2020年6月3日水曜日

英語上達への道

 日本人の英語ベタはアメリカでもつとに知られています。

 国際的な集会や祭典の場で、他の外国人が流暢に英語でスピーチするのに、日本人だけが通訳つけて日本語で話すシーンをよく見かけます。どうしてもちょっと浮いた感じは否めません。教育レベルの高い日本人が、なぜこれほどまでに英語を苦手とするのでしょう。

 特に英会話。今や小中高、大学でも英語を学んでいるのに、日常会話程度でも話せる人はほんの一握りです。なぜか不思議なくらいに英語が話せない。

 色々意見はあるでしょうが、私は一つの原因ではなく、複数の要因が絡まり合っているのだ思っています。

 今回はその要因といくつかの解決案を提示させていただきます。

 

英語が上達しない要因


 私はアメリカに20年以上住んでいて、英語を系統立てて学んだことがありません。日常会話の場で困ることはありませんが、込み入った状況ではまだまだ不十分だと思っています。例えば、テレビのニュース番組で、ゴシップ的なストーリーだと9割方理解できるのですが、政治経済の込み入った話となると、よほど集中して聞かないと、途中で何言ってるのかわからなくなります。映画やドラマも、会話の多いものは英字字幕に助けられての視聴が常です。長年海外にいるからといって、語学は自然に上達するとは思わないでください。

 なまけものだった自分を、今はとても後悔しています。以下の事実にもっと早く気づくべきでした。


 同じアメリカ暮らしで英会話学校に行かなくても、短期間で私を追い越してしまう日本の方もいました。どうしてでしょうか?

 そういう人は、初めからどっぷり米国社会に溶け込んで、朝から晩まで英語漬けの生活をしていました。外国から来たお相撲さんが、日本語上達が早いのも二四時間どっぷり日本人と接しているからでしょう。

 逆にわたしは初めの数年間、日本人のたくさんいる日系の会社で働いていたのが、つまづきの元でした。日本人は群れたがると言いますが、まさにその典型でした。アメリカにいても、日本語主体の生活では英会話などままならないのです。

 そういうことで、環境というのは明らかに上達を左右する大きな一因だと思います。

 

「使う頻度が低い」:その対策

 結論から言うと、外国語は自ら発し、耳で聞き、受け答えしないと身につきません。英語が苦手という人は、要するに英語によるコミュニケーションの機会が少な過ぎて、身につかない。そういうことです。これは確かに大きな要因です。身近に英語を話す相手がいないので、練習もできないという言い訳です。


解決策:しかし考えてみれば、会話の練習はネイティブ相手じゃなければいけない、という訳じゃありません。日本人同士でも、英会話の例文を見ながら会話の練習はできます。でも発音が、という人もいます。確かに発音の練習には向きませんが、会話文を繰り返すことで、英語の慣用的な用法が頭に入り、その先の発音練習にも大いにプラスになるはずです。いや、そもそも練習相手さえいないよという人、ちょっと待ってください。自分一人でもできますよ。英語の使用頻度を上げる目的であれば、一番効果的なのはお手本となる例文を見つけて、復唱することです。

 わたしの場合は、例えばマルティン・ルーサー・キング牧師の有名な演説を音読し続けました。単語9000あまり、5分ほどの短いスピーチですが、同じ話法が繰り返されリズミカルでわかりやすく、練習にもってこいの英文です。(何より力強く、希望をもらえる内容が素晴らしいのです!)  私は語学力の遅れを取り戻すべく、これを半年間、毎日暗記するほど声を出して読み続けました。愚直なほどの単調な繰り返しでした。でもやり終えて、たしかに突破口になりましたね。半年後、それまで輪郭のぼんやりしていた英語がくっきりしてきた、そんな手応えを覚えたものです。そこから洋書の簡単なものを読み始めるようになりました。開眼、という言葉のごとく、まさに視界がひらけたのです。音読マラソン、ぜひ試してみてください。

