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2020年8月16日日曜日

カレーを食べるアメリカ人

 注目される日本カレー



 いまアメリカでもカレー料理が再注目されています。カレーの香辛料ターメリックの主成分クルクミンが体にいいと評判を集めているのが一因と思われます。

 クルクミンは抗菌作用があるので、今の御時世が追い風になってる、とNew York Times誌は報じていました。それ以前から、クルクミンは鎮痛作用、高血圧や抗腫瘍、肝機能の促進、糖尿病にも効果があると喧伝されていて、サプリメントとしても注目され始めました。複数のソースを読むと、科学的裏付けは確かにあるということです。

 こういった風評はアメリカでもすぐ広まる昨今、どんな食べ物が体にいいとかも、あっという間に伝わってきます。いっときアメリカのセレブがターメリック入りのラテなどを紹介したのがきっかけで、健康志向の女性たちの噂に火が付きました。

 そんな折も折、テレビを観ていたら、料理番組でメキシコ・スタイルのカレーが紹介されていました。激辛カレーだそうですが、料理人は健康の効能をしきりに謳っていました。「ターメリックは免疫効果抜群です。アンチエイジングに欠かせない。美肌効果がある。解毒作用もあり、私が推薦した病院ではカレースープがメニューに加えられた」というのです。ここまでは納得できます。しかしさらに「うちの子は毎日、ターメリック入りの料理を食べて頭が良くなり、ハーバード大に入った」などと言われると、

ほんまかいな〜。 とつい眉につばをつけたくなりました。

 とはいえ、アメリカでもカレーといえば本場はインド。これは常識です。とくにニューヨークなどの大都会にはインド人の経営するカレー料理店がたくさんあり、人種、民族を問わず人気があります。しかしちょっと地方に行くと、様相は一変します。

「カレー? 知ってるけど食べたことない」「匂いがきつくてちょっと駄目かも」「わしゃ人生で一度もカレーなど食ったことないわい」

 思いの外、人気がないのです。一度食べるとわかってもらえるのでしょうが、なかなかとっつきにくいのが現状のようです。

 うちの家族は、私が作る日本のカレーに昔から馴染んでいます。   数年前、本場インド式のカレーをレストランでいただいたときは、子どもたち首を傾げて、「これもカレーなの?」と納得の行かない様子。日本人が日本人向けに作ったカレーをスタンダードと思い込んでいたようです。

 また私の元同僚はアメリカ人ですが、両親が生まれも育ちもイギリスはリバプールのアイリッシュ系。小さい頃から母親のつくるインド・カレーを食べていたといいます。イギリスではインドカレーが広く浸透しているのですね。しかし日本のカレーとの違いは知りませんでした。彼はうちの娘と逆の意味で、日本のインスタントカレーを食べて「これが日本のカレー?」と怪訝な表情でした。

 私が「カレーは日本の国民食だ。日本人は週に一度はカレーを食べる」とちょっと大げさに言うと彼はびっくりしていました。彼の概念では日本イコール寿司、魚なので、あのとろっとした黄色く辛いカレー・ルーとご飯の組み合わせはミスマッチに思えたのでしょう。

 とまれ彼も味に馴染んでくると、「これはカレーじゃないかもしれない、でも美味い」と言ってくれました。ちなみにその時使ったのがハウス・バーモントカレー。彼はペンシルバニア、バーモント出身なので商品名に食いついてきました。うちの田舎にそんなカレーはないぞ」って。ええ、あるはずありません。私が「りんごの産地にあやかってつけた名前だろう」と言っても納得行かない様子でした。

 そんなことはどうでもいいのですが、このあいだ、日本食料品店にいった時、このハウスのカレーを爆買するアメリカ人を見かけました。ちょうどセールの日で、特売コーナーに固形カレーのパッケージが山積みされていたのですが、その山を崩さん勢いで白人のおばさんがかき集めているのです。ショッピングカートには50個あまりのカレーが積み込まれ、他には目もくれずレジに並びました。

「そんなにお好きですか」思わずそう聞きたくなるのを抑えました。失礼ですよねそんな聞き方。

 しばらくして駐車場に行くと、そのおばさんの車らしきミニバンを見かけました。中にはおじいさんと小さな黒人と白人の子供たちがいました。勝手な想像ですが、みんな血がつながっていなように見えます。それで私はあのカレーはどこかの施設とか、給食など、そういったところで利用されるものなのだろうと推察したのです。

 こうやってじわじわ日本のカレーはアメリカにも浸透しているのかな、なんて思った次第です。

 そういえばもう一つ、いまネットフリックスやアマゾン・プライムで日本の映画やドラマがアメリカでも見られるのですが、面白いことを聞きました。娘の友だちが、日本のドラマでカレーを食べるシーンがやたら多いと指摘したそうです。

 ええ、それは言えてるかも。この間観た「ファイナルファンタジー・光のお父さん」でも毎回カレーが出ていましたからね。日本人は無自覚ですが、外から見るとちょっと異常なくらいカレー好きの民族なのかもしれません。きっと日本のカレーがアメリカでブレイクする日も遠くないのではないでしょうか。


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