2021年2月21日日曜日

富士フィルムの中判カメラ

GFX 100S:モンスター級のカメラ

 


 先ごろ富士フィルムから発表され、来る「CP + 2021 ONLINE」でも大々的に宣伝されるであろう最新中判カメラ、GFX 100S。これがいま予約注文で予想を上回る反響だそうです。
 ちょっと前までは中判センサーなんてプロの中でも特殊な撮影時のみ必要なカメラだと認識していましたが、時代は変わりつあるようです。
 大きなトレンドが一眼レフのAPS-C機からフルサイズ・ミラーレスに移行しつつある中、全体のスペック底上げが著しく、さらなる高みへ向けて、カメラファンは中判カメラも普通に視野に入るようになったという事でしょうか? 
 この富士フィルムGFX 100Sの少し前には、SONYからフラッグシップ機「a1」が発表され、そのすさまじいスペックと値段に、カメラファンの間ではどよめきが起こったばかりです。
 
 富士フィルム渾身の最新鋭中判カメラとはどういうものなのでしょうか?
 
 GFX 100Sは、富士フイルムの4台目のミラーレス中判カメラで、102メガピクセルのセンサー、4K/30p動画撮影、6ストップの5軸手ブレ補正(IBIS)を搭載しています。

 驚いたのはサイズ感です。前期種のGFX 100はいかにも中判カメラといういかつい形状で、一眼レフ機に比べて小型化を図ったと謳われていた割には、そこそこ重たく、かさばるプロ専用機という印象でした。(もっとも2017年に発表された
GFX 50も中判としては十分インパクトのある小ささでしたが)
 今回は35mmフルサイズのデジタル一眼レフカメラよりもさほど重くもなく、-5.5EVの低照度下でも0.18秒でピントを合わせられ、天板にはPASMダイヤルと1.8インチのサブ液晶モニターを搭載したスタンダードなザ・カメラといった形状です。巨大なセンサーを積んでよくもここまでコンパクトにできたなと感服します。
 携帯性のために性能を犠牲にすることなく、世界で最もコンパクトで高性能な大判カメラのひとつを生み出した、ということでしょうか。
 じっさいこれまでのどのGFXシステムカメラよりも進化しており、富士フイルムの最高のイメージング技術を結集して、わずか900gのカメラに仕上がっています。また、フルサイズカメラと同等のサイズながら、フルサイズセンサーの1.7倍※2の102万画素センサーを搭載し、最大6段の5軸手ブレ補正機能(IBIS)、驚異的な高速・高精度オートフォーカス、世界に誇る色再現性など、富士フィルムの技術の粋が結集した最高機種と言えるものです。
 また先代GFX 100の画期的なアイデアをベースに、「機動性」と「携帯性」をコンセプトに、大判カメラの可能性を超えた、これまでにない大判映像制作の可能性をクリエーターに提供するカメラ、とメーカーは謳っています。

 なお本機には、1970年代に登場したアメリカのニューカラー写真を彷彿とさせるといわれる「ノスタルジック・ネガティブフィルム・シミュレーション」を初めて搭載しました。

 
GFX100Sは2021年3月4日から発売され、本体の価格はアメリカで6000ドルから。





GFX100Sの主な特徴

 富士フイルムの高性能クアッドコアCPU「X-Processor 4」を搭載したGFX 100Sは、102メガピクセルの裏面照射型大判CMOSセンサーを搭載し、圧倒的な画質を実現しています。従来のフルフレームのデジタル一眼レフカメラやミラーレスカメラに一般的に搭載されている小型で低解像度のセンサーと比較して、富士フイルムGFX 100Sの撮像センサーは約1.7倍の大きさで、光に対する感度が非常に高くなっています。これにより、信じられないほど浅い被写界深度、素晴らしいダイナミックレンジ、忠実な色再現、優れた高ISO性能を持つ画像を生成するという点で、小型センサーに比べて大きなアドバンテージを得ています。

