




デトロイト(ミシガン州)


アメリカで最もよく知られているスカイラインを誇るデトロイトのダウンタウンは、19世紀末から20世紀初頭の建物がアメリカで最もよく保存されていることから、建築家や保存活動家から称賛されています。

19世紀末から20世紀初頭の建物が最もよく保存されているからです。アメリカで最も尊敬されている金持ち時代の建築家、ルイス・カンパーやゴードン・ライオッドがここで多くの仕事をしました。
著名なランドマークとしては、カンパーによるイタリア・ルネッサンス様式のブック・ビルディングやブック・キャデラック・ホテル、アルバート・カーンによるフィッシャー・ビルディングやウィルト・C・ローランドによるペノブスコット・ビルディングやガーディアン・ビルディングなどのアール・デコ様式の傑作、フィリップ・ジョンソンによるポストモダンのネオ・ゴシック様式のワン・デトロイト・センターなどがあります。




サンタフェ(ニューメキシコ州)


西部開拓時代の荒々しさを彷彿とさせるサンタフェは、建築的には北米の他の都市とは一線を画しており、それは紛れもないアドービ煉瓦の住居のおかげです。これらの赤茶色の泥レンガ様式の建物には、3つの主要なデザインがあります。
1つは、平らな屋根と角ばったエッジ、そして多くの場合、レンガで覆われた屋根のラインを特徴とするテリトリアル・リバイバル、もう1つは、粘土瓦の屋根、しっくいの壁、装飾的な鉄の縁取りを特徴とするスパニッシュ・リバイバル、そして最も一般的なプエブロ・リバイバルです。
最も一般的なプエブロ・リバイバルは、滑らかで有機的なフォルムと柔らかいコーナーを持つ建物です。後者の有名な例としては、パレス・オブ・ガバナーズ、ジョージア・オキーフ博物館、サンミゲル礼拝堂などがあります。




シカゴ(イリノイ州)



シカゴは、建築の実験の歴史が豊富です。1880年代から1890年代にかけて建設された、鉄骨構造を革新的に採用した超高層ビル「シカゴ派」スタイルの商業ビルや、1940年代から1970年代にかけて建設された、チューブ構造などの新しい構造システムを採用したタワー「セカンド・シカゴ派」の発祥の地でもあります。

ドイツ系アメリカ人のバウハウスの巨匠、ルードヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエの代表作である860-880レイク・ショア・アパートメントやイリノイ工科大学のS.R.クラウン・ホールなどは、ここで見ることができます。
また、バートランド・ゴールドバーグによるブルタリズムのマリーナ・シティや、タージ・マハル、アンコール・ワット、万里の長城など、世界的に有名な建築物の断片が内部に埋め込まれているネオ・ゴシック様式のトリビューン・タワーなど、見応えのある建築物があります。




チャールストン(サウスカロライナ州)


歴史的建築物に興味のある方には、チャールストンがお勧めです。チャールストンには、様々な建築様式の保存状態の良い遺産が数多くあります。

コロニアル様式のオールドエクスチェンジビルディングは、18世紀に市場、集会場、カスタムハウス、刑務所として使用されていましたが、現在はアメリカ独立戦争の娘たちの博物館となっています。
アメリカ独立宣言の4人の署名者のうちの1人、トーマス・ヘイワード・ジュニアが住んでいたジョージアン様式の2階建ての家、ヘイワード・ワシントン・ハウスの内部を見学して、時間をさかのぼりましょう。 
また、アメリカで最も古い耐火建築物であるギリシャ・リバイバル様式の耐火建築物は、アメリカで初めて国内で訓練を受けた建築家、ロバート・ミルズが設計し、1827年に完成しました。




カリフォルニア州(パームスプリングス)



ミッドセンチュリーモダニズムのメッカであるパームスプリングスは、カリフォルニア州南部のソノラ砂漠に位置する砂漠のリゾート地で、建築家のリチャード・ノイトラ、ジョン・ロートナー、アルバート・フレイが、最も有名な「砂漠のモダニズム」やインターナショナルスタイルの住宅を建てた場所です。

乾燥した日差しの強い地域の気候に合わせて設計されたこの地域の住宅の多くは、日陰のベランダ、張り出した屋根面、大きなガラスドア、広々とした屋外プールなどを特徴としています。
フレイの「パームスプリングス市庁舎」、ノイトラの「デザートハウス」、1967年にエルビスとプリシラ・プレスリーが新婚旅行をしたウィリアム・クリゼルの「ハウス・オブ・トゥモロー」、E・スチュワート・ウィリアムスが設計したフランク・シナトラの「ツインパームス」エステートなど、ベビーブーム時代の南カリフォルニアの生活を彷彿とさせる建物が目白押しです。




以上、駆け足でアメリカの建築物の見所をご紹介しました。これだけではなくアメリカ中、どの州にも自慢の建築物はひしめいており、建物好きな方にはたまらない物件の宝庫です。
どの州の何を目当てに見にゆくのか、いくつかに的を絞って広大なアメリカを彷徨ってみてはいかがでしょうか?

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