2021年2月8日月曜日

スポーツ映像の最先端

スーパーボウルを面白くするカメラ



 
 アメリカの国民的スポーツの祭典「スーパーボウル」は、全国ネットのテレビで放映され毎年1億人以上が視聴するオバケ番組です。今年はパンデミックのために、観客数を極端に制限した異例の措置での開催となりますが、お茶の間での視聴は今まで以上の記録が期待されています。
 勿論スポーツの祭典として見所は満載ですが、カメラに関心ある方にとっても、非常にエキサイティングな催しであることが知られています。この放送に使われるカメラ撮影技術はそのたびごとにアップデートされ、視聴者はハイテク技術の最先端を見ることになります。
 目を見張るようなクローズアップでの選手の表情、スーパーリアルでクリアなスローモーション再生、鳥の目で見たような空からの俯瞰。
 10年前では考えられなかった美麗で繊細なスポーツ観戦がお茶で見られるようになったのです。
 後述しますが、そのハイテク映像の中には日本の優れたカメラテクノロジーも重要な役割を担っているのです。


メインカメラ
 試合撮影全体の主役を担うのが「Eye Vision 360」というカメラおよびそのシステムです。
 この新しいリプレイカメラは、任意の瞬間にフリーズし、プレーを中心に回転させて、フィールド上の任意のプレーヤーの一人称視点を随時ピックアップすることができます。これはスーパーボウルの撮影に使用された史上最高の解像度である5Kのカメラで撮影されます。

 Eye Vision 360 は、スタジアムのトップデッキに沿って並べられた 36 台のカメラをコントロールし動作します。通常、カメラは25ヤードライン付近のレッドゾーンに向かって配置されます。これはフィールド全体を見るためもっとも重要なカメラシステムとなります。

 このカメラのもう一つの強力な機能は、透明なガラスのような仮想ラインをプレーの中に重ね合わせることです。このグラフィックを追加する機能は、まるでそこに実在するかのような画像を自由に作り出せるという技術で、映像はますますビデオゲームを見ているのかと錯覚するほどのリアルさです。

EyeVision360



パイロンカメラ
 近年スーパーボウルに登場したもう一つの新しいカメラがパイロンカメラです。フットボールのフィールドの設定にあまり馴染みのない方のために説明すると、パイロンとはエンドゾーンの隅に置かれたオレンジ色の長方形のマーカーで、選手やファンがゴールラインの境界線を確認するのに役立ちます。

 ゲームのために特注改造された8台のパイロンカメラには、それぞれ2台の高解像度カメラが取り付けられ、2Kの解像度で試合をフィールドレベルで見ることができます。これらのカメラにはマイクも搭載されており、フィールドの自然な音を捉えるのにも役立ちます。
 パイロン・カムは、ライン際やゴール付近の際どい判定にも大きく影響を及ぼすと言われ、近年ますます注目されています。


スカイカムの登場
 上空から鳥のように選手を追うSkyCam。空中カメラ技術は意外にもそれほど新しいものではありません。1984年に初めてスーパーボウルのファンに紹介されて以来、様々な改善が行われてきましたが、第 50 回スーパーボウルで使用されたSkyCam システムは、新時代を予感させる画期的なものでした。それはこれまでにないくらいきれいな描写で、ブレずに選手を追いかけました。
 さらに近年SkyCam制作チームは、ほぼ 2 倍の速度で移動することができる「ワイルドキャット」と呼ばれるフライング カメラ システムの新バージョンを発表しました。ワイルドキャット・スカイカムは時速25マイルを超える速度で宙を飛ぶことができます。そのスピードは、カメラが選手を追い抜くに十分な速さです。

SkyCam


 
 スカイカムはワイヤーの網の上で動作し、フィールドの上でしっかりとハーネスで固定されています。おかげで選手に極力接近して、素晴らしいショットを撮ることができます。
 猛スピードで空を飛び回る空中カメラの最大の課題の1つは、手ぶれ補正でした。SkyCamは完全にアクティブな4軸スタビライゼーションシステムを使用しており、その課題を見事に克服しています。


