2021年2月16日火曜日

カメラマンになる方法

写真家への道:アメリカ編



 どんな仕事にも言えることですが、憧れだけではその職に就くことはできません。
 高価なカメラを持っていても写真家にはなれませんし、写真の専門学校を出ていても保証の限りではありません。では、どうやって人はカメラマンや写真家になるのでしょうか?

 私はアメリカで映像関連の会社に勤めていた頃、たくさんのプロ写真家や映像の専門家らから刺激を受けました。私自身はアシスタントとして撮影クルーに加わることから始まって、けっきょくグラフィック・デザインの部門に身を置くようになりましたが、つねにフォトグラファーやビデオグラファーと連携を組んで仕事をしていました。
 仕事場はニューヨークという事もあり、人種も性別も年齢も経歴も様々。フリーランスやバイトのスタッフも出入りする、いろんな立場の映像関係者を見てきましたが、ひとつだけ共通することがありました。それは映像の仕事がなにより大好き、という事です。

Do what you love and success will come.

 好きこそものの上手なれ、ということわざがありますが、まさにその現場は映像全般に対し、とにかく愛してやまないエネルギーに満ちていたのです。だからこそ意見の食い違いをあからさまに言い合ったり、仕事の上では強情で融通の利かない面々もたくさん見てきました。そういったマイナス面も含めて映像をこよなく愛さない限り、やっていけない世界だという事を覚えておいてください。あなたにそれほどの「思い」がない限り、この世界でやっていくのは難し事でしょう。





1:カメラ愛<写真愛

 映像関係の仕事をしていると、雑談でカメラ機材の蘊蓄を交わし合う場面をよく目にします。中には若くしてフィルムカメラや日本以外のライカやハッセルブラッドのカメラについても詳しい人がいました。その人は年に何台もカメラを買い替えるのですが、仕事以外で写真を撮ることはほとんどないそうです。こういう人はカメラというメカが好きで写真自体に執着のない人です。あなたがこのタイプならフォトグラファーの仕事はつらくなるのでやめておいた方がいいでしょう。
 逆に私の尊敬する職人的なカメラマンがいたのですが、その方はカメラをほとんど選びませんでした。会社にあるニコンのカメラならどれでもいい、写ればいいという感じの接し方でした。ただし手入れだけは人一倍時間を割いてました。いわゆる芸術的な写真を撮る人ではなかったけど、クライアントの要望に応じて、いかようにも対応できる奥深いスキルを持っていたように思えます。こういう人がカメラマンに向いているのだという事です。


 写真家を目指すならば、まず大切なのは写真を愛し、撮影を楽しめることです。本当に写真が好きな人は、初めから自然にグイグイ写真の知識を吸収していきます。なにも写真の専門学校へ行く必要はありません。カメラを手に外に飛び出して撮って撮って撮りまくることから、フォトグラファーへの道は始まります。

 映像で飯を食うのは狭き門です。四六時中写真のことが頭から離れず、何を見ても構図に収める癖がつくぐらいじゃないとやっていけません。
 まずはカメラのマニュアルを常時手元に置き、常に参照できるようにしておきましょう。いまならスマホにPDF版をダウンロードしていつでも見れるようにしておくと便利です。構図や露出などの基本的な用法を随時調べてみましょう。今どきはオンラインで初心者の写真講座などもありますから、独学するにはいい時代になりました。



2:欲張って写真を撮る

 写真家になるということは、仕事で写真を撮るということです。シャッタースピードと絞りのカメラ設定の違いを知ってからカメラを撮り始める必要はありません。よく入門講座で「絞り優先から始めよう」と書かれていて、確かに専門学校でもそう教わるのですが、絶対というわけではありません。だれもいずれはオートモードを卒業します。オートモードで撮影していても、撮影環境や構図のことは学べます。撮影後オートで撮った記録を見て、どの設定でどう写るのか学ぶのもいいことです。はじめは極力しばりを無くして自由に撮りまくり、撮影数をこなすのが上達の秘訣です。