 富士フイルムの色再現の専門知識は、画像メーカーの間では伝説的な存在です。富士フイルムは86年以上にわたり、世界中で象徴的な写真や映画を生み出してきました。GFX 100Sは、世界で最も広く評価されているデジタルカラー処理エンジンを搭載しており、ボタンを押すだけで、この豊富な色再現を実感できます。
 本機にはFUJIFILM独自の19種類のフィルムシミュレーションモードを搭載しているので、カメラから撮って出しで素晴らしい色を表現することができます。GFX 100Sには、新しいフィルムシミュレーションモード「ノスタルジック・ネガ」が搭載されています。1970年代に登場したアメリカのニューカラー写真を彷彿とさせ、この色を意図的に使うことで写真の創造性の境界線を広げることになりそうです。その独特の色調は、ハイライト部分に琥珀色のトーンを加えてソフトな印象を与え、シャドウ部分の彩度を高め、ディテールを維持したまま、画像に叙情的な雰囲気を与える、ということです。


低照度下でも優れた高性能ミラーレスAF

 他の多くの大判カメラや中判カメラとは異なり、センサー上の位相差画素がGFX 100Sの撮像素子のほぼ100%をカバーしているため、これまでの大判デジタルカメラでは実現できなかったオートフォーカス性能を実現しています。これにより、-5.5EV*4という低輝度下でも、最短0.18秒でピントを合わせることができ、汎用性が高く、精度が高く、驚くほどの高速性を実現しました。また、「X-Processor 4」を搭載し、「トラッキングAF」や「顔・目AF」を使用した場合にも、最新のフォーカストラッキング・アルゴリズムを効率的に活用し、ピントを合わせやすくしています。


最新の手振れ補正

 GFX 100Sは、新設計のボディ内手ブレ補正機構(IBIS)を搭載し、写真家の手ブレ補正能力を飛躍的に向上させました。GFX 100SのIBIS機構は、FUJIFILM GFX 100に搭載されているユニットと比較して、20%の小型化と10%の軽量化を実現しています。しかし、このような小型化にもかかわらず、5軸システムはCIPA規格の手ブレ補正機能を6段分搭載しており、GFX 100と比較して0.5段分の手ブレ補正効果を実現しています。


携帯性を考慮した高性能

 900g、幅15cm、高さ10.4cm、奥行き8.7cmのコンパクトなボディは、多くのフルフレームカメラに匹敵するサイズです。しかし、そのコンパクトなボディにもかかわらず、高性能なIBISと、一般的なフルサイズの約2倍の102MPの撮像素子を搭載しています。GFX 100Sは、シャッターユニットとIBISユニットを一新し、小型ながらも高効率なリチウムイオン電池を採用しました。これにより、GFX 100よりも約6cm短く、500gの軽量化を実現し、小型化しながらも、静止画や動画の性能を維持しています。そのため、GFX 100Sの小型化は、手にしっくりと馴染む堅牢性の高いグリップによってバランスが取れており、長時間の撮影でも非常に持ちやすくなっています。

 GFX 100Sは、-10℃という低温での使用を想定し、防塵・防湿性を備えています。また、マグネシウム合金製のケースを採用し、GFX 100と比較してレンズマウント周りを1mm厚くしているため、大型のGマウントレンズにも対応できます。


慣れ親しんだ操作性

 富士フイルムGFX 100Sは、GFXシステムを初めて使う人にも、既存の写真家にもなじみのある操作系を採用しています。例えば、6つのプログラム可能なカスタムオプションを備えたPASMダイヤルは、頻繁に使用する設定に素早くダイレクトにアクセスできます。人間工学に基づいて改良されたフォーカスレバーは、フォーカスポイントの選択を簡単かつスムーズにします。

 背面には3.2型液晶モニター、天板には1.8型サブ液晶モニターを搭載し、シャッタースピード、絞り、ISO感度、露出補正などの主要なEXIF設定の表示や、主要機能のステータス表示、ストレージメディアの容量表示などのカスタマイズが可能です。3.2型のタッチ対応液晶ディスプレイは236万ドットで、3方向(上90度、下45度、右60度)に傾けることができ、100%のカバー率を実現しています。


動画:スムーズな4K30Pを実現
  
 大型の撮像素子を搭載したGFX 100Sは、浅い被写界深度、高ISO性能、広い階調性など、映画のような4K/30p動画を撮影することができ、他の追随を許さない画質を実現しています。映像は、内部でSDカードに記録する10ビット4:2:0 F-logから、HDMIポートを介して12ビット4:2:2 ProRes RAWまで、さまざまな品質レベルで400Mbpsのビットレートで記録することができます。

