ポストイットの隠された真実

サムズアップ・アメリカ！

メモ革命だったポスト・イットの歴史

欧米では、ポスト・イット・ノートが、アイデアの進化と開花を象徴していることは、誰もが知っていることです。
エジソンが発明した電球がアイデアのシンボルであるように、ポスト・イット・ノートをイノベーションのシンボルとして掲げる人もいるほどです。

しかし、ポスト・イット・ノートが、他のイノベーションの96％と同じ運命だった、つまり完全な失敗に近いものであったことは、ほとんど誰も知らないことなのです。

ポスト・イット・ノートの開発に関する伝説のいくつかは、実際に存在することがわかりました。

伝説その1：当初の目的は超強力な接着剤のはずだった

これはどうやら本当のようで、1968年、3M社のスペンサー・シルバーは、航空機の製造に使用する超強力な接着剤の開発に取り組んでいました。

その代わりに、あるミスからアクリレート共重合体微小球という新しい接着剤が生まれ、これは弱い感圧接着剤だったのです。

しかし、この微小球は驚くほど丈夫で壊れにくく、表面に対して接線方向に付着するため、粘着物が残らず剥がして再利用できるというユニークな特性を持っていたのです。

伝説その2：初めは教会で讃美歌を記録するために用いられた

これも真実です。アート・フライは3M社に勤務しており、スペンサー・シルバーの再利用可能な接着剤の存在を知っていました。

彼はまた、教会の聖歌隊で歌っており、教会の歌集の中の讃美歌のメモをなくしてしまうという問題を常々抱えていたのです。
そこで、フライは、紙の裏面に粘着剤を塗って、残さず貼ったり剥がしたりできるようにすることを提案した人物になったのです。


試行錯誤

多くの人が知らないのは、何十年もの間、誰もこの製品を信じておらず、多くの人がこの技術の有益な用途を見つけるのに苦労していた、という事実です。

最初の発見の後、3Mの経営陣は粘着性のない接着剤に価値を見いだせず、そのため社内の上層部の支持を得られませんでした。

この状況は、1973年に経営陣が交代し、シルバーが新製品研究所の所長ジェフ・ニコルソンに「やってみよう」と説得するまで、5年間続いたそうです。

しかし、彼らが思いついた市場性のある製品のアイデアは、紙を貼り付ける再利用可能な掲示板だけでした。しかし、この掲示板は、売れ行きが悪く、採算が合わないということで、棚上げになったのです。

フライが「紙そのものを接着剤にしたらどうか」と提案した後も、この製品はさらに数年の開発期間を経て、接着剤を紙に付着させ、他のものに貼り付けても剥がれない方法を探しました。接着という概念は誰もが考えるように、「よく、くっ付く。くっ付いたら離れない」という固定観念があるので、再生可能な緩い接着剤の実用性など夢にも思わなかったのです。

そうして半信半疑のまま4年後の1977年、ついに実売のためのテストが始まりました。
しかし、ほとんど買ってくれる人はおらず、経営陣が長い間信じていなかったことがやっぱり正解だったと証明するような残念な結果となったのです。

究極の成功

しかし幸い、ニコルソンはそう簡単にあきらめなかったのです。売れないのは、製品が新しく、買う前にその価値を理解していないからだと考えたのです。

そこで3M社は、失敗から1年後の1978年にもう一度、企業に大量の無料サンプルを送り、試してもらい、その中から何人が追加で再注文したかを追跡調査することにしました。

すると、驚いたことに、サンプルを送った企業の9割近くが再注文し、ようやく需要があることが分かったのです。

ついに歴史が動いた

ポスト・イット・ノートが素晴らしいサクセス・ストーリーであることは誰もが知っていますが、忘れているのは、この製品がターゲット市場に到達するために、ようやく社内のサポートを得るまでに10年以上かかったということです。

時には、製品に価値を見出す社内の、熱心なチームとしての粘りが必要なのです。

イノベーションとして成功するために、正しい価値を示す方法を見つけるまで、製品を押し続け、改善し続けることが必要。そのことをポストイットの歴史は教えてくれるのです。