どんなタイプのカメラを選ぶか
カメラを選ぶ基準はたくさんありますが、まず第一に決めたいのは、使う目的です。何のためにカメラを買うのかによって、機種はかなり違ってきます。
かりに人物をスマホよりきれいに撮りたいというのなら、フルサイズ・カメラと単焦点レンズの組み合わせを推す人もいるかもしれません。旅カメラとして風景中心に使いたいなら、軽量小型のマイクロフォーサーズは選択の筆頭にあげてもいいでしょう。
このように使用目的によって、まずカメラ選定をするのが常道かと思います。
でも意外に多いのが、「いや私は被写体を選ばず、とにかく写真を趣味としてやっていきたい。でもビギナーとして、また予算の制限も考慮しながら、できるだけ入門機としてオールマイティな、使いやすいカメラが欲しい」、そんなタイプの人です。
なかなか贅沢な欲求ですが、カメラメーカーさんはそういったゾーンの人こそ取り込みたいと考えているはずです。カメラ人口が減少していく中で、カメラを趣味として継続的に購入してくれる新規の顧客は得難い希望の星です。そのようなビギナーが満足できるカメラをどのように選ぶのか、それが問題です。
とりわけ重視したいのは将来性です。特に一眼レフ、ミラーレスなどのレンズ交換式のカメラは、レンズマウントがメーカーによってそれぞれ異なるので、メーカーごとに互換性がありません。(厳密には近年マウント・アダプターの発達でかなり互換性がひろがりましたが、それでも買ってみなけりゃわからない、相性などというものもあります)
ニコンの一眼レフ、フルサイズカメラ対応のFマウントは1959年発売以来ずっとカメラの歴史を支えてきましたが、現在はフルサイズ・ミラーレス用のZマウントの開発・販売に注力しています。長年のニコンユーザーでFマウントのレンズ資産が豊富な方ならいざ知らず、これからニコンを使っていこうとする方なら、迷わずZマウントのカメラを選ぶことをお勧めします。
とくにニコンのミラーレスはフルサイズとAPS-Cが共通のマウントなので、将来レンズやカメラを買い替えたり買い足したりしても、レンズの互換性に困ることはありません。今のところZマウントのレンズ・ラインアップは正直乏しいのですが、キットレンズでも評判が高く、今後出るレンズにも期待を寄せていいいと思います。
キャノンのマウント・システムはちょっと複雑です。EFレンズ、EF-Sレンズ、RFレンズ、EF-Mレンズと現在4種類のマウントに分かれていて、同じキャノンでも互換性がないものがあります。たとえばEF-SレンズはAPS-C機のレンズなので、フルサイズ機には使えません。なのでレンズ購入時には注意が必要です。いま開発、生産に最も注力しているのはフルサイズミラーレス専用に開発されたRFレンズです。いまサードパーティ製も含め、様々なラインアップを構築中で、数年後にはキャノンレンズの主流となる規格です。そのあおりを受けてAPS-Cミラーレス用のEF-Mレンズの開発が停滞しているのは、ユーザーにとって誤算だったでしょう。今後の動向が注目されます。
このようにカメラ・メーカーごとにレンズ仕様の違いがあるので、とくにこれから本格的なカメラを買おうという方は、先を見据えて、どのカテゴリーのカメラではじめるか、よく検討されることをお勧めします。
まとめてみますと、レンズ交換式のカメラを選ぶ場合、下のような区分でカメラを選ぶことができます。
1 マイクロフォーサーズ
2 APS-Cの一眼レフ
3 APS-Cミラーレス
4 フルサイズの一眼レフ
5 フルサイズ・ミラーレス
1から5、それぞれ敢えて一台入門機を選ぶとすると、2021年現在では、以下のようになりました。
1 Olympus OM-D M5 mark III
小型軽量で上位機種譲りの最新センサーや手振れ補正機能が内蔵されています。定評あるコンパクトなM.ZUIKOレンズとの組み合わせでちょっとしたバッグにも納められ、常時携帯も可能な軽快さです。本体同様、レンズもリーズナブルな価格で揃えることができ、入門機としては一番扱いやすい部類のカメラです。
2 Pentax KP
とにかくカッコいいのです。ガッツリボタンやダイアルが装備されていて、いじっているだけでも愛着がわいてきます。入門機には珍しいマグネシウム合金製で、しかも防塵防滴設計。さらに5軸5段分のボディ内手振れ補正機構内蔵。そして何といっても目玉は最高ISO 819200というけた違いの超高感度撮影が可能な事。
3 Fujifilm X-S10
昨年は年の前半にでたX-T200を一押ししてきましたが、今年の富士フィルムはこのクラス並みいるライバル機を抑えて、いま一番アツイ本機をご推薦いたします。まず富士フィルムミラーレスとしての転換点となるであろうインターフェース&外見の大幅刷新。本体の小ささはそのままにグリップが大型化し、ダイアル類も他メーカー同様の一般的なコマンドダイアル導入となりました。さらにボディ内手振れ補正も付き、フィルムシミュレーションも上位機X-T4などと同等の充実ぶりです。