 GFX 100Sは、4K映像を16:9のアスペクト比で記録できるほか、デジタルシネマでよく使われる17:9のアスペクト比にも対応しています。H.264やH.265のような最も一般的に使用されている圧縮コーデックも利用できます。さらに、REC.2100サポートのハイブリッドガンマログ(HLG)やF-Logのようなプロ仕様の規格を選択して、クリエイティブなコントロールを完全に行うことができます。H.264のような一般的な圧縮コーデックを使用する場合と比較して、F-LogやHLGで映像を記録することで、編集やカラーグレーディングプロセスを経て、輝度、彩度、その他の画像属性の調整が行われるため、ポストプロダクションの柔軟性が向上します。

 画像ベースの調整やカラーグレーディングのオプションで最大限の柔軟性を実現するために、GFX 100Sは、4K/30Pの映像をHDMI経由でAtomos Ninja V Recording Monitorに直接12ビットRAWで記録し、後でProRes RAWとして出力することもできます。これにより、カメラ内の処理にとらわれず、制作後のポストで映像に関するすべての判断を行うことができます。また、RAW映像とフィルムシミュレーションモードを適用したF-LogやHLG(Hybrid Log Gamma)の映像を同時に出力することも可能です。

 というわけですべてが型破りなカメラですが、ちょっと前に発表され、話題を独占したソニーのフラッグシップ機a1と比べるとどうなるのでしょうか?




フジフィルムGFX100S 対 ソニーa1

 まずはその価格から。Digital Camera Worldによると、ソニーa1は6,499ドルで、キヤノンEOS R5と比較し、a1はキヤノンを凌ぐカメラと評価しています。一方、富士フイルムGFX100Sは5,999ドルで販売されています。格上とされる中判の富士フイルムGFX100Sの方がかなり安いというのは注目に値します。

ボディサイズ、センサー、モニター、EVF
 サイズ的には、富士フイルムGFX100Sの方がソニーa1よりも大きめです。ソニーが厚さ80.8mm、幅128.9mmなのに対し、富士フイルムは厚さ87.2mm、幅150mm。高さでは、ソニーの96.9mmに対し、富士フイルムは104mmと高い。

 センサーについては、ソニーが35.9×24mmであるのに対し、富士フイルムは43.8×32.9mmとかなり差があります。メガピクセルでは、a1の50.5MPに比べてGFX100Sは102MPと2倍の解像度を誇ります。
 
モニターの違い
 ディスプレイは、どちらもチルト式で光軸に沿って素早く上下に向けられるのが素晴らしいです。ただ富士フィルムのモニターは、さらに右に傾けたい場合は、45度または60度に傾けられ、縦位置撮影もある程度対応可能です。
 またa1は800×600ピクセルで3インチの画面ですが、GFX100sは3.2インチで1024×768ピクセルでより高い画面解像度を持っています。
 EVF(電子ビューファインダー)、a1は0.9倍の拡大撮影が可能な0.64型の有機ELパネルを搭載しています。a1のピントは2048×1536ピクセルと、フルHD以上の完成度を誇ります。一方、GFX100sは0.77倍の倍率で、解像度は1280×960ピクセルの720pしかありません。暗い場所での撮影が好きな方は、モノクロモードの有機ELを搭載したフジフイルムの方に関心が湧くかもしれません。

オートフォーカス、バスト性能、バッテリー
 GFX100Sは、5fpsのトップスピードで3秒間のバースト撮影ができます。一方、ソニーは30fps。メカニカル・シャッターを使用したい場合は、10fpsになります。a1は238枚のRAW写真をバッファに入れることができるので、バースト性能を重視するならソニーに軍配が上がります。
 スピードに関してはa1のほうがフジよりも優勢です。ソニーのミラーレス用オートフォーカスは、やはり業界最高水準です。また、759点の位相差はフレームの9%を占めています。一方、フジのオートフォーカスは425点の位相差までしか届きません。

 バッテリー寿命については、静止画で530回、ストレート動画で150分撮影できるので、ソニーa1の方がはるかに優れています。GFX100Sは1080pで静止画460枚、動画110分しか撮影できません。4K動画を撮影したい場合、フジは95分しか撮影できません。

総括
 どちらのカメラも現代持ちうる最高のテクノロジーを駆使しており、なおかつプロや専門家にとどまらない、一般向けをアピールした機種となっています。使い勝手の良さ、ユーザーフレンドリーがひと昔前のカメラとは大きく違い、誰もが簡単にハイレベルの写真を撮れる時代になったものです。どちらが良いか優劣はつけがたく、それぞれの用途に応じて選ぶことになるでしょう。


0 件のコメント:

コメントを投稿