2021年5月24日月曜日

2020年 最高のロック•アルバム

サムズアップ・アメリカ!
2020年版:おすすめ洋楽ロック Part 1




2020年に発売されたおすすめロックアルバムをご紹介します。

コロナウイルスの影響でコンサートやフェスティバルが中止になったものの、アーティストたちは幸いにも2020年も新しいアルバムを続々リリースしました。パンデミックの影響でアルバムはリリースされたものの、通例なら同時に敢行されるツアーやプロモーションが最小限に抑えられ、この年出されたアルバムはみんな影が薄くなってしまいました。


そういうわけで、2020年リリースのロックアルバムはどれがよかったのか、ここできっちり抑えておきたいと思います。聴き逃した方はぜひチェックしてみてください!


イントロダクション

実は2020年は、ロックという音楽ジャンルにとって、豊穣とも言える年だったのです。
ブルース・スプリングスティーンやAC/DCのようなベテランアーティストは、ロックンロールの世界でいまだに何かを語り続けていることを明確に示し、マイ・モーニング・ジャケットやザ・ストロークスのような現代的なバンドは、より成長した作品をリリースし、ますますその名声を高めています。
ロック不遇の時代と言われてもう10年近く経ちますが、ひょっとしたら2020年は新たな局面へ向かうターニングポイントの年だったと、のちに言われるようになるのではないかと思えるほど、佳作・傑作の多い年だったのです。それでは順を追ってご紹介しましょう。


Green Day:Father of All Motherf---ers

Green Day – 'Father Of All Motherfuckers' review


タイトルからして「American Idiot」時代に戻ったようなとんがった作品です。Green Day?
ああ、もう聞き飽きたという人はちょっと待ってください。原点回帰というか、初期衝動っぽい荒々しさを残したまま、そこに現代性とパンクの王道を見事に融合した傑作です。

これまで多くの大ヒットアルバムを出してきたGreen Dayですが、2012年のアルバム『ウノ!』『ドス!』『トレ!』の3部作が不完全燃焼に終わり、2016年の『レボリューション・レディオ』で失速してあわや解散かと危惧されたこのバンド。
90年代から80年代に成功を収めたほとんどのバンドの通常の行動コースに陥っているように思えました。時代の寵児Green Dayもこのまま化石バンドと化し、記念日のツアーを数回行うだけの、懐かしのバンド入りするのかと思っていました。
しかし、グリーン・デイは2月に10曲26分のLPをリリースし、パンクロック・トリオとしての真の復活を果たしました。"Father of All Motherf---ers "は、Green Dayの良さをすべて思い出させてくれます。
モッシュしたくなるような速いポップパンクのアンセム、スマートな歌詞、面白いフックとギターリフ。やったね復活って感じです!彼らは再びロックを楽しんでいるようです。

付け加えると、これまでの彼らのアルバムとは異なり、政治についての言及はありません。

1分54秒の「Sugar Youth」では、思わず飛び上がってビートに合わせて頭を前後に振って喜びたくなるし、「Stab You in the Heart」は、「ワイプアウト」風のサーフロックビートをフィーチャーした完璧なサマーアンセムだ。Junkies on a High」の落ち着いた音の構成は、ロックンロールにおける薬物使用の悲劇的な歴史を反映したビリー・ジョー・アームストロングの歌詞を完璧に再現しています。

このアルバムはすべてが面白い。このアルバムがGreen Dayのキャリアのターニングポイントとなるかどうか、スリリングな展開が期待されます。絶対のおすすめ!




Killers:Imploding the Mirage

THE KILLERS Release Deluxe Edition of Critically-Acclaimed 'Imploding the  Mirage' Album - Icon Vs. Icon

2004年に傑作『Hot Fuss』でスターダムにのし上がったThe Killersも今や往年のビッグバンド扱い。アルバムを出すたびに、厳しい批評眼に晒されるようになりました。
2017年のアルバム『ワンダフル・ワンダフル』は、決して批判を浴びるほどのものではないのに、口の悪い批評家からマンネリズムや立ち往生といった否定的な意見を浴びせられていました(ファンはしっかりついてきてますが)。砂漠のオアシス、ラスベガスの彼らが、砂漠を飛び越えてどこに着地するのか、心の片隅で期待は抱いていました。そこに2020年のこのアルバムです。

バンドの6枚目のアルバム『Imploding the Mirage』は、砂漠から抜け出すための勝利の旅が10曲のおいしいダンサブルなセッションにパッケージされており、従来の「壊れない楽観主義と引き換えにトラウマを探る」という図式から距離を置いたように見えます。

アルバムのリードシングル「Caution」では、Fleetwood Macのリンジー・バッキンガムがギターソロで聴き手を無敵の気分にさせてくれます。
「Running Towards a Place」では、リードシンガーのBrandon Flowersが明るい未来を語り、「Because we're running towards a place / Where we'll walk as one / And the sadness of this life / be overcome」と歌っています。

