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2022年11月25日金曜日

必読の書:「The Art of Hapiness」

サムズアップ・アメリカ!
なぜ欧米でダライ・ラマは賞賛されるのか?




ダライ・ラマとして知られる世界的に有名な精神的指導者による著書、
『The Art of Happiness』は、幸せな人生を送るためのガイドブックです。と一行で表わしても本書の本質を微塵も伝えたことにはなりません。
ここには生きるということの難しさに対する、師なりの解答がありつつ、そこに至るさまざまな思索と祈りの帰結が、わかりやすい比喩や語り口で記されています。
その教えは額にシワ寄せて考え込むような複雑なものではなく、万人に行き渡る清水のような清廉さを備えたものです。

厳密にいえば、本著はダライ・ラマ自身が著したものではなく、精神科医のハワード・C・カトラー氏との共著となっています。
ゆえに宗教の本というよりは、生きるための指標をわかりやすく説いた人生指南書の側面が強いです。
しかしこれにより、西洋のキリスト教をバックボーンとした人にも理解しやすく、かつまたなぜここまで東洋の精神的指導者が、欧米で受け入れられるか、背景がわかるような本となっています。

以下の記事は、本書を読んだアメリカ人の感想をいくつかまとめて咀嚼したものです。
ダライ・ラマを知りたい、学びたいという人にはちょうど良い入り口になる本ではないでしょうか。



  『The Art of Happiness』  



大きな理念

幸せとは、心の状態であり、内なる満足感と平和を育む習慣的な思考法です。
人は、仏教徒が「正しい行動」と呼ぶ、優しさ、誠実さ、生命への尊敬の念から行動することで、幸せを育んでいます。
人間は本来、親切で、幸せで、平和な存在なのです。



この本では、ダライ・ラマは、しばしば質問と回答の形式で構成された教訓を提供し、共著者のハワード・カルターが提起し、翻訳しています。





人間の本質

ダライラマは、人間は本来穏やかで平和な生き物であると信じています。
彼は、攻撃的で利己的な行動は、条件付け、悪いお手本、基本的なニーズが満たされないときのフラストレーションから来ると信じています。


人間は何よりも自分の欲求にしか関心がないと考える人もいます。
例えば、生まれたばかりの赤ん坊を例にとると、赤ん坊は何もお返しをすることなく、ただ食べさせられ、着替えさせられ、世話されることにしか関心がないのです。

しかし、ダライ・ラマはこの見解に反論しています。
赤ちゃんは平等にお返しをすることはできませんが、お返しをすることはできます。
赤ちゃんは本能的に大人と目を合わせ、微笑み、笑い、その結果、人は強い喜びと安らぎで満たされるのです。
利己的で欲深いとも言われる授乳行為も、乳房の圧迫を和らげ、母親の健康や快適さを増進させるのです。こういった事物に対するポジティブな捉え方が、大切であると師は説いているのだと思います。



可塑性

人は変われる:人間の脳は順応性があり、偉大な創造性を発揮します。
異なる考え方をするよう心を訓練し、幸福をもたらす思考に集中し、他者への配慮を促すことで、脳に実際の物理的変化が生じます。脳は新しい神経回路を形成し、新しい結合を作り出します。
脳が幸せな方向へ再配線されると、かつては動揺していたものが力を失います。
自分の持っているものに感謝する気持ちが優勢になるのです。脳はネガティブになる代わりに、ポジティブになるように配線されているのです。

ポジティブに考え、行動するだけでなく、ネガティブな思考や行動を控えることも、この変革の重要な要素です。
人は、欲しいものを手に入れるために嘘をついたり、盗んだりすれば幸せになれると思うかもしれませんが、こうした行為はネガティブな信念、罪悪感、低い自尊心を煽るものです。人生を成長と幸福の機会としてとらえれば、どんなにつらい状況でも耐えられるようになります。





苦しみと障害

幸福を阻害するものは、もちろん障害や苦しみです。
『The Art of Happiness』では、多くの人が自ら苦しみを作り出していると指摘しています。必要のないものに憧れ、短期的にしか利益を得られない選択をし、自分の状況を結果的に否定ととらえているのです。