3:カメラを使いこなす

 ある程度の撮影枚数(人により1000枚か1万枚か、それは自由です)をこなしたら、手持ちのカメラにどんな機能があるのか分かってくるはずです。それから改めて、マニュアルを熟読すると、ああ、こんな機能にこんな使い方があるんだ、と新鮮な発見もあるでしょう。そこからようやくそのカメラとの本格的な付き合いが始まります。

 ISOを最も早く調整する方法は何だろうか? 自分のカメラにはオートブラケット、二重露光、タイムラプス機能があるのか? 設定にもっと早くアクセスするやり方があるじゃないか、などという発見でカメラを見つめなおすことになるのです。

 機能が何でどこにあるかを理解するのと同時に、機材の限界を理解しておくもの良いでしょう。開放絞りで撮影しても、どこまでシャープなショットを撮れるのか? 新聞やプリントアウトされた写真を撮ってレンズをテストしてみてください。手持ちのレンズとの相性も考慮に入れながら、機材の能力を最大に引き出す撮り方に挑戦してみるのです。例えば、画像が粗くなりすぎて使い物にならなくなる前に、ISOをどこまで上げることができるか試してみましょう。機材の限界を知ることで、エントリーレベルのカメラでも、より良い写真を撮ることができるようになります。





4:基礎をマスターする

 オートモードが悪いことばかりではありませんが、本当に写真家になるためには、オートモードを卒業して、自分で撮影設定できるようにならねばなりません。それは、露出の3つの基本を学ぶことを意味します:シャッタースピード、絞り、ISO。それぞれの設定は、画像の明るさや暗さ、ピントの合っている範囲などに影響を与えます。私も恥ずかしながら初心者の頃は、絞りと被写界深度という重要な概念を理解するのに時間がかかりました。

 露出と一緒に、ピントの合わせ方や構図の基本を学びましょう。これらは、自分がクリエイティブにコントロールできる写真を撮り始めるためのものです。一度にすべてに取り組む必要はありませんが、初心者から写真家になるためには基礎をマスターする必要があります。


5:写真を撮り続ける

 新しいスキルを身につけるためには、クラスでも、書面によるチュートリアルでも、指導者の指導でも、撮影を続け、そのスキルを実践していくことが大事。絞りの定義を暗記するだけではなく、カメラを絞り優先モードにして、同じ画像をいくつかの異なる絞りで撮影してみましょう。そして、その変化が最終的な画像にどのような影響を与えたかを見てみるのです。YouTubeなどに、よくレンズ別の比較画像などが紹介されていますが、あれを自分でも作ってみるのです、そうすることで設定ごとの結果の違いが自分でもよく分かるようになります。
 授業で(またはチュートリアル、本、先輩から)学ぶのもいいですが、実際に実践してみることで、そのスキルがより強固なものになり、概念を実践的な知識に変えることができます。どこに行くにもカメラを持って行き、インスピレーションを受けたものを撮り続けましょう。練習すればするほど、初心者から写真家への移行が早くなります。



6: スキルを絞って集中学習

 たとえば照明をマスターしたいとします。じっさい照明をマスターしなければ、ある意味素晴らしい写真を撮ることは不可能です。運良くすでに素晴らしい光の中で被写体を撮影することもありますが、仕事上では常に照明に恵まれているとは限りません。
 ライティングをマスターするためには、いかなる現場でも撮影できる方法を知っておかねばなりません。逆光でシルエットにならないように撮影するにはどうすればいいのか? 反対に逆光を使ってシルエットを作るには? サイドライティングとフロントライティングの違いは・・・などなど。
 いかなる照明環境でも撮影できる方法を学ぶとともに、フラッシュやストロボ、あるいは反射板を使って光を操作する方法を学ぶことは、プロを目指す写真家にとって不可欠なことです。フラッシュの光量や角度を調整すると、被写体の見た目がどのように変わるのか、知ることは重要です。何十万もする高価な照明キットが必要なのか体験し、工夫次第ではわずかな投資で撮影環境を変えることも可能だと考えるのです。
 イマドキの若い人なら、オンライン写真クラスを受講し、便利なツールなどを使用することで、照明に関する専門的な知識をパソコン上で取得することもできるでしょう。