うねるようなシンセサイザーのバラード「When the Dreams Run Dry」は、死を受け入れ、死後の世界を受け入れています。フラワーズは、「夢が枯渇したとき、私はいつもいた場所にいるだろう/あなたの側に立っている/手綱を手放す "と歌い、"私たちはみんな死ぬのよ 」と叫びます。
これはFlowersの妻へ捧げる美しいラブソングであり、人生の浮き沈みを共にするパートナーを持つことの重要性を認識させるものです。

「Blowback 」はアルバムの中で最もキャッチーなフックを備えていますが、この曲では、彼の妻が悩んでいた鬱病について再び取り上げています。今回、彼は「でも、彼女はきっと立ち直るよ、君はそれをよく知っているはずだ」と励ましています。

「Imploding the Mirage」は、The Killersの力作であり、「Hot Fuss 」のリリースから16年経った今でも、私たちを踊らせる方法を知っていることを証明しています。

練り込まれたアルバムの総合力は高く、近年にない進化を感じさせる好アルバム。聞き逃す手はありません。



Elvis Costello : 
Hey Clockface

Elvis Costello: Hey Clockface Album Review | Pitchfork

エルビス・コステロの新作は、彼の優れたリリシズムを示す、様々なムードとフレーバーが混ざり合った広がりのあるアルバムです。

エルビス・コステロの天才性を理解するには、アルバムのジャケットを見るまでもありません。コステロは、70年代後半からほぼノンストップで音楽を作り続け、66歳になった今、時計を止めて自分の人生を振り返ろうとしているようです。

「Hey Clockface」は、様々なフレーバーやムードがミックスされており、このアルバムを一つのジャンルに分類することはできません。

これは、コステロがまだ時間があるうちに新しいサウンドを探そうとしているのかもしれませんが、アルバムの一部をヘルシンキ、パリ、ニューヨークで録音し、時折地元のミュージシャンの協力を得たことも評価されています。

このアルバムを何度も聴いても、次にどこへ連れて行ってくれるのかを思い出すのは難しいです。ランディ・ニューマンのようなサウンドでファッツ・ウォーラーの言葉を引用したタイトル・トラック、コステロ独特のパンク・サウンドに祝福された「No Flag」、コステロがビートボックスを使った爆音シンセ・トラック「Hetty O'Hara Confidential」、東洋風の雰囲気を持つ「Revolution #49」に合わせてコステロがスピーチを朗読した曲などがある。

アルバム「Hey Clockface」は、一聴するとワイルドで野放図のようですが、繰り返し聴くと、実に用心深く細心の注意を払って作られているなと、感心させられます。
あの大ベテランにして、それでも初々しさを失わないロックンロールへの情熱と愛情に感服いたします。



AC/DC:Power Up
AC/DC 'Power Up' Album Review - Spotlight Report
バンドメンバーでリズムギターを務めた故マルコム・ヤングへの美しいトリビュートでありながら、バンドの象徴的なサウンドを犠牲にしていません。

AC/DCの40年のキャリアを通しての最大の批判は、「バンドのサウンドがアルバムごとに同じである」ということです。つまり大いなるマンネリでありながら「ファンに愛され続ける域」にまで達した数少ないバンドなのであります。
それが信頼できるものであろうと、想像力に欠けるものであろうと、常に大音量のクランチーなギターリフ、鳴り響くドラム、そしてブライアン・ジョンソンの喉を鳴らす叫び声を期待することができます。

バンドの17枚目のアルバム「Power Up」も相変わらずそれは同じで、ファンはすぐに飛びつきました。
冒頭の「Realize」では、ジョンソンの象徴的な「Ahh's」という叫び声と、アンガス・ヤングの粋なソロが聴けます。
「Money Shot 」や 「Code Red 」では、AC/DCの名曲を彷彿とさせるようなリフが登場しますが、十分に練られており違ったものになっています。

また、「Demon Fire」のような曲では、ZZ Topの「La Grange」やMegadethの「Sweating Bullets」を彷彿とさせるような悪魔的な語り口が特徴的で、バンドは明らかにそれを楽しんでいます。

このアルバムを際立たせているのは、マルコム・ヤングの死後初めてのアルバムであり、彼へのトリビュートとなっていることです。それが顕著に表れているのが「Through the Mists of Time」という曲で、冒頭のスタンザには「See dark shadows on the walls / See the pictures / Some hang, some fall / And the painted faces all in a line」と書かれています。
メンバーのブライアン・ジョンソンは、この歌詞を聴くとマルコムを思い出して「身震いがする」とツイートしています。

40年というロックの歴史を駆け抜けてきた大御所が今も健在であることを証明する、パワフルなアルバムです。



Mt. Joy:Rearrange Us

Rearrange Us | Mt. Joy

今日ラストのおすすめは、日本に馴染みのないアメリカンバンド「Mt.Joy」です。
だけどこのバンドを知らないのはもったいないです絶対に。
なぜか昨今はこういったフォークロック調の音楽が日本では受け入れられていないようで残念です。邦楽でもこのタイプの楽曲をプレイするアーティストは稀のようです。楽曲が心に沁みる多幸感は是非とも多くの人に味わっていただきたいです。
とはいえいきなりMt.Joy最高と言っても伝わりません。まずはプロフィールから。

