2021年10月24日日曜日

俳優の伝記が売れてます

サムズアップ・アメリカ
マシュー・マコノヒーの自伝



「ダラスバイヤーズクラブ」や「インターステラ」などのハリウッド映画で知られる俳優マシュー・マコノヒー(テレビなどではマコノへーと発音されてます)が自伝を出して、その内容の面白さから異例のベストセラーとなっております。

話題性もさることながら、この本は昨年、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーに選ばれました。辛口で知られるニューヨークタイムスはタレント本などは無視するか一刀両断に切り捨てるかどちらかが多いのですが、この本は結構好意的に取り上げられたようです。

アカデミー賞受賞俳優の率直な意見、型破りな知恵、そしてより満足度の高い生活を送るために苦労して得た教訓、などなどを通して、何百万人もの読者にインスピレーションを与えた人生を変える回顧録、って触れ込みです。(さらに本書は権威あるガーディアン誌の年間ベストブックのひとつに選ばれました。)


「マコノヒーの本は、彼がしたように人生の教訓に取り組むよう私たちを誘い、重要なのは勝つことではなく、理解することであることを教えてくれる。(マーク・マンソン(『The Subtle Art of Not Giving a F*ck』の著者)。)



Amazonのレビュー欄から引用させていただくと、

「私はこの人生に50年いて、42年間その謎を解き明かそうとし、この35年間はその謎を解く手がかりを日記に記してきました。成功や失敗、喜びや悲しみ、驚嘆したことや大笑いしたことなどを書き留めてきた。どうすれば公平になれるか。どうすればストレスが少なくなるか。どうすれば楽しく過ごせるか。どうすれば人を傷つけずに済むか。傷つくことを減らすにはどうしたらいいか。良い人間になるには。人生に意味を持つにはどうしたらいいか。どうすればもっと自分らしくなれるか。」

ああ、こう書かれると著者が成功した著名人だけに耳を傾ける人はグッと増えるでしょう。


「最近、私は勇気を出してこれらの日記を読み返してみました。私が経験した物語、学んだこと、忘れたこと、詩、祈り、処方箋、重要なことについての信念、素晴らしい写真、そして大量のバンパーステッカーを見つけました。私は、当時も今も、自分をより満足させてくれる確かなテーマ、生き方を見つけました。それは、人生の課題に対処する方法とタイミングを知っていれば、つまり、避けられないことにどうやって相対するかを知っていれば、私が「グリーンライトをキャッチする」と呼ぶ成功状態を楽しむことができるということです。」

グリーンライト、それは人生の青信号のことだそうです。赤や黄色の信号は誰も好きじゃ無いけど、青信号を見つけることは楽しい事なのだとか。


「私は、砂漠への片道切符を使って、この本を書きました。この本は、私の50年間の見たこと、見たこと、感じたこと、考えたこと、かっこいいこと、恥ずかしいことなどをまとめたものです。優雅さ、真実、そして残忍さの美しさ。雨粒の間を縫うようにして、逃げたり、笑ったり、濡れたりした事など・・・。


「願わくば、それは美味しい薬であり、診療所に行く代わりにアスピリンを数錠飲むことであり、パイロットライセンスを必要としない火星への宇宙船であり、生まれ変わらなくても教会に行くことであり、涙を流して笑うことである。

これはラブレターなのです。人生への。

また、青信号をより多くキャッチするためのガイドでもあり、黄色や赤も最終的には青になることを理解するためのガイドでもあります。

幸運を祈ります。」


マシュー・マコノヒーのファンならずとも引き込まれる文章世界。これはつい手に取ってみたくなると言うものです。


お時間のない方のために、以下のちょっとした感想と読書のヒントだけお読みください。きっと買って読んでみたくなると思いますよ。







マシュー・マコノヒーの回顧録

自称日記魔のマシュー・マコノヒーは、少年時代から集めてきた手書きのメモ、日記、詩、短編小説などを駆使して、500ページに及ぶ魅力的な回顧録『グリーンライツ』を発表しました。
マコノヒーは、明らかに文章で自分を表現することに慣れており、正直な個人的探求から得られる豊かな内面を育んでいます。
その結果、労働者階級出身の子供が大当たりしてハリウッドの名声を手に入れたという、率直で親しみやすい回顧録ができあがりましたが、その旅の間も目を見開いて知恵を働かせていました。