7: 何を撮りたいのかを絞る

 写真家といえども、あらゆるジャンルの写真を撮るという人は稀です。大抵は区分けされた撮影ジャンルの中で仕事をします。まずあなたがどんな、というよりもっと限定的に、仕事としてどの写真を撮るのか決めて、そのコースに乗っ取って修行していきましょう。

 報道写真家、スポーツ写真家、山岳写真家、モデル撮影、ウェディング・フォトグラファー、建築写真家、動物写真家、星空撮影家、広告撮影などなど・・・じつにさまざまな撮影カテゴリーがあります。その中で自分が撮りたい対象を絞り、そこを目指して撮影をかさね、ポートフォリオを作っていきましょう。誰にでも、漫然となんでも撮る時代からステップアップする時が必ずやってくるものです。

 まずは自分の好きな分野から始めて結構です。ただし繰り返しますが、撮影の仕事は、門戸はたくさんあっても広くはないのです。たとえスポーツ写真を撮るのが好きでもそこに職業として入り込む余地はあまりないのが現状。まずはニッチな分野から模索し、それを得意分野に育てあげるもの写真家への近道です。例えば、あなたの通勤圏内に不動産撮影の仕事があれば、チャレンジしてみるのです。かわいい動物が撮りたいあなたであっても、建築物を撮ることで、あなたの才能が開花することもありえます。そしてカメラを撮り続けさえすれば、いつか必ず自分の撮るべき本当の対象が見えてくるはずです。



8:撮影後の仕事

 フィルム時代には考えもしませんでしたが、写真編集はそれ自体が芸術とみなされる時代になってきました。いくつかの用語は同じであるが、カメラを操作することとPhotoshopを実行することは、似て非なる役割です。PhotoshopとLightroomは写真編集のための最も人気のあるツールですが、学ぶには時間がかかります。それだけにスキルを習得することは、仕事でのアドバンテージになります。これらをしっかり身に着けることは将来的にも、写真を学ぶ上でも役立つことです。
 写真家が個々の撮影スタイルを持っているのと同じように、画像の編集スタイルはパソコン上でも適用されます。あなたのセンスが問われ、スキル次第で写真が別人のもののように蘇ります。今の時代、写真は撮影のみならず、グラフィックデザインの一部としても技術や知識が要求されるものだと思っていてください。




9:ビジネス戦略を立てる

 ほとんどのプロの写真家は、写真への情熱で働き続けます。 しかしプロとして撮影することは、ビジネススキルもないがしろにできません。純粋に撮りたい写真を撮るだけで生きていけたらいいのですが、現実はそうはいきません。上達したあなたのスキルと作品を売らなければ先に進めないのです。

 堅実に写真撮影のスキルを身につけることが最初のステップであり、次はビジネス戦略を練ることが成長のための必須ステップです。ポートフォリオを見直し、また同業者の作品を研究し、あなたのスタイルを見極めましょう。自分が他とどう違う仕事ができるのかを考えて、あなたのビジネスのためのブランド化を練るのです。あなたならではの写真スタイル開発をめざしてください。作風を練り、自分のスタイルを確立して世間に知らしめることは、写真家としての自分を成長させるセルフプロデュース業務なのです。  


まとめ

 カメラさえあれば写真を撮ることは誰にでもできます。しかし職業として写真の世界に飛び込むのは一筋縄ではいきません。写真家になる方法を探索することは、発見に満ちた旅のようなものです。その旅に乗り出す準備はできていますか? 時流を見極め波に乗るのか、まだ見ぬ道を切り開くのかはあなた自身です。カメラを武器にどこまでプロの世界に挑めるか、いまはただ撮り続けることが、あなた自身への最大の課題であります。

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