2020年6月15日月曜日

米国人に高評価な日本映画

日本映画:アメリカでの評判




 日本の産業は半世紀前ごろから急成長をとげ、欧米に肩を並べる分野も、急速に増加していきました。特に自動車産業やエレクトロニクスの分野では、世界トップクラスを達成。日本という小さな島国を大いに瞠目させたものです。

 では文化の面ではどうでしょう?


 今回は日本映画について考えてみます。

 日本の映画は、どれほど欧米に知られているのでしょう。

 ニューヨークではNPO団体「ジャパン・ソサエティ」により年に一度「ジャパン・カッツ」という日本映画を上映する催しがあります。これまでも日本の古典的名作から新作まで長編・短編を問わず、意欲的なラインアップが紹介されてきました。近年ここで多くのアメリカ人が日本の映画を知り、口コミ、SNSを通じて日本映画の魅力を伝えるようになってきました。日本を知ってもらうために、映画という媒体は非常に影響力があります。今後も様々な場所で、同様のイベントが行われてほしいものです。



 アメリカ人は今日、日本映画をどれほど認知しているでしょうか。

 残念ながら映画という分野においては、まだまだ知られていないのが現状です。

 そこで今回、英語圏で高評価を得ている日本映画はどんなものなのか、ネットを中心に調べてみました。およそ20の映画に関するウェブサイトで取り上げられた日本映画と、日本映画のみ紹介するウェブサイトのおすすめやランキングなどを集計し、紹介頻度の高い日本映画をピックアップしてみました。


 ベスト5は以下の五作品です。集計数からみると、これらはほぼ互角なので順不同です。タイトルの下の文章は、欧米人による、代表的な解説・コメントをまとめたものです。


1 七人の侍(1954)

黒澤明という天才のみがなしえた偉業。神がかった名作。映画のあらゆる面白さが詰まった異常なサムライ映画。映画史上、これほど長い批評期間を持っても揺るがない価値ある映画。


2 おくりびと(2009)

死者に対する礼節と、それに矛盾しないシステムを監督と役者の力で表現できた成功作。ほろ苦い悲しみとユーモアに包まれた、心優しい作品。人生とその選択について前向きに考えさせられる。


3 バトルロワイアル(2001)

暴力的で、今なお物議をかもす、非常に影響力のある映画。何よりもコンセプト性の高いアクション・ブラック・コメディ。見事に病気でねじれた傑作。控えめに言って迷惑な映画であり、ハリウッドにも刺激を与えた。


4 東京物語(1953)

あらゆる傑作映画の中で、もっとも親しみやすい感動的な作品。世界中の人がこの映画を観れば争いやネガティブな心はなくなるでしょう。この映画が持つ価値は非常に普遍的。小津安二郎の視線が、観客を同化させ、否応なく心の奥深くを動かされます。


5 千と千尋の神隠し(2002)

おそらく私が見た中でもっとも独創的な映画だ。宮崎にかけられたシュールな魔法は何年たっても私から離れない。奇妙なキャラクター、めまいを誘う不思議な世界は映画でしか味わえない極上の体験。


 次にあげた作品も上位五作に次ぐ、高評価作品です。


6 生きる(1956)

印象的で実存的。悲しいがパッションに溢れ、かつ希望に満ちている。


7 誰も知らない(2004)

二度とみられないほど悲しい家族の映画。でも一度はみんなが観るべきです。


8 切腹(1962)

今まで見たサムライ映画の中で、最も美しく感情的な映画。


9 たそがれ清兵衛(2004)

サムライの時代の終焉を描き、静かな感動と余韻をもたらします。


10 リング(1998)

米国版は、このオリジナルの真っ白で震える恐怖を超えることができません。


 11位以下に続くのは、「羅生門」「砂の女」「ゴジラ(第一作)」「たんぽぽ」「AKIRA」「HANABI」「オーディション」「万引き家族」などです。


 こうしてみると、日本人が選ぶ人気映画のランキングとは、大きな開きがあることがわかります。もちろん、欧米に紹介される映画は限られていますので、一致しないのは当然ですが、欧米の人が日本映画になにを求めているかの指標にはなるはずです、

 興味深いのは、日本で邦画ランキングを作れば必ず上位に入るはずの、寅さんシリーズが、海外ではほぼまったく紹介もされていないということ。これは不可解です。今の世の中、あのような日本人像は受け入れられないのでしょうか? (あるいは日本喜劇特有のユーモアが伝わりにくいのかも。)

 また日本のアニメ映画もジブリ作品以外は、日本人が思うほど評価されていません。(日本映画の興行成績を動かすコナンやドラえもんは圏外! ちなみにアニメ部門では1位=千と千尋・・・、2位=もののけ姫、3位=ハウルの動く城です。)

 先に挙げたベストテンには古典に属するものが多く、2009年以降の作品がほとんどないのは残念です。

 近年の日本における興行ランキングと比べても、海外との比較では全く反映されておらず、そのギャップが気になります。アメリカ人は字幕映画が苦手といわれますが、黒澤映画のように、多くの優れた映画には普遍性があります。なのでまだ世界に紹介しうる佳作は、たくさんあるのではないかと思います。

 今回、英語圏の人が賛美した、日本映画の共通する傾向を挙げるとすれば、キーワードは「インパクト」と「やさしさ」です。それも単に感情を煽るものより、じわじわ後から効いてくる奥深さが好まれていると分析します。皆さんはどう思いますか?

 今後の日本映画界の奮起を期待したいと思います。


引用先:IMDb.com, Rottentomatoes.com, Business Insider.com, theculturetrip.com


0 件のコメント:

コメントを投稿