『グリーンライツ』では、マコノヒーの性格や個人的な価値観の形成に焦点が当てられています。第1部では、彼の子供時代を感傷的にならない程度に明確に扱っています。父親に嘘をついたこと、ツリーハウスを作ったこと、夏休みにバイトをしたことなどの出来事は、彼に成功するための生き方を教えてくれたものとして描かれ、その姿は俳優となった彼の演技に反映しているのだそうです。そこで過去を振り返り、マコノヒーは、重要なのは「気づき」だと悟ります。


「グリーンライトをキャッチするには、スキル、意図、文脈、配慮、耐久性、先読み、回復力、スピード、そして規律が必要です。人生の中で赤信号がどこにあるかを見極め、赤信号が少なくなるように軌道修正するだけで、より多くの青信号をキャッチすることができます。また、青信号を獲得し、そのための技術や設計を行うこともできます。意志の力、努力、そして自分の選択によって、より多くの緑の光を作り出し、最も抵抗の少ない道を未来に予定することができるのです。私たちはグリーンライトに責任を持つことができるのです」。

うーん、信号の例えはなんだかこじつけっぽいのですが、それでも平易な文体の中でそういった意味合いが溶け込んでるので、全く違和感なくスーッと入ってきます。


言葉はシンプルで、ときに陳腐な表現もありますが、マコノヒーはそれらを美しくアレンジし、効果を上げています。
人生に対する個人的なアプローチの開発は、著者がハリウッドでのキャリア形成という課題に適用したときに、それらはすぐに試されることになると言います。
マコノヒーは私たちに彼の旅を案内し、どこで赤信号にぶつかったのか、そしてさらに重要なことにその理由を指摘します。
そして、自らの失敗の責任を認め、そこから何を学んだのかを説明するという特別なステップを踏んでいます。
失敗談も赤裸々でこれほどまでに堂々とした告白をすることは、印刷物としては珍しく、本当に勇気のいることだと思います。
その結果、この物語には素晴らしい含蓄が盛り込まれ、苦労して得た知恵が読者にも伝わってくる内容です。これは、いわば大人になるための教訓本でもあるのでしょう。


マコノヒーは天性の才能の持ち主であり、たまたま適切な時期に適切な場所にいた本能的な俳優であると言ってもいいかもしれません。
1993年にリチャード・リンクレイター監督が制作した『Dazed and Confused』に出演した際、彼はこの「レッドライト/グリーンライト」の哲学を初役の準備にも応用したそうです。マコノヒーは、この映画のプロデューサーからの突然のオファーを受け、気がつくと一晩中その役と物語に没頭したそうです。マコノヒーは、自分の人生経験の豊富な記録の中からある記憶を引き出してきて、役作りに生かす作業を説明しています。





マコノヒーのキャリアは、輝かしく、若い時期からその才能は認められていました。現段階までいわば高速列車のように役者街道をひた走っています。
1996年にジョン・グリシャムの「A Time to Kill」を映画化した作品の主人公に抜擢されたことで、突然ハリウッドの寵児となったマコノヒーは、有名人になると心理的なめまいを感じるようになります。
その結果、ニューメキシコ州の修道院に引きこもり、祈りと反省の日々を送ったこともあります。いわば彼は「Gone Up」の後に「Go Within」を選んだのですが、これはおそらく、さらなるグリーンライトを求めてのことでしょう。

彼の書き下ろした伝記が多くの人に支持されているのは、日記マニアであったおかげで積み重なった過去の豊富なデータ、それに彼の実直な性格が反映された結果だったのではないでしょうか。





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