2023年3月4日土曜日

驚異のキツツキ

サムズアップ・アメリカ!
キツツキの頭はとても堅いという話





科学者は長い間、キツツキが脳にダメージを与えることなく、木の幹にくちばしを何度も打ち付けられることを不思議に思っていました。
想像してください。仮に人間に嘴があったとしても、あの勢いで顔を樹木に叩きつけたら、ものの数回で頭がクラクラし、そのまま続けたら脳震盪では済まなくなるでしょう。
そのため、長らくキツツキの頭蓋骨は衝撃を吸収するヘルメットのような働きをするのだろうという考え方が支配的でした。
しかし、ある研究者たちはこの考え方に反論し、彼らの頭はむしろ硬いハンマーのような働きをする、と言っています。
実際、研究者たちの計算では、衝撃を吸収してしまうと、キツツキが餌をついばむのに支障をきたすことが分かっているのです。

しかし、あるとき『カレント・バイオロジー』という生物学専門誌で、研究者たちはこの考え方に反論し、彼らの頭はむしろ硬いハンマーのような働きをする、と発表したのです。
実際、研究者らの計算では、ヘルメットのような衝撃吸収性があれば、逆にキツツキの能力は損なわれることになるはずだと述べているのです。





ベルギーのアントウェルペン大学のSam Van Wassenbergh氏は、「3種のキツツキの高速度ビデオを分析した結果、キツツキは木にぶつかったときの衝撃を吸収しないことがわかりました」と述べています。

Van Wassenbergh氏らはまず、3種のキツツキについて、突きの際の衝撃の減速を定量化しました。そのデータをもとに生体力学モデルを構築したところ、頭蓋骨に衝撃吸収性があれば、鳥類にとって不利になるという結論に達しました。

しかし、もし頭蓋骨が衝撃吸収材として機能しないのであれば、猛烈な勢いでつつくことによって脳が危険にさらされることになるのではないでしょうか?

ところが実際は、そうではないことがわかったのです!
一回一回のつつきによる減速ショックは、サルやヒトが脳震盪を起こす閾値を超えていますが、驚くべきことにキツツキの小さな脳はそれに耐えることができるのです。
ただしヴァンワッセンベルグ氏によれば、キツツキは、例えばフルパワーで金属をつついた場合、間違いを犯す可能性があるとのことである。
しかし、キツツキが普段木の幹をつついているのは、頭蓋骨がヘルメットとして機能しなくても、脳震盪を起こす閾値をはるかに下回っているのです。






「衝撃吸収機能がないからといって、一見激しい衝撃を受けたときに脳が危険にさらされるわけではありません」とヴァン・ワッセンベルグ氏は言います。
「我々の計算では、脳震盪を起こした人間よりも低い脳負荷が示されたので、分析された100以上の小突きの最も強い衝撃でさえ、キツツキの脳にとってはまだ安全であるはずです。」

この研究結果は、メディアや書籍、動物園などで長い間広まってきた衝撃吸収説に反論していると、Van Wassenberghは言います。
「動物園でキツツキを撮影していると、親が子供に「キツツキは頭に衝撃吸収材が組み込まれているから頭痛にならない」と説明しているのを目撃したことがあります。「しかしついにこのキツツキの衝撃吸収の神話は、今回の発見で崩れ去りました。」

進化の観点から、今回の発見は、なぜ、もっと大きな頭と首の筋肉を持つキツツキが存在しないのかを説明するかもしれないと、彼は言っています。
より大きなキツツキはより強力なつつき音を出すことができるが、脳震盪を起こすと大きな問題が生じる可能性が高いのです。

また、今回の発見は実用的な意味もあるという。
技術者はこれまで、キツツキの頭蓋骨格の解剖学的構造をヒントに、衝撃吸収材やヘルメットを開発してきたのです。しかし今回の発見は、キツツキの解剖学的構造が衝撃吸収を最小化することを考えると、それがあまり良いアイデアではないことを示しています。

さらにヴァン・ワッセンベルグ教授のチームは、最近行った別の研究で、キツツキのくちばしの上半分と下半分を交互に動かすことで負荷が最小限に縮小されることを発見したと述べています。現在、研究チームは、くちばしの形がどのようにペッキングに適応しているかを研究しているとのこと。

キツツキ恐るべしです。硬い樹木に穴を穿つのが習性とはいえ、長年を経て培った適応能力は、人間の想像を超える域にまで達していたのですね。


付記
本研究は、アントワープ大学、フランス国立研究振興院、欧州連合(EU)のHorizon 2020プログラムの助成を受けて行われました。



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