2021年1月18日月曜日

最強の初心者カメラ

小さな巨人:SONY a7C 




 昨年は魅力的なミラーレス・カメラが続々と登場しました。とくにフルサイズのカテゴリーではソニー、キャノン、ニコンが競ってラインアップを充実させてきたので、買う側はオプションが豊富で、うれしい悩みが増えた形です。
 そんな中で、初心者が買える(あるいは買うべき)フルサイズ機はあったでしょうか? いやフルサイズ機は経験を積んだ上級者のためのカメラだと思っている方もいるようですが、必ずしもそうではありません。今回ご紹介するソニーのa7Cはまさにビギナーにうってつけのフルサイズ・ミラーレス・カメラなのです。


SONY a7C
 いつも思うのですが、ソニーaシリーズと書くときに、アルファはaじゃなくて斜体時のαなんだよな、と思ってしまいます。元々はミノルタから受け継いだ看板みたいなものなので、変えようがないのでしょうが、書くときはちょっと面倒です。
 ともあれ2006年、ソニーから初のaを冠したカメラが発売されて以来、たゆまぬ研究と開発の結果、同社はいまやデジタルカメラのトップメーカーとして君臨するようになりました。
 その最新の成果がa7Cに凝縮されていると思うのです。いまこのカメラのボディを見てみると、改めてフルサイズ・センサーを積んだカメラでもここまでコンパクトになるのかと、感慨ひとしおです。
 中にはAPS-C機の a6000シリーズをちょっと分厚くしただけじゃないかという人もいますが、やはりここまで軽量小型にこだわった作りは大変なものだと感じます。
 
 たしかにデザインはa6000シリーズとほとんど同じで、機能や外観は非常に似通っています。
 しかし大きなフルフレームレンズを装着した状態では、全く違う感覚になるのはなぜでしょう。大きなレンズとは不釣り合いかもしれませんが、そもそもこのa7Cはそういったレンズを選ぶタイプのカメラではありません。
 明らかに動画撮影を意識した作りはバリアングル・モニターとその周辺のポート類の細かな配置具合で分かります。ポートの開閉部は小さなドアのように精巧にできています。マイクポート、オーディオジャック、USB-C、SDカードスロット、そしてマイクロHDMIポートが絶妙に配置されているのです。
 また、バッテリーとSDカードが別々のスロットに入っていて、一つのフラップの下で一緒に なっていないところも細かいけど気配りが感じられます。これにより、カメラを三脚から取り外さなくても、SDカードを素早く交換することができます。そのSDスロットを1つではなく2つにしたのも正解。これは、a7Cの記録時間を増やすだけでなく、同時バックアップを行う必要性から待望されていたスペックです。



 いろいろいい点を述べていきますが、忘れないうちに、問題点も指摘しておきましょう。多くの人から指摘されていますが、モニター上のメニューの配置がわかりづらいのです。一つの設定にたどり着くまで数回層のタッチ操作が必要で、もとに戻るのにも手間がかかりすぎます。慣れるまでとっさの操作は難しと思ってください。初めてカメラを手にする人には慣れが必要でしょう。ベストはグリップを握った状態で、親指一つで、タッチスクリーン操作ができることですが、現状これは不可能なようです。この問題はa7Cに限ったことではなく、ソニーのカメラ全体に言えることですが、なかなか改善されません。そろそろ抜本的なインターフェースの置き換えが必要ではないかと感じています。

 しかしそれを補って余りある性能を実感できるのがこのa7Cの素晴らしいところ。
 フルサイズカメラでありながら、別売のシューティンググリップを付けて、片手で動画撮影ができるんです。軽量化に加えて5軸手振れ補正ユニットが内蔵されているからできる業です。
 またフルサイズのレンズ特性を生かした高いISO性能が圧巻です。感度は100~51,200、さらに204,800まで拡張できます。APS-Cでは目立つノイズも最小限に抑えられ、5軸手ブレ補正と相まって、夜間でもほとんどオートISOで破綻のない写真に仕上がります。
 全体の性能に関しては、多くの点で大人気機種ソニーa7 IIIによく似ています。それでいて世界で最も軽く、最も小さいフルフレームカメラとして完成させたのは素晴らしいことです。
 カメラ愛好家からはSony a7cには目を見張るようなスペックはないと言われますが、個人的にはSony a7cのハンドリングがこの軽視を補って余りあると思っています。




スペック

 スペック自体は、言われるようにかなり基本的なものです。

24MPフルフレームセンサー

30pの4Kビデオ機能

100〜51,200のISO範囲

10fpsバーストモード

693点AFシステム

ファインダーカバー率100

2.36mドットEVF

3" 921kドットの多関節タッチスクリーン

Wi-FiとBluetoothを内蔵

本体424グラム

740ショットのバッテリー駆動時間


 ソニーa7cのバッテリー駆動時間は、このカメラの特筆すべき機能の一つです。これほど小型のフルフレームカメラで、1回の充電で750枚近くの撮影が可能。これはすごい。



ボディとデザイン

 このカメラはマグネシウム合金で作られています。ボディのグリップは良いですし、タッチスクリーンは、すばやく精密に反応します。バリアングル画面は、垂直方向の撮影と垂直方向へ軽快に動き、ビデオブロガーにとって最良のハンドリングが期待されます。 


 実際、ソニーのa7 IIIよりも容積は2割ほど小さく、動画には最適な取り回しができるよう設計されています。これが可能になった理由の一つは、EVFがボディ上部ではなく、カメラ背面の左側に配置されていることでしょう。ソニーのa600シリーズのカメラを使ったことがある人なら、このファインダーもすぐに慣れるでしょう。

ビデオ性能

 本機は30pまたは24pで4Kビデオを撮影できます。より良いフレームレートを必要とする場合は、最大120fpsでフルHDビデオを撮影することができます。30分以上の撮影が可能で、これからビデオブログをやる人にとっては非常に頼もしいスペックです。
 またS-LogやHLG/HDRで記録することも可能です。動画撮影中でも高速ハイブリッドAFが作動しますし、リアルタイムアイAFやAIによるリアルタイム追尾AFなども搭載されています。
 前述したように、このカメラは明らかにブロガーを意識して作られているので、のちのちレンズ選びにもそれほど困ることはないでしょう。




まとめ

 ソニーa7cは出て間もないので、当分値下げは期待できません。アメリカでa7cの価格は現在Amazonで1,800ドル程度(本体のみ)。標準キットレンズ付きで2,100ドルが相場です。個人的にはもうちょっとスペックを下げてでも、CANON EOS RPと競合するくらいの価格を期待していたのですが、それは今後の下位機種に期待するべきでしょう。価格相場は当分変わらないと思われるので、買い時は今。次のバージョンアップを待つ利点はないと思ってください。
 とにかくこのカメラはフルサイズ・デビューしたい人、高品質な動画を撮りたい人に最適なカメラです。本文では省きましたが、他の追随を許さないソニー自慢の超高速瞳オートフォーカス、リアルタイムトラッキング、最高約10コマ/秒のAF/AE追随高速連写、撮像領域の約93%をカバーする693点の像面位相差検出AFセンサー、コントラストAF枠425点、野外撮影に頼もしい防塵防滴仕様など、上位機と並ぶ機能が満載です。ぜひ店頭で手に取ってそのポテンシャルを確かめてみてはいかがでしょうか。



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