2021年5月10日月曜日

木や花を印象的に撮る


サムズアップ・アメリカ!
植物の撮影で気が付いたこと




私は主にトレイルコースを歩きながら、野生生物や風景写真を撮っていますが、最近、植物園や自然の中で植物を撮影することにも大きな楽しみを感じています。このような小さな風景を撮影することは、風景写真よりも対話的な感じがします。ええ、植物とコミュニケーションを取りながら撮影する感覚です。

これは偶発的に見つけた小動物を反射的に撮るのとは対照的です。
動かない、逃げない植物は一見対処しやすいようにも思えますが、そこにはなにか別のアプローチが必要な気がするのです。というのも、ゆっくりと時間をかけて、細部を探し、小さな被写体をじっくりと撮影することが多いからです。

このように被写体をじっくり眺めて、細部を観察することは写真の新たな可能性を探るような面白みがあります。今回紹介する植物は、特別なものではありません。どんな風景や庭にもあるので、こんな身近なところにも魅力的な被写体があるじゃないかという無邪気な発見に満ちています。また、多くのカメラマンが何気なく見過ごしている風景だけに、個性的で独創的な写真を撮るチャンスがあると思えるのです。


撮影に際しては、どの案内書やガイドにもマクロレンズが必携とありますが、私は必ずしもマクロ単体を用意する必要はないと考えます。もちろん接写用にマクロレンズが最適化されていますが、初めは標準ズームレンズで植物に慣れることが大事だと思います。それよりも距離感とか、構図、光の当たり具合をいろいろ試してみるのが先決です。
私は散歩では標準ズーム一本でぶらぶら歩きながら、気が向いたらなんでも被写体にするので、広角から望遠までカバーするレンズが重宝します。今日は植物を撮ると決めた時は、単焦点の明るいレンズをカメラに付け、いざという時のためにマクロレンズを一本バッグに入れて歩きます。
レンズの最短撮影距離は短ければ短いほどよいでしょう。全体的にシャープな写真は、F16やF22などの小絞りにして、主要な要素にピントを合わせていきます。被写界深度の浅い写真なら、F2.8やF4などの絞り値を選択して、周囲をきれいにぼかすように心がけます。












植物を狙う際、私は多くの撮影で、レンズを被写体にかなり近づけて撮影しています。上の写真のように、気に入った構図が見つかるまで少しずつ試しています。この種の写真は、小さな変化が大きな違いを生むことが多いからです。また、下の被写界深度の浅い写真のように、カメラを手で持って、前後に自由に動かせるようにして、少しずつ位置を変えながら撮影することもあります。これらの基本的なテクニックに加えて、植物を撮影するためのいくつかのコツをご紹介します。



四季を通して植物を撮影する

自然の中でも、手入れされた庭でも、植物を撮影する機会は一年中あります。冬から春先にかけては、より慎重に被写体を探す必要がありますが、心を開いていればチャンスはいくらでもあります。冬場はなかなか色どりが少なく、植物を撮る季節ではないと思う方もいますが、そんなことはありません。寒いときだからこその、生の植物の姿はそこかしこにあります。むしろそんなときこそ、みんなと差をつけるチャンスだと思って外に飛び出しましょう。冬の植物撮影のポイントは色で勝負するよりも、植物特有のテクスチャーを強調することです。寒空の中で寒さに耐え、葉が落ちて枯れ木のように見える樹木でも、撮り方次第で季節感たっぷりの植物写真になります。またナンテンなど真冬に赤い実をつける木を見つけたら、灰色の樹木を背景にぼかして、鮮やかな赤い実の生命力を表現することができます。







模様やパターンを探す








自然は、注意深く観察することで、さまざまなパターンやテクスチャーを生み出します。時間をかけてじっくりと観察することで、撮影に適した様々な種類の小さなシーンを見つけることができます。上の写真は、繰り返しのパターンと一貫した色が特徴的なウッドソレルを撮影したものです。太平洋岸北西部のトレイルでよく見られる植物ですが、同じ高さに生えている状態の良い場所を探すのに時間がかかりました。そのおかげで、1回の露出ですべての要素にピントを合わせることができました。今度、カメラを持って出かけるときには、自然の中でこのようなパターンを探す時間を設けてみてください。地被植物、樹皮、サボテンなど、さまざまな植物には、探してみると面白いパターンやテクスチャーがあります。


浅い被写界深度を狙う



少なくとも風景写真好きにとっては、被写界深度の浅さとそれに伴うピンボケ要素を受け入れることは、考え方を大きく変えることになります。植物や花などの小さな被写体を撮影する場合、被写界深度が低いと、被写体が文字通りのものから抽象的なものに変わることがよくあります。花びらや茎、葉を撮影するのではなく、上の画像のように線や形を撮影するのです。このような抽象的な表現ができるので、被写界深度を浅くすることは、植物を撮影する上で非常に有効なテクニックです。

上の写真は、直径2センチほどの種もみを撮影したものですが、近づいてF2.8などの絞りを使い、ピント位置を変えて撮影することで、植物の中心部の放射状の性質を強調することができました。2枚目の写真では、同じ植物でもピントの位置や視点を少し変えただけで、種が逆さ傘のように見え、まったく違う印象になりました。同じ被写体を数分後に撮影した2枚の写真を見比べると、絞り開放で被写体に近づいて撮影した場合、ピントや被写界深度、パースペクティブを少し変えるだけで、印象が大きく変わることがわかります。




光を味方につける




逆光(光源が被写体の背後にある場合)は、撮影が難しい光の種類の1つですが、写真に面白みや雰囲気を与えることができます。この写真では、裸の冬の茂みと同じ高さに地面に寝そべり、低い太陽に向かって、浅い被写界深度を使って光と茂みの一部をボカしました。ネコヤナギやサボテン、多くの花のように、ぼんやりとした被写体は逆光によく耐え、自然な輝きを放っているので、写真にもよく写ります。このような写真を撮るためには、多くの実験と粘り強さ、そしてテクニックの完璧さが必要です。




接写




植物を撮影するとき、多くのの場合、被写体にかなり近づきます(大抵はレンズの最短撮影距離に合わせます)。近づいて撮影することで、雑念を払い、被写体を他と切り離して構図を整えたり、被写体の抽象的な要素を強調したりすることができます。池に浮かぶ蓮の花の写真の場合、必要とあらば足首まで水に浸かって撮らねばならないこともあります。



まとめ

日頃、風景を中心に撮っていた者が、いきなり目先の美しさに触れた時は、ファインダーから見える世界の違いに感動すら覚えます。特に微子的な観点から植物を細かに観察すると、その自然の造形美に改めて神を感じることもあります。「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、「逆もまた真なり」ではないでしょうか。雄大な景色に見とれた次の瞬間に、足元の小さな植物のパターンから新たな世界が見える・・・。なんと素敵な事でしょうか。
これだから撮影はやめられません。

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