2022年10月4日火曜日

超キュートな「リアル・ピカチュー」

サムズアップ・アメリカ!
北米で最も可愛い哺乳類、アメリカン・ピカ




● American Pika (ナキウサギ)

北米で一番かわいい動物はなんですか?
こう問われると、いろんな答えが出てきますが、「ピカ」と答えたら反論する人はいないでしょう。とにかく見た目が愛らしく、その鳴き声も歌声のように人々を魅了する愛らしい小動物です。

北米西部のロッキー山脈は、カナダのブリティッシュコロンビア州の最北部からニューメキシコ州の南部まで、多様な生物相を持つ広大な地域です。
アメリカ地質調査所(USGS)は、ロッキー山脈に10の森林帯を認定しており、その最高峰は標高4,300m以上
そして、その多くの高峰の頂上、森林限界の高さ、あるいはそのすぐ上の岩の多い場所に、このアメリカナキウサギ(通称ピカ)が生息しているのです。



数ある哺乳類の一種ですが

「ピカ」つまりアメリカナキウサギ(Ochotona princeps)は、世界中にいる29種のナキウサギのうちの1種です。アメリカナキウサギは、同じウサギ目(Lagomorpha)に属するため、ウサギやノウサギの近縁種にあたります。
属名のOchotonaはモンゴル語でナキウサギの名前であるochodonaに由来し、princepsはラテン語で "首長 "を意味します。
一般的に愛称で「ピカ」と呼ばれるのは、カナダ北部の先住民族であるチペワイヤン族がピカの名前を "小さなウサギの長 "という意味に翻訳したからだそうです。
ピカには、ロックラビット、ネズミウサギ、口笛ウサギ、コニーなど、多くの通称があります。






ピカの見た目

アメリカナキウサギは、ウサギというよりハムスターやモルモットに近いかもしれません。体長は15~20cm、体重は成人で7オンス(198g)ほど。

草食性の哺乳類で、淡褐色の厚い毛皮、丸い耳、尾はない。ウサギやノウサギと違い、後ろ足は前足より長くないです。足の裏は密生した毛で覆われています。
なおナキウサギはウサギ目(Lagomorpha)最小の動物です。



優れた感覚

ピカの一番の特徴は優れた聴覚と視覚。そして鋭い爪と毛皮で覆われた足で、崩れやすい高山の岩場でも素早く移動することができる能力です。
また、とてもよく鳴く動物でもあります。(だからナキウサギ)
怖くなると「イーッ」と甲高い声で叫び、周囲に危険を知らせます。また、自分の縄張りを守るため、そして他の地域のピカとコミュニケーションをとるために、さまざまな鳴き声や歌を歌います。



生息地

北米のピカは主にロッキー山脈の最高峰の樹林帯の上や、その周辺の岩場に生息しています。巣は距骨の間の深いクレバスや穴、高山の草地やその他の植生に近い場所に作られます。
アメリカナキウサギは、その個体数と地理的条件から36の亜種に分類されています。
彼らはカリフォルニア州のシエラネバダ山脈、オレゴン州とワシントン州のカスケード山脈、ニューメキシコ州南部からブリティッシュコロンビア州にかけてのロッキー山脈一帯に生息しています。





エネルギッシュな小動物

ピカは冬眠しないし、生涯ずっと移動もしません。長く厳しい冬を越すために、短い夏を標高の高い山々で過ごし、植物を採取して暮らします。
ナキウサギを研究する科学者によると、冬の食料を確保するために、1頭のナキウサギが夏の間に14,000回、1時間に25回も採食に出かけるといいます。すごいエネルギー量です。
このような超忙しい活動の体力を維持するために、ナキウサギは1日に9回も食事をすることがあるそうです。



暮らしぶり

ピカの社会的な交流は様々です。岩場や崖を縄張りにしている個体は非社会的で、自分の縄張りを広く確保し、それを守っています。彼らは様々な鳴き声で他のピカに自分の存在を知らせます。隣人に出会うと、「私のテリトリーから出て行ってー」と攻撃的な追いかけっこが始まるのが普通です。
いっぽう彼らはは家族集団で生活する傾向があり、集団で交流し、共通の縄張りを守ります。家族内では、互いに毛づくろいをし、並んで座ったり、鼻をすり合わせたりすることもあるそうです。



シーズン中の求愛

毎年春になると、ピカは新しい交尾のペアを作ります。オスは選んだメスに何度も歌を歌いながら求愛します。繁殖は5月下旬、まだ雪が残っているうちに始まります。妊娠期間は約30日で、2~6頭の仔を産みます。
赤ちゃんピカは生まれてから9日目くらいにようやく目が開き、毛もなく、目も見えません。母親は単独で子育てをします。4週目になると、子供は巣を離れ、自給自足を始めます。メスは通常、毎年夏に2頭の子供を産みます。



生活の知恵

ピカは草食動物で、必要な水分のほとんどを植物から得ていまする。雪が降る寒い冬でも、冬眠はしません。
その代わり、栄養価が最も高くなる夏の間にさまざまな植物を集めて保存しておきます。集めた食糧は岩の上に広げ、太陽の光で乾燥させます。乾くと、貴重な植物を集めて「干し草の山」に積み上げ、岩や岩の下に隠しておくのです。





食べる力

ピカの歯は鋭いノミのようなもので、山の草原に生えるさまざまな植物を刈り取ります。草や雑草、低木が餌の90%を占めます。
また、木の皮や針葉樹の針、スゲ、地衣類、クローバーなども食べます。
生物学者の研究によると、ピカの干し草の山の重さは27キログラムにもなるそう。干し草の山は縄張りの中に隠されており、高さは2フィート(0.6メートル)に達することもあり、30種類以上の植物が含まれているそうです。
また、生物学者は、長い冬の間、食べられる植物を保存するために、有毒化学物質を多く含む植物を干し草の中に入れることも発見しています。冬の終わりには、毒が分解された後の元有毒植物も食べるという知恵も持っています。



生きるための場所

ロッキー山脈のナキウサギは生まれた場所から数マイル、数キロメートルのところで一生を終えます。野生のナキウサギは、山頂で一緒に暮らす多くの捕食者を避けることができれば、7年まで生きることができます。
コヨーテ、テン、イタチなどが険しい山々を共にし、日々脅威にさらされています。さらに鷹やワシから格好の餌食と目されるので、空からの危険もあります。



生命の危険

気候変動は間違いなくロッキー山脈のピカの個体数に対する最大の脅威です。
生物学者の研究によると、近年、ピカの生存・生育に適した平均標高が275mも上昇していることが判明しました。
気温の上昇は積雪量を減らすだけでなく、断熱性の高いナキウサギの厚い被毛に体温がこもってしまい、オーバーヒートの結果、ナキウサギが死んでしまうこともあるそうです。
また、家畜の放牧や、山頂のテリトリーに入る人間との交流の増加も、この魅力的な北米の哺乳類を脅かす要因のひとつです。



ナキウサギが泣いている

悲しいことに、アメリカナキウサギは2度にわたって絶滅危惧種保護法の適用を受けられず、直近では2016年に適用が却下されました。
科学者たちは、この却下は科学的事実ではなく、政治的理由からなされたものだと主張しています。環境保護問題に巻き込まれる、この小さな生き物をなんとかしてあげたいものです。

「全米で最もかわいい動物のひとつ」
「ウサギとプレーリードッグを掛け合わせたような動物」
と評された貴重な在来哺乳類が、気候変動という増大し続ける問題にさらされ、不確かな未来に直面していることは、とても悲劇的なことです。



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