 さてスーパーボウルは放送局が毎年変わる約束になっているので、カメラシステムもそのつど変わってきます。今年のCBSの第55回「スーパーボウル」のカメラもまた、映画のようなエンドゾーンのショットやトロリーカムなどがふんだんに使用される予定です。

 CBSは、2020年のNFLシーズン中にソニーのデジタル一眼レフカメラを追加しました。主にメインの撮影ではなく、フィールド外で試合を見る控え選手やコーチのリアクションに使われていたようですが、そのシネマチックな描写性能は、関係者の注目を浴びたようです。
 今日行われるスーパーボウルでもおそらく活用されると見られます。


CBS の新しい NFL用カメラ
 CBSが使うカメラシステムは「メガラドン」と呼ばれる、撮影コンポーネントの総称です。そのコンポーネントは、ハイエンドのソニーの民生用カメラ、対応するジンバル 、映像を送信するバックパック送信機などで構成されるものす。

 注目のカメラですが、なんと「SONY VENICE CAMERA」を使用する予定だそうです。これはもちろんガチのプロ用機材で、一台400万円ほどするものです。

 まさにソニーの技術を結集した最先鋭のビデオカメラです。
 このカメラがユニークなのは、被写界深度をかなり浅くすることができ、背景ボケを自在につくり、フォーカスする選手をめちゃくちゃクリアに撮影することができることす。映画のような効果を編集なしでリアルタイムに表現できるので、視聴者へのアピールは絶大と期待されています。
  特に新しいカメラ技術ということではありませんが、ライブイベント中にその高度な描写性能を発揮できるのは、ソニーの最新デジタルテクノロジーのなせる業でしょう。

  今後この
「SONY VENICE CAMERA」は、より多くのスポーツ中継やイベントに使用されることが予想されます。映画や企業のPRにもかなり需要が高まってくるでしょうね。というか、ジェームス・キャメロン監督などはすでに映画製作にこのカメラを使っているそうです。スーパーボウルはアメリカのトップイベントなので、その効果は計り知れません。今後このカメラの需要はますます高まっていくのではないでしょうか。


その他の新しいスーパーボウル用カメラ
 CBSは2台のソニー・ベニスのカメラだけではなく、新しい方法でスーパーボウルを撮影すると伝えられています。CBSネットワークによると、タンパのレイモンド・ジェームズ・スタジアム周辺には120台以上のカメラが設置されるそうです。その中には前述の2台のソニー・ベニスカメラ以外に、トロリーカムと呼ばれるものが採用されます。(CBS によると、それはスタジアムの一方の端から他方に、ワイヤーに沿ってジップライニングし、スタンドの 8 列目のファンの視野角を提供するために配置される、とのこと。なんか実感が湧きませんね)。とにかくすごいのは、カメラは時速65マイルものスピードで移動することができ、スーパーボウル史上、見たこともない視点で選手を見せると豪語しています。
 それから映画用バードクレーン。(CBSによると、このカメラは伝統的に大作映画のために確保されていたが、スーパーボウルではアッパーコンコースに設置され、番組「THE SUPER BOWL TODAY」の試合前のセットや試合の様子をドラマチックに撮影します。さらにはスタジアムの至る所に戦略的に設置される、多くの拡張現実エンコードされたカメラの1つとして機能するのだということです。
 さらにはCBSによると、4Kと8Kの機能を備えた12台のカメラがスタジアムの至る所に設置され、制作チームは試合の重要な瞬間をクローズアップして撮影することができる、ということです。
 4Kカメラはスタジアムのコンコースの高い位置からロボットで制御され、2台のソニー製8Kカメラはスタジアムの下部フィールドに吊り下げられたロボットジンバルに固定されます。
 過去のスーパーボウルでは、スタジアムのインフラの高い位置に8Kカメラ技術が導入されていましたが、CBSはこのアングルで、フィールドの近くの高さからのユニークな景色をお届けする、と自信満々に語っています。
 アメフトを見ない人にはイメージしにくいかもしれませんが、テレビで観ればそのすごさは伝わるはずです。というわけで、今夜のゲームがとても待ち遠しいです。アメリカンフットボールに関心の薄い人でも、カメラ好きなら一見の価値ある番組となるはずです。

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