 ちなみにアメリカには歴代大統領の就任演説など、お手本となるスピーチがたくさんあります。文章のプロが草稿を書いた格調高いものが多いので、とても勉強になります。



「文法重視の教育の弊害」:その対策

 これもよく言われることですが、日本の英語教育は文法偏重で身につかない、というものです。果たしてそうでしょうか。中国や韓国でも英語の授業は文法中心で行われると聞きます。でも総じて日本人より上達が早いのは、耳に入る音の問題だというのです。英語には日本語に存在しない音があるが、中韓にはないという。 

 それはさておき、結論からいうと、英文法の知識は英語学習に必ず役立ちます。ただし英会話上達スピードのブレーキになることがあります。

 どういうことかというと、日本で学ぶ英語の多くに「日本人しか使わない英語」があるからです。ご存知でしょうが、あいさつで、

“How are you?” や “How do you do?” など文法は正しくてもまず使わない英語です。 

”How's it going?” とか ”What’s up, dude?” などと言うのが一般的。

応えるときも、日本の学校では、

“I’m fine,  thank you” でしたが、これもまったく耳にしたことがないです。簡潔に、

”Good”  や “Great” あるいは  “Perfect” などと応じるのが普通です。

調子がそれほど良くない時は ”So so” とか “ I’m OK”

まったく良くないときは、

“Not that great” で普通に通じます。

 どれも簡単な単語ばかりでしょう。日本人が英語を難しいと感じるのは、このように文法ありきの既成概念に囚われているからです。まずは身近な慣用表現を身につけましょう。日本人でも幼い子ほど余計な知識がないので、素直に耳だけで覚えるものです。

 日本からきた駐在員一家もパパはガチガチの文法英語で悩み、ママは日本のママ友ばかりと付き合うので英語まったくダメ。幼稚園に通う長女が一番先にネイティブ英語をマスターした、なんて話もよく聞きます。


解決策:


 私もはじめは、いわゆる「生きた英語が話せない日本人」でした。とりわけ、よくあるLとRの問題です。聞き取れない音に悩みました。「ライト」とカタカナで書いても光だか右だかわからない。それがそのまま脳内に定着しているのが日本人なのです。

 当時わたしの職場は国際色豊かでした。スパニッシュ系の人が入社すると、当初はアクセントの酷さ文法のデタラメさは日本人の比じゃなかったです。が一緒に働いてるうちに、瞬く間に英語の表現をマスターしていきました。依然訛りは残るものの、わずか半年で込み入った表現も理解し、スラングを交えてペラペラまくし立てる彼らに舌を巻いたものです。

 そこでわたしは、どうやら日本人の英語下手の要因は、音の問題と会話量の少なさ、このふたつが挙げられると思いました。それに加えて、メンタル面の弱さが加わります。日本人は思ったことが口に出せないと、つい寡黙になりがちなのです。スパニッシュ系の彼らは臆せずなんでも、聞きまくっていました。じっさい国民性の違いもあるなと感じましたね。

 確信しますが、はじめ全く英語ができなかったスパニッシュ系の彼ら、全ては耳学だったと思います。聞いて話す。このインプット=アウトプットの練習を仕事の中で効率よく繰り返したのが、上達の秘訣だったと思います。

 それに比して、日本人の私は彼らの5分の1以下の口数で仕事していたので、アメリカの会社にいても上達が遅かったのです。

 

結論


 英会話の上達は、会話の量に比例する。

 文法から入って理詰めで英語を覚えたい人を否定はしません。それで上達した人もたくさんいます。血液型を云々するつもりは有りませんが、理屈でしか納得しないタイプの人は文法からの方が良いでしょう。

 でもあえて言いますが、理屈より慣れです。小難しいことはいいから、とにかく英語を話せるようになりたい、そんな人はまず英文の音読です。音読の量が上達の速さに比例します。人によって差はありますが、ある量を超えると視野がくっきりする感覚を覚えるはずです。そこまでひたすら音読、音読です。それよりいい方法があったら教えてほしいくらいです。

 以上、繰り返しご説明したように、たくさん英語を口にし、耳にすれば例外なく誰でも日常会話レベルまで到達できます。他に目的があるなら別ですが、英語を学ぶためだけに、海外に行く必要はありません。お金の無駄です。そのぶん、日本で少しでも長い時間、英語に接する機会を持ってください。

 みなさんのご健闘を心から応援いたします。


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