2021年1月2日土曜日

カメラ業界今年の展望と期待

 2021年のカメラ予測



 新しい年を迎え、カメラの世界もいよいよ新時代に突入しようとしています。あなたは今年どんなカメラに期待していますか。

 ニコン、キャノン、ソニー、三つ巴のフルサイズ・ミラーレス競争に拍車がかかるのか、それともAPS-C機に新展開があるのか。はたまたパナソニックやオリンパス、富士フィルム、ペンタックスらがどのような戦略で上位に挑むのか、興味は尽きません。

 時代の流れから、これまで4半世紀にわたってカメラ業界を引っ張ってきた一眼レフ機が急速に開発、製造ペースを落とすとみられています。それに伴い、旧機種の販売価格も一部を除いて大幅な下落も囁かれています。決まったメーカーで一眼レフのレンズ資産が豊富な方は、機種交換のチャンスだと思います。

 一方でこれからカメラを趣味で始めようという方は、安くなったからと言って、一眼レフ機に飛びつくと後悔するかもしれません。時代はミラーレス主流へと確実に進んでおり、ミラーレスならではのビギナー向け利点もこれからどんどん発展していく時期です。最新テクノロジーの恩恵を受けるなら、やはりミラーレスで決まりでしょう。

 かねてから私の主張は「カメラは軽量小型にすべし」です。これは業務用も含め、すべてのカメラに言えることです。それに尽きると言ってもいいくらいです。いくら性能がいいカメラでも重く大きいカメラを扱えるユーザーは少数派です。ただでさえスマホにシェアを奪われて減少する一途のカメラユーザーを少しでも取り戻すには、カメラのコンパクト化しかほかにすべはないと思うのです。

 限られたプロやハイアマチュア相手に事業規模を縮小してでも、今の路線(重たい、大きい、でも高画質)を貫くというならそれも結構です。しかしもし、より多くの写真好きを取り戻したいなら(あるいは増やしたいなら)小型軽量化に路線を進めるべきです。


フルサイズ・ミラーレス

 フルサイズ一眼は確かにとても魅力的なものが多く、プロカメラマンや評論家、ユーチューバーらがこぞって絶賛するのは当然です。でもその割には売れ行きに反映されていません。むしろカメラ全体のバランスが崩れ、高額高性能のフルサイズ一辺倒、頭でっかちの販売体制が気になります。

 以前キャノンは上位機種から下位まであらゆるラインアップを全方位で揃える戦略でしたが、もはやそこまでの体力はないようです。ドル箱だったパワーショット・シリーズには欠番が増え、売れてる順にかろうじてバージョンアップしたものが数種存続している、そんな現状です。

 ミラーレスはここ数年、注目度は抜群ですがそれほどカメラ市場を活性化させたかというと、そうでもありません。CIPAによると、2019年デジカメの総出荷台数は、前年比およそ78%で約15万台。内訳はレンズ一体型が前年比78%、676万台です。レンズ交換式も同様で、前年比約78%の846万台と下降気味です。レンズ交換型では一眼レフが前年比68.0%と大きく縮小したものの、ミラーレスはなんとか95.6%と1桁減といった有様です。ちなみに交換レンズは前年比83.6%の1424万本だったとのことです。

 決算は出ていませんが、2020年の出荷見通しでは、デジタルカメラ総出荷台数を前年比76.7%の1167万台としたものの、それをやや下回る見込みです。そうなると高価格帯のフルサイズ中心でカメラ業界を回してゆくのに疑問を抱く関係者も少なくないようです。カメラ全体の発展のためにはフルサイズ機のトップエンドを発展させる必要はあります。しかしこの現状で行くと、2021年22年には息切れするメーカーも出る可能性があり、極めて危うい舵取りが続いていくのではないかと思われます。


小型フルサイズへの期待

 去年ソニーが出したa7Cはフルサイズとしては画期的なコンパクト化を図ったとして話題になりました。しかしこの記録は早晩塗り替えられるでしょう。これ以前に出ていたSIGMA fpが今のところ最小サイズのフルサイズ機(外形寸法112.6×69.9×45.3mm、質量はボディ単体370g)ですが、今後さらに小さいのが出る可能性が大です。



カメラマーケットの裏事情

 スマホカメラとフルサイズカメラの最大の違いはレンズです。カメラメーカーの重要な収益源はカメラ本体より交換レンズにあります。それぞれ特性を持ったレンズをとっかえひっかえすることで、違った写真表現ができる。この醍醐味が写真ファンを引き付けてきたわけですから、この一定数の顧客を切り捨てるわけにはいきません。カメラメーカーの矜持をもってこのレンズ制作は今後も続けられるとは思います。ただ生産コストと労力が需要に見合うかというとそれは苦しい未来が待っている現実も否めないでしょう。

 そういった見方から、カメラメーカーの中には大きく路線変更に踏み切るところも出てくるかもしれません。

 ありえないことでしょうが、個人的にはカシオあたりがカメラ事業を復活させて、スマホカメラのデジタル的特性を活かした、コンパクトな高性能機を出してくれたら面白くなるかもしれません。あるいはこれもないでしょうが、アップルが映像事業を拡張させ、iPhoneと連動させた、より高度なビデオ兼カメラ機器を開発すると、面白いものが出てくるような気がします。