4 CANON EOS 6D Mark II
2017年発売のフルサイズ一眼ですが、値段もこなれてきたので、今が買い時です。フルサイズならではの圧倒的描写性能を初心者でもすぐに体感できる完成度の高いスタンダード機。2620万画素で最高ISO感度40000。大きなファインダーで生の被写体を見ながら撮るというカメラの基本を体感できるフルサイズ入門機です。豊富なレンズ・ラインアップはシグマやタムロンからも買いやすい価格で出ています。
5 SONY a7C
フルサイズ・カメラの常識を覆した本格コンパクト・タイプのフルサイズ・ミラーレスカメラ。兄弟機にしてベストセラーのa7 III譲りのオートフォーカス性能、シャッタースピード、低照度撮影、そして多彩な動画フォーマットが扱えるビデオ撮影機としても最優秀の部類に入る小さな巨人、それがa7Cです。本機にはコンパクトな単焦点レンズや明るい標準ズームが似合い、街中でも自撮り動画が容易に撮影できます。
カメラの特徴から選ぶ
いっぽうカメラのプロフィールを重視する選び方もあります。
1 スナップショットに強いカメラ
2 オートフォーカスの高性能なカメラ
3 暗所性能が強いカメラ
4 手振れ補正の効くカメラ
5 動きのあるものに強いカメラ
6 野外環境に強いカメラ
7 動画性能の高いカメラ
などです。これ以外にも操作性の高さや、軽さ、小ささを判断基準にする選び方もあるでしょう。カメラによっては通信機能の強みを謳ったり、マニアックなユーザーならシャッター音の相性で最終決断する人もいます。
以上のカメラも個別に、また別の機会で随時ご紹介していけたらと存じます。
まとめ
カメラの全世界総合の出荷台数は2010年の一億二千万台を超えたのが頂点でした。その年を境に出荷台数は毎年大幅に下降を続け、昨年はついに一千五百万台を切りました。これはスマホ・カメラの発達で、カメラはもういらないという一般認識が広がったためです。ゆえに若い世代には、カメラ自体使ったことがない人が急増しています。
しかしアメリカでは複数のアナリスト、企業統計の専門家らは2020年がカメラにとってのどん底期であり、今年からわずかではあるが、業績は持ち直し、年々微増が期待されるとしています。その要因としてまず挙げられるのが、中国におけるカメラの需要です。中国では若い世代を中心に、初めてカメラを使ったのがスマホ経験という人が多く、そこからステップアップするカメラ購入者が増えるだろうというのです。輸出入の貿易規制などが緩和されるとさらに普及は拡がり、特にフルサイズ・ミラーレスの上位機種を中心にマーケットが活性化される可能性を指摘しています。
また各社ミラーレスカメラを中心に据えた開発・販売展開で足並みがそろうのが、これから数年ということで、マーケットとしての安定期に入ると見られています。試行錯誤だったここ数年間に得たノウハウから、これから出されるカメラはかつての欠点、弱点を克服してより良いものになっていくでしょう。私が期待するポイントは、
1 画像処理エンジン
各社の画像処理エンジンは数年ごとにバージョンアップされてきました。そのたびにISO性能が上がってノイズが減ったり、オートフォーカスの精度が向上したり、さらには色の再現加工技術ががカメラ内できたりと、これまでにない発展性が求められています。
2 インターフェース
使い勝手の良しあしは、とくにユーザーからのフィードバックで改善されます。今もずっと議論され続けているチルトかバリアングルかもモニター問題。これはさらに両方のいい面を折衷した新スタイルの可動モニターが期待されます。
またタッチスクリーンが標準になりつつある現在、さらなるユーザーフレンドリーなグラフィック表現が可能になったので、メーカーそれぞれのセンスが試される部位となりそうです。
3 ファームウェア
これからのアフターケア、サービスはファームウェアが主流になってくるでしょう。これまでにない大胆な機能向上、バージョンアップが、ファームウェア上で施されていくように期待しています。数年前に技術的には難しかったことも、今はカメラにプリインストールされるコンピュータチップ次第で、いくらでも機能拡張が可能になります。あまりやりすぎると新しいカメラを買ってもらえないので、メーカー側は今は控えめですが、そのうち堰を切ってファームウェアの充実化が図られる時代が来るでしょう。
ほかにも様々なカメラの進化、改革の可能性があります。上級機の最初搭載され、数年後に下位機種にそれが反映されるパターンが早くなり、あるいは上位から下位まで同時に新機能搭載、というような流れもできるかもしれません。
願わくば今年はより多くの入門者がカメラを手にして、その楽しさを体験していただきたいものです。