2020年6月17日水曜日

アメリカの転職事情1

ニューヨークで職探し

 



 日本であれアメリカであれ、いま雇用環境はかつてない危機的状況です。

 私はこれまでアメリカで正規、不正規、バイトを含めて20種以上の職業を経験してきました。同時期に副業をしていたせいもありますが、それでも日本では考えられないほど転職しました。アメリカでは転職が当たり前で、私の経歴も驚くほどではありません。

 転職動機も様々ですが、一度もトラブルや失敗が元でクビになったことはありません。いや、正確には一度だけ、就業一週間目にミスを指摘され、解雇されたことがあります。米国では雇用主によっては、いとも簡単に従業員を解雇します。契約条項に、解雇理由を述べる必要はない、と規定している事がほとんどです。それはとても勉強になり、以後私は常に仕事はバックアップ体制を取るよう心がけました。具体的には、副業をするとか、再就職のための連絡網を維持するとかです。



 いま日本のみならず、世界じゅうの雇用情勢が不透明な時代です。

 休職中の人、完全に職を失った人、また今現在仕事を持っていても、将来に不安のある方は少なくないでしょう。

 私も現在複数仕事を持っていますが、メインである運転業務の一つが完全にストップしてしまいました。幸いフリーランスでやっているグラフィック・デザインと、通信関連の仕事に助けられている状態です。この時代、バックアップ体制がないと一瞬で無収入になるのです。


 過去数十年にわたってアメリカで転職を繰り返してきた者として、仕事に関するいくつかのアドバイスをしたいと思います。ときには私自身が雇用側に回って、採用面接を担当したこともあります。 

 今回は、雇う側、雇われる側、双方の立場から、アメリカで働く場合のヒントを述べさせてもらいます。(なお、本執筆内容はニューヨーク州での雇用に関することですので、他州とは異なる事例も含まれています)

 

アメリカでの職探し

 

 まず前提として、ニューヨーク州は他州より日本人の雇用チャンスは多い場所と言えます。人種の坩堝ニューヨークは、雇用機会均等法が一番遵守されやすい街です。世界中からやってきたいろんな人々を平等に扱う理念が進んでいるので、日本人でも特段不利なことはないのです。ただ英語ができればできるほど有利なことは当然です。


 では以下に、ニューヨークで仕事を探す際の注意事項を記載します。ご参考になれれば幸いです。


求職の第一歩はレジメを書くこと

 

 日本のようなかっちりした雛形はありませんが、ネットには沢山のフォームが出回っています。ビジネスライクなシンプルなものが良いでしょう。手書きのほうが好まれるということはありません。読み易さが第一です。雇用側が一番重視するのは、職歴です。

 アメリカの職場は教育とか訓練とかいう意識が日本より低く、ひたすら即戦力を求めます。入社したその日から使える人材でなければ雇わないのです。日本では転職歴が多くなると、なんかこの人問題あるの?と見られがちですが、アメリカは違います。むしろ同じフィールドの仕事を転職しているのは、経験値高し=できるやつ、と見られます。ただし短すぎる職歴は記載しないほうがいい印象になります。


仕事を探す方法

 

 ある統計で、アメリカでどうやって再就職したのか? の問いに一位は「知人・友人の紹介で」、二位は「地元新聞・コミュニティ誌等の求人広告で」、三位は「民間斡旋業を使って」でした。四位以下はネットの求人サイト、卒業大学の斡旋などが挙げられましたが、三位までがその八割を占めます。とりわけ「知り合いのコネで再就職」が目立ちます。

 私は一位二位三位すべてを経験しましたが、転職初心者なら、斡旋業者にお任せするのが一番無難です。私は、店頭に貼っていた求人広告を見て、飛び込み応募したこともありますが、とんでもない雇用条件で逃げ出したことがあります。

 またネットの求人サイトは要注意です。玉石混交で、中には弱みに付け込んで不利な条件で働かされた話をよく聞きます。また良い案件ほど競争率が高く、何十通レジメを送っても大抵連絡は来ないです。慣れない土地では、まず職探しのプロにお任せすることをオススメします。

 マンハッタンには日系のジョブ・エージェンシーが複数あります。日本人を対象にした求人は限られているので、近年は棲み分けが進んでいるようです。自分の希望職種に合わせて、どのエージェンシーがどんな分野を得意とするのか、ネットで事前に調べてからコンタクトしてください。

 私はほぼすべてのエージェンシーを渡り歩きましたが、いずれも丁寧に応対してくれました。ただしすぐ結果に結びつくことは少なかったです。職種にもよりますが、担当の方が熱心で、雇用先といい信頼関係で結ばれていると、すぐ面接ということもあります。一度で諦めず、ときどき担当者とコンタクトを取りながら、粘り強く待つことです。

 そのさい大事なのは、自分がどんな仕事を求めているか、明確に示すことです。中にはいまこういう仕事しか見つからないので、こちらは?などと意に沿わない仕事を勧められることもあります。目先の利益に飛びつかず、自分が本当にやっていける仕事を見つけるまで、辛抱することも大切です。とはいえ、背に腹を代えられないほど差し迫った場合、異業種に飛び込むのもアリです。苦労は覚悟の上で、生きる上で何かのプラスになると捉えましょう。その場合、最低一年は頑張って、その業界でのノウハウを身につけることをオススメします。


面接は自己アピールの場

 

 面接までこぎ着けたら、採用の可能性は一気に高まります。大半がレジメ内容を見てフルイにかけられます。面接に呼ぶということは、すでに採用要件を満たしているということです。面接側は数人の応募者に絞り、より雇う価値の高い人材を選択します。

 学歴、職歴に大差がない場合、決定を左右するのは、面接時の受け答えだけです。なのでここで多くの日本人は不利になります。日本人は謙譲の美徳を重んじるあまり、他国の人より自己アピールが下手です。アメリカでは自己アピールの上手い人が勝つのです。でも上手いイコール雄弁ではありません。よく、あれもできるこれもできると万能感を出す応募者がいますが、面接官には通じません。自分を必要以上によく見せることはありません。却って安っぽいやつだと思われます。

 肝心なのは、本当に得意な面を、思いっきり熱弁することです。そのさい遠慮、控え目はいりません。自分はこういう仕事が好きで得意で、やりがいを感じる、という旨を強く訴えるのです。採用側から見ると、控え目=やる気なし、です。逆にピンポイントでこういうところは自分ができる、やりますと強い意欲を見せることは、必ず好印象を与えるものです。 とにかくアメリカの面接に於いて、積極性は上手に示すことが大切です。的を絞って自分の得意分野をアピールしてください。


 今回はここまでです。

 もし日本で煮詰まって、本気でアメリカで再就職を考えるのであれば、それなりのスキルを用意してください。どんな分野でも、日本で勝ち得た内容は、アメリカでも応用が利きます。私はデザインの分野で、始めは表現スタイルや依頼主の要望のギャップに戸惑ったものです。が、しばらく悩んだ後、日本で学んできた基礎は同じだと悟り、以後は慣れと工夫と多少のはったりでアメリカのやり方に馴染んでいきました。

 そこに、本当にやりたい仕事があるなら国境はありません。十分な準備と下調べの上、是非チャレンジしてみてください。 

   


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