フィトンチッド ：森林浴の効用を科学する
天気の良い日、緑豊かな森の小道を歩きながら、朝の爽やかな空気を吸っていると、なんだか心も体も軽やかになります。
森林浴を長く続けている人なら、フィトンチッドという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
多くの森林浴愛好家は、フィトンチッドを浴びることを森林浴の大きなメリットの1つとして自慢しています。それには理由があります。
フィトンチッドとは、樹木の精油のことで、薬効成分が多く含まれています。
これは人体のNK（ナチュラルキラー）細胞の活性化を促す化学物質なのです。NK細胞は癌と戦うタンパク質で、文字通り腫瘍やウイルスに侵された細胞を探し出し破壊してくれます。
これらの物質には、さらに多くの働きがあります。
フィトンチッドは森の宝物とも言われます。もう少し詳しく見ていきましょう。
深掘りフィトンチッド
フィトンチッドとは、樹木が放つ揮発性有機化合物（VOC）、つまり「精油」のことです。この化学物質には天然の抗菌・殺虫作用があり、樹木を細菌や寄生虫から守る働きがあります。
つまり、樹木はこれらの活性物質を放出して、有害な虫や細菌、病気から身を守るフィールドを周囲に作り出しているのです。野菜など他の緑色植物も同様です。
フィトンチッドには何千もの種類がありますが、ここでは最も一般的な森林関連化合物をリストアップしました。
フィトンチッドの種類
α-ピネン
d-リモネン
β-ピネン
サビネン
ミルセン
カンフェン
フィトンチッドは樹木を守るだけでなく、森林を訪れる人々にとっても有益なものなのです。
フィトンチッドの効果
フィトンチッドを人間が吸い込むと、体内で多くの素晴らしい効果が得られます。科学的に発見された反応には、次のようなものがあります。
免疫反応：2時間の森林浴でNK細胞の活性が高まり、それが数日持続する。
抗炎症作用：一般的な森のテルペンは、炎症を和らげ、酸化ストレスを軽減します。
神経系：森林の空気はリラックス効果をもたらし、神経系の活動を低下させます。
気分の高揚：森林の空気に触れるとコルチゾールレベルが低下し、β-ピネンには抗うつ作用があります。
睡眠：α-ピネンなどのフィトンチッドが睡眠を促進する。
血糖値：VOCへの暴露は血糖値を下げる可能性。
森林浴の研究者は、その効果をこのようにまとめています。
「ストレスレベルを下げ、免疫機能を高めることで、ストレスに関連する病気やライフスタイルに起因する病気の発生を減少させることができるようです。」
今すぐにでも森林浴をしたくなるような気がしませんか？
フィトンチッドと森林浴
森林浴は、一週間に一度程度のフィトンチッドの摂取が最適だそうです。
自然界に存在するこれらの化学物質が、身体的・心理的な健康をサポートすることが、証拠（そして直感）により示されています。
もちろん、その効果はフィトンチッドだけにとどまりません。視覚的な刺激、日光、接地要素、マイクロバイオームなど、その他の要素も森林の治療効果を高めています。
しかし、このように測定可能で、目に見える森林の構成要素を、研究によって解明することができれば、とても素晴らしいことです。それは、あなたの心がいつも求めていることを裏付けるもの。大自然の恵みは人にとって必要不可欠なものなのです。
専門家はこのように言っています。
「屋外で行う活動（静的なリラクゼーションから激しい運動まで）は、自然環境を訪れる際の安全性や自然とのつながりに関する主観的な認識を高めます。とともに、緑地に身を置くことによって、心身に有益な効果を与える可能性があります。」
外に出て、フィトンチッドたっぷりの新鮮な空気を吸うことは、健康増進のための格別な恩恵になりそうですね。
（でも、なかなか森に行けない人は、エッセンシャルオイルなどを使って、同様の効果を得ることもできますよ。）
いかがですか？ フィトンチッドって魅力的でしょう。
しかしながら、フィトンチッドの全貌、詳細はまだまだ解明されていない部分も多く、この後の更なる研究が期待されます。
科学が人類にとって森林浴の魔法を解明するものそう遠くないでしょう。でもそこまで待たずに、今行ける時に森を訪れてみてください。理屈がなくとも、その効能は実感できるはずです。
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