2020年8月9日日曜日

ニューヨークでウサギを飼う

うさぎ記念日 


 8月8日は我が家にうさぎ兄弟がやってきた記念日です。ちょうどまる4年になります。

 この二匹はLion Headsという品種で、日本ではこれによく似たライオンラビットがポピュラーです。親戚のようなものですが、ごらんのとおり、耳が大きく顔の周りの毛がたてがみのようにふさふさとライオンのように伸びています。全体に毛足が長く、お尻のあたりの毛もわさわさ伸びては抜け、綿帽子のように床を漂います。ブラッシングしてやると喜ぶのですが、季節によってものすごい量の抜け毛になります。兄弟で舐めあって毛づくろいもしますが、この種は毛玉を飲み込んでお腹を壊しやすいので注意が必要です。

 凍らせたパンプキンのシャーベットが好物で、これには消化を助け、胃の中の毛玉を排出させる効果があるので、常備しています。ニンジンはさほど好物ではなく、気が乗らないと「フン!」とそっぽを向かれます。基本、ウサギは干し草と水さえあれば生きていけるのですが、野生と違ってデリケートな体なので、ペレット状の野菜やビタミン入のものを適宜与えます。

 ウサギは概ねおとなしく飼いやすいペットと言われますが、犬や猫のように人なつっこい生き物ではありません。性格はじつにマイペース。こちらからかまってやらないと距離は縮みません。かといっていきなり抱っこしたり、くすぐっても逃げられます。見た目は可愛いのですが、基本ツンデレで、じゃれついてくれたかな、と思った次の瞬間、ダッシュで隅っこに逃げ込まれたりします。根気よく付き合うことが必要な生き物です。

 とくにうちのウサギ兄弟は生い立ちにトラウマがあって、はじめは懐きにくかったのです。

 彼らは、とあるニューヨークの地方農家で生まれました。かなり変わった農夫だったそうで、牛、馬、羊、鶏などのついでにウサギも多数飼っていました。あるときあまりに増えすぎたウサギに、何を思ったのか、柵を開放して野放しにしてしまったのです。周りは野良猫、野犬をはじめキツネやラクーン、上空にはコンドルが舞う野生の世界です。飼われていたうさぎたちはどうやらそいつらに追われ、森で散り散りになったといいます。そのなかにまだ幼いウサギ・ブラザーズもいました。二匹はどんなに怖い日々を過ごしたのでしょうか。草食動物のウサギに攻撃性は一切なく、ただ逃げるだけの本能しかありません。

 近所の心ある人が動物レスキューのボランティに通報して、逃げたウサギを一羽一羽保護していったそうです。そのなかにウサギ・ブラザーズもいました。

 土手のくぼみで発見されたときは、互いにピッタリ身を寄せ合って震えていたそうです。まだ生後数ヶ月だったといいます。

 その話を人づてに聞いた家内が、ぜひ飼いたいと申し出ました。ちょうどうちの娘が思春期にさしかかり、悩み多きときだったので、癒やしを求めていたのです。

独特の警戒フォーメーション。こんな格好で互いに身を守り合うのです。


 動物レスキューの施設に保護されていた二匹を見て、妻と娘は即座にアダプトを決めました。大急ぎでケージや住むスペースを用意し、彼らを迎え入れたのが4年前の8月8日。

 二匹は兄弟ですが毛色が対照的です。白と灰色の方はストーミー、黒と茶色の方はチューウィと名付けました。スター・ウォーズのストーム・トゥルーパーとチューバッカから取ったものです。

 いまや二匹はすっかりウチの家族の一員となって、幸せに暮らしています。ときに外で犬が吠えると、条件反射でビクッと震えて、トンネルに逃げ込むのは、幼少時のトラウマのせいでしょう。いまでも二匹は頻繁に互いに身を寄せ合って、周囲を伺う癖があります。聴覚が発達しているので、人には聞き取れない音がしても嫌がって、激しく足で地面を打つ癖があります。いわゆる足ダンですね。日がな一日、腹ばいになって鼻をヒクつかせていますが、バナナやパパイヤなどのデザートが出たときは、飛び跳ねて全身で喜びを表現します。

 とっても可愛くて癒やされるこの生き物と、ニューヨークの片田舎で出会えたことはとてもラッキーでした。気難しい年頃の子供達もウサギと遊べば心が和み、家族共通の話題にも事欠きません。ウサギたちに感謝しながら、これからも大事に育てていきたいと思います。

  

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