変革のための一つの方法は、快楽ではなく、幸福に焦点を当てることです。

ダライ・ラマは、適切なものを望むことと、不幸をもたらすものを望むことの例を挙げています。
仕事や健全な社会生活を営むために、自動車が必要な現代社会に暮らす人は、自動車を所有したいという欲望が現実的です。
リーズナブルで便利なクルマを買えば、周囲の環境に合わせた生活がしやすくなり、より幸福で充実した人生になる可能性があります。
しかし、注目を集めるため、他人との優越感を得るため、あるいは金銭的な負債やストレスをもたらすために非常に高価な車を購入することは、一時的な、瞬間的な快楽にしかならないのです。
長い目で見れば、その人を不幸にし、不健康にするでしょう。 その場合、車は便利な必需品ではなく、むしろ重荷になるのです。

幸福よりも快楽を選んだり、この2つを取り違えたりすると、苦しみが生まれます。
より幸福な人生を送るための鍵は、肉体的な快適さや一時的な喜びよりも、長期的な幸福をもたらすものを基準に人生の重要な決断をすることです。

さらに、平和と幸福を感じるためには、人生のあり方を受け入れることが重要です。
人生には、仕事、学校、家事などのネガティブな面と、趣味や活動、友人や家族との付き合いなどのポジティブな面の、バランス感覚が必要です。
人は100%欲しいものを手に入れられるわけではありません。受け入れること、そして与えられたものを最大限に活用することで、人は困難な状況に耐えることができるのです。





引用句
...どんなに暴力的であっても、どんなに嫌なことがあっても、内外の対立を解決する究極の方法。それは、「穏やかで思いやりのある人間」この基本的な性質に立ち返ることにあると信じています。



感想

The Art of Hapiness『幸福の技術』は、幸福を求める万人が読むべき最高の本の一つです。
多くの本が読者を怖がらせないためにスルーしたり、ごまかしたりしている、「変化に対する最も重要な教訓」を本書は述べています。

幸せは、あなたの考え方を変えるために、献身的で集中した注意からしか得られません。
達成する価値がある他のものと同様に、それは仕事(=行動・実践)を必要とします。不幸の理由を外部の状況や人に求めることは、現実を否定することなのです。

ダライ・ラマの思想は、何があっても幸せでいることができる完璧な教えです。
貧しい家庭に生まれ、チベットの精神的指導者にまで上り詰めた彼は、15歳で亡命し、国から追い出され、本来導くべき人々から切り離されました。
それでも何も恨むでもなく、悲観的にならず、今日まで人々を導いてこれたのは、師の不動の仏教的生命史観が確たるものだからです。

本書の共著者であるハワード・カルター医学博士は、ダライ・ラマのより哲学的で比喩的な教訓について、心理学的な視点と優れた解説を提供しています。
この本から学ぶために、チベット仏教について何も知る必要はありませんし、興味を持つことさえ不要です。仏教の教義に踏み込むことなく、心を幸福に整えることだけに焦点が当てられています。
万人に受け入れられる人生指南のヒントがここにあります。



人々よ、行動を起こせ

憎しみや怒りに満ちた思考が頭に浮かんだら、その思考を特定し、チャレンジしてみましょう。
何がその考えや反応の引き金になったのか、尋ねてみてください。
「私は過剰反応しすぎだろうか?」
「相手は意図的に私の気持ちを傷つけようとしたのだろうか?」
「恨みを持つことは、自分自身が受けた痛みや不幸に、正当性があるものだろうか?」


時には、状況を違った角度から、おそらくは外部の視点から見ることで、感情を変えることができるかもしれません。
また、ネガティブな感情は、睡眠障害、筋肉の緊張、胃の不調などの身体的な不調を引き起こし、自分に害を与えることも覚えておくとよいでしょう。
人は、否定的な感情がもたらす結果が、自分の幸福に値するかどうかを評価しなければならないのです。


ダライ・ラマが語る数々の教訓を集めたこの本は、単に戒めや教えを説くという事よりも、穏やかに生きるすべを伝えてくれる・・・そんな人生の指南書として多くの人を魅了しているようです。
日々の生活で、つまづいたり、困難に陥ったときは、この本で読んだ内容を思い返し、生きる本質を再定義するのが良いのではないでしょうか。



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