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2020年5月29日金曜日

極上の彫刻芸術をアウトドアで


アートなアメリカ探訪編
 グラフィック・デザインの仕事をしていた関係上、アメリカに於ける「アート・カルチャー」にずっと興味を持っています。ことにニューヨークはアイコニックなポップカルチャーが盛んで、街にはアートが氾濫しています。そんな中、私も時間さえあれば自身の創作活動と同時に、インスピレーションを刺激してくれる、アート探索に余念がありません。

 ニューヨークに来たら、一度は訪れたい有名な美術館、博物館はたくさんあります。
 私もマンハッタンに住んでいた頃、休みの日になると、メトロポリタン美術館やグッゲンハイムに出かけていました。でもそれらはもう無数のガイドがありますので、そちらの方にお任せするとして、私はこのブログで日本人にはマイナー、でも知る人ぞ知る「アートなスポット」をご紹介していこうと思います。興味のある方は、ぜひお付き合い下さいませ。




まず第1回はけっこうおなじみなところから。

「ストーム・キング・アートセンター」  ”Storm King Art Center”


 ここに行くときは、ものを見て理解する際の既成概念を捨ててください。
 そもそも抽象アートはその作品の意味を読み取ろうとすると、えてして見誤ります。もちろん製作者が深いメッセージを込めた抽象彫刻、抽象絵画もたくさんあります。それは真摯に受け止めるべき。しかしアートたるもの、中核的には作者が何を意図したかのみならず、見るものが作品をどう捉えるか、が肝要な作品鑑賞スタイルだと思います。わからなくてもOK。自分なりの解釈が浮かべば、その気持ちを大事にしよう、それが抽象アートだと思います。

 皇居とほぼ同じ規模の、広々としたな緑地のなかに点在する巨大な野外モニュメント群が圧巻の、アウトドア美術館です。
 のどかな大自然のなか、鉄、木材、鉱物、その他人工的に加工されたさまざまなな素材、自由な発想で作られた立体アートがみる者を圧倒します。日頃都会や人混みの中で働いている人にこそ行ってほしい、爽快な野外スカルプチャー・ガーデンです。
 いったい何をモチーフにして作られたのか、理解を超える抽象アートの数々。(考えるな。感じろ。:ブルース・リー談)
 その多くが室内美術館におさまらないビッグスケールで展示されているので、訪れた人を驚かせます。ミュージアム・ヒルと呼ばれる広大な丘にポツポツと展示された彫刻は、遠目には大きさがわからないのですが、近寄るとそのスケールがわかります。
 ここのコレクションのアーティストは、、新進作家から有名アーティストまで世界中から集められています。そのほとんどが、近・現代の作家で、世界的彫刻家ヘンリー・ムーアやアレキサンダー・カルダー、アメリカを代表する巨匠マーク・ディ・スヴェロ、日系人アーティストのイサム・ノグチらの作品も見られます。

 展示物はたっぷり距離をとって設置され、なだらかな丘陵のあちこちに点在しているので、ゴルフ場を歩くような気分で、ゆったり一日かけて鑑賞するのがベストです。
 近くに寄って作品自体を鑑賞する前に、遠景から自然の中に屹立する異物としてみると、また違った解釈もできそうで、面白いです。
 ぶらぶら歩き見るのもいいですが、列車のようなシャトル・カートが常に施設全体をぐるっと解説付きで巡回していますので、それに乗って好きな場所で乗り降りすると効率的です。レンタルの自転車も用意されていますので、サイクリングを兼ねて利用するのも手ですね。
 駐車場から少し歩くと、大きなお屋敷みたいなメインハウスがあります。近くに見晴らし抜群の展望スペースがあり、広々としたストームキングの丘陵が見渡せます。
 建物の中は抽象アートの展示物が多数展示され、解説のパンフレットでどんな作品なのか確認しながら見て回れます。施設全体の地図も置いてますので、コースを確認してから、野外アートに向かうのがいいでしょう。みやげものや軽食もここで買えます。
 ただし園内での食べ歩きはマナー違反。屋外の景色のいいところに、ランチできる場所がありますので、お弁当持ってピクニック気分で訪ねてみるのがグッドです。

数ある展示物の中でも、ひときわ目を引くのが、これ。
Menasha Kadishman作による “Suspended’と題された鉄の塊。この大きさでなんとも絶妙なバランス。思わず近寄って触りたくなる作品です。

こちらはAlexander Libermanによる作品 “Iliad” 一見すべり台の遊具のようですが、360度どんな確度からみても掴みどころが有りません。これはワタクシ勝手に「郵便ポストの反乱」と脳内解釈しました。
  イサム・ノグチの作品”Momotarou”は訪れる人を何故か魅了する、不思議な暖かさがあります。桃太郎の桃を割った形の巨大な花崗岩は、わざわざ四国で制作して持ってきたものだそうです。 よく子どもたちが引寄せられるようにこの彫刻で遊ぶ姿が見られ、微笑ましいです。 
   このほか、大小様々なオブジェもたくさん用意されています。さりげなく森の片隅に置かれた長ーい木造細工や、茫洋と立ち尽くす、異形の鉄塔や石塔。ゆらゆら揺れる特大モビール、うねうねと波打つ形の芝生や生け垣。一見これがアート?を首をかしげるのも現代アートならではの楽しみですね。今後も順次、新しい作品が加えられていくそうなので、再訪するのが楽しみです。子供のようなまっさらな気持ちで、これらの芸術パワーを浴びに行って下さい。




住所: 1 Museum Rd, New Windsor, New York
お問い合わせ:www.stormking.org
 
入場料は大人18ドルから。子供は8ドル、幼児は無料です。

*コロナウイルス対策規制により、現在休館中です。ご来場の前にホームページでスケジュールをご確認ください。


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