 こうなってくるとカメラメーカーはますます変革を余儀なくされますね、間違いなく。

 個人的にはカメラメーカーに頑張って欲しいのですが、光学技術がソフト的処理技術に凌駕されることはないと思っていた数年前とは、もう事情が違います。あと10年、いや数年でカメラは想像もしないものに変わっているかもしれません。たとえばAI技術の導入で、素人がファインダーを覗いていても、カメラのなかに組み込まれたプロ・フォトグラファーの撮影手法がオートで作動し、プロ並みの写真が撮れてしまう、とか。


市場活性化の条件

 カメラは今後ソフト的な技術開発で差が出てくるでしょう。ソニーのAI技術、とくにオートフォーカスの進化は大方のカメラファンの予想を良い意味で裏切り、驚異的な発展を遂げました。世界最速0.02秒ってもうそれ以上要らないでしょってレベル。さらに瞳フォーカスは人から動物まで領域を拡げ中。こうなると、特定のモノ撮りにも対応し、撮影者の狙いを予測して、その物体に最適なフォーカスや明度、被写界深度で撮ってくれるカメラも出てきそうな気がします。

 さらに考えられるのは、複数レンズの搭載。これやると今度はカメラの方が、あとからスマホを追いかける形になりますが、利点があるなら、出てきても不思議ではありません。複数のカメラを連動させることによって、より目的に叶った合成写真がカメラ内で生成されるのです。問題はソフトによる処理によって生じる電力消費、熱問題などでしょうか。でもこれも技術的に不可能ではないので、少しづつクリアしていけると思います。

(注:開発担当さんゴメンナサイ。外野で言うのは簡単ですが、実作業では難関山積み、そんな簡単にはいくはずありませんよね。業種は違いますが、音響メーカーでスピーカーなどを開発している知人に夢のような未来型ヘッドフォンの話をしたら、「そんなのできるわけねーだろ!」と怒鳴られました)


PENTAXの矜持

 このようなデジタルが全盛に向かうさなか、PENTAXが打ち出した一眼カメラの原点回帰とも言える光学ファインダー維持の宣言は注目に値します。

 ペンタックスは今後もペンタプリズムを通した撮影にこだわり、「現実の光を見て、感じながら撮る」そういったカメラを作り続けることを約束してくれました。

 確かに初めて一眼レフカメラのファインダーで見た世界は本当に正直で、見たままの映像を残してくれました。昨今のデジタル処理されたカメラの写真は、実際目で見たものより、鮮やかすぎたり、逆に抑えすぎた演出が目につく傾向があります。それに慣らされると、みんなきれいな写真ばかりになって、撮る側が甘やかされてしまいます。

 昔は撮っても撮っても失敗が続き、やっと満足に撮れた一枚がやけに誇らしく感じたものです。そんな人とカメラの付き合い方が少なくなった昨今、マニュアルでアナログな撮り方を楽しむカメラはずっと存続していただきたいものです。

 ペンタックスの一眼は使ったことがありませんが、ファインダー撮影独特の臨場感を追求する姿勢は好感をもてました。今後が楽しみです。

まとめ

 さて今年期待される各社のカメラの予想はどうなっているのでしょうか。


SONY

 今年のソニーで確定しているのは、最初の四半期に新しいハイエンドカメラを発表するってことです。巷では「a9ナントカ」となるはずの新型機で、目玉はオーバーヒートなしで8k30pの動画が撮れるということ(らしい)です。4kが成熟する前にもう一足飛びで8K!

 そして第2四半期で待望のa7 IVの登場が予想されています。より高画素化が図られ、画像処理エンジンも最新、より高精細な動画性能、EVFやインターフェースもより良いものに改良されるとのことです。


CANON

 フルサイズではR5の好評を受け、よりリーズナブルな下位機種にも期待が高まります。ソニーに奪われているシェアをえぐり取るには、さらに戦略的な新機種が望まれるところです。たとえば、ハイレゾショットなどを組み込んだ初心者向けの超小型フルオート機。徹底した軽量化を図りカラーバリエーションも豊富な普及型フルサイズ・ミラーレスなんかが出るとグッドです。

 キャノンの懸念は、今後EOS Mのラインナップをどうするのでしょうか。存続か、廃止か。大方の見方は遠からず新しいAPS-Cレンズ規格が出ると予想しています。そうなると昨年末にでたEOS KISS M50 IIはどうなるんだって話です。もうこれで打ち止めでしょうか。新たなランズが出ていない現状を見ると、どうしても購入をためらってしまいそうです。


NIKON

 ミラーレス化で一番遅れを取ったニコン。去年はZ7 II、Z6 IIと同時に出したので、上位機は一休み。今はレンズのラインアップを充実化することが急務と見られています。今年はZマウント用のレンズが自社以外からも数種以上が出されるという話です。レンズを揃えるのと同時に期待されるのは、キャノン、ソニーを上回るハイエンド機もさることながら、同じマウントのレンズを共用できるDXフォーマットのAPS-C機に期待がかかります。Z50が好評だっただけに、これに連なる上位、下位両機種をぜひ見てみたいものです。


 以上、フルサイズ・ミラーレスでしのぎを削る三社の今年を展望しました。次回はそれ以外のメーカー各社の動向を見ていきたいと思います。



 

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