「フォーク・ロックの伝統を受け継ぎ、マット・クイン(ボーカル、ギター)とサム・クーパー(ギター)の直感的な創造力を生かしたMt.Joyの名を冠したデビュー曲では、前者が自らの良心と格闘し、悲劇や社会や愛など接する中で、ありふれたものと幻想的なものが衝突する様子が描かれています。冒頭の "I'm Your Wreck "では、「クローゼットの中のモンスターが、Wi-Fiを使いまくっている」という描写があり、絶望的で螺旋状のヴァースから、スウィングしながらも頑固なまでに楽観的なコーダへと循環していきます。「Sheep」では、「freedom was paid in blood 」と声を枯らして叫び、トランプ大統領以降、政治的・社会的な落胆を克服するための幸運な人々の責任を訴えています。"Astrovan "は、田舎のほこりだらけのハイウェイを巡っているデッドヘッドのイエスの存在を仮定した、温かくて憧れのロードトリップ哲学である。「Silver Lining」では、クインがハード・ドラッグのダメージと中毒の悪循環について考察しています。この曲のメランコリックな感情は、叫ぶようなボーカルと鳴り響くギターで、熱狂的で反抗的なコーラスへと発展していきます」
                               Amazonの紹介欄より


このバンドに近いのはMumford and Sonsなのですが、近頃の若い人はそれすら知らないかもしれません。今回お勧めするのは彼らのセカンドアルバムですが、その前に、絶賛を浴びたデビューアルバムのレビューの一つを転載させていただきます。

飛躍するに値するバンドを作る「それ」が何であれ、Mt.Joyはそれを十分に持っています。彼らのデビューアルバムには、ルミニアーズのファーストアルバムを思い出すような魔法がかかっています。最初は地味なグループで、一見シンプルな曲作りをしていますが、聴くたびに心の中で膨らんでいきます。しかし、ルミニアーズがまばらなフォークアレンジで成功したのに対し、Mt.Joyはビーチへのドライブ旅行のような、西海岸の冷たいフォークロックで成功しています。
アルバムの中でも、フロントマンのマット・クインがクールに歌い、魅力的なギターのリリックがきらめく中で、抗いがたい平静さで皮肉な歌詞を表現する「Astrovan」ほど、彼らの精神を体現している曲はありません。しかし、このセルフタイトルのアルバムを特別なものにしているのは、実はその深さです。アルバム・オープニングの「I'm Your Wreck」や代表曲「Jenny Jenkins」のように、キック・ドラムを中心としたチャンタリングを披露したり、「Julia」のようなジャジーでソウルフルなバラードや、陽気で笑顔を誘う小品「Cardinal」を難なく成功させたりと、13曲が見事に浮沈しています。13曲すべてが優れているだけでなく、それぞれの曲の相互作用も見事です。
"Rearrange Us "は、Mt.Joyが独自のサウンドでMumford & Sonsレベルの成功を目指していることを証明しています。」
                              Amazonのレビューより


はい、ということで今回のニューアルバム「Rearrange Us」の登場です。
「リアレンジ・アス」は、彼らの持ち味をそのままに、バンドとしての軌道が大きく変化したことを実感します。彼らを有名にしたサイケ調のフォーク・ロックから離れ、よりダイナミックな演奏と曲作りをするようになりました。(それがまた良いのです)

2ndアルバムでは、インディー・フォーク・ロックバンドのミュージシャンとしても人間としても成長したことを示しています。バンドメンバーは、それぞれの人生の喪失や失恋の経験を今回のアルバムに生かしていると語っています。

「Bug Eyes 」では、マット・クインが震えるギターをバックに、初恋の失恋を物悲しく回想しているところから始まります。"I'm always waiting for you girl / I'm always waiting ... And maybe I'll wait too long. 楽曲は古い映画を観ているかのように沁みてきます。
続く爽やかな曲「Rearrange Us」では、バンドは、その後の別れの痛みが簡単にはならないことを歌います。

アルバムが進むにつれて、彼らメンバーがそれぞれの過去を回顧をしているかの如くに響いてきます。誰もが経験した個人的な成長が、解決に向けて物語を形成し始めていくのです。
「Death」では、クインが「Get your mind off it, boy / There's room to grow」と歌い、それまでの曲のメランコリックなトーンとは大きく異なります。
しかし、このアルバムのクライマックスは、最後の曲である 「Strangers 」です。
キーボード奏者のジャッキー・ミクラウの素晴らしい演奏に支えられて、クインはこう歌います。「私たちの愛を消し去りたくはなかったけれど、主は私たちがそれを追い求めたことを知っている、愛は私たちを再配置しただけだ」。Rearrenge。復縁とまではいかないが、この経験とそれが彼らに教えてくれたすべてのことに感謝しているのでしょう。

人生は傷つくこともありますが、変化をもたらすこともあります。より個人的な経験を選ぶことで、Mt.Joyはこれらの教訓を学んだ方が良いと歌っているのではないでしょうか。
2020年、素晴らしいアルバムに出会えました。



というわけで、今回は2020年に出た必聴のロックアルバム5選でした。
まだまだありますので、引き続き次回も2020年オススメのロックアルバムをご紹介いたします。




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