2020年12月14日月曜日

米国流:初心者のカメラ選び

 初めてのカメラはどれがいいか

 


 私が現時点で思う、ビギナーによるカメラの選び方を考察してみました。時に応じて私の意見はクルクル変わるのが特徴なので、あくまでも今の時点で、初心者にベストと思われるカメラの選択法をご紹介するものです。

まず結論から。

その1:失敗しない写真はコンパクト・デジカメ

その2:身の丈に合うカメラ

その3:性能より使い勝手

その4:レンズ沼にハマるな

 これから写真撮影を始めようという人向けなので、中級以上のアマチュア、セミプロの方には相応しくありません。あくまでカメラに興味があり、これからスチル写真中心に撮っていこうという方のためのアドバイスです。しかもこれは写真の腕を上げるためのモノではなく、あくまでも手っ取り早く、自分なりに満足できる写真を撮りたい方のため限定の考察です。今後スキルを上げていって、より高いレベルの写真を目指す方はもっと効果的な学習法がたくさんありますので、そちらに進んでいってください。

 なぜ私がそんなことを書くのかというと、世の中に広く伝えられている撮影法が、あまりにも正当すぎて、入門者には入りづらいからです。近年カメラ愛好者が減って、簡単に撮れるスマホにシェアを奪われている理由の多くはそこにあるのです。

 確かに正攻法で写真の基礎から学んでいくことは大切です。光学の基礎から学び、写真がどのようなメカニズムで撮れるのか、知っておくことは必ず役に立つ時が来るでしょう。しかしこのご時世、素人が高い一眼カメラを買ってようやく基礎的な撮影ができるようになり、いざスマホの写真と比べてみると、「あんまり変わんないなー」としょんぼりしてしまう事例がたくさんあります。

 デジカメ初期の頃は、確かに高価な一眼レフと安価なコンデジとでは雲泥の差がありました。しかしテクノロジーの進む現代では、スマホの写真も拡大しなけれほとんど見分けることができないくらいよく撮れるようになりました。

 特に日常のスナップ撮影ならスマホで十分です。じゃあなぜデジカメ? ということになります。そもそもカメラを扱う人というのは、ファインダーを覗いて適正な設定をする、被写体を捉える、シャッターを切る。この一連の動作そのものに喜びを感じるタイプの人種です。日頃スマホ・カメラを常用する人は、この間のプロセスを極力省いて簡単に済ませたいという意識があります。同じ撮影という行為でもまったく違う価値観で写真を撮るものなのです。

 これからカメラで撮影をという人には、大きく分けてふた通りあると思います。スマホ写真に物足りなさを感じた人か、あるいは美しい芸術的写真に触発されて、自分もあんな写真を撮りたいと思ったかです。

 高い向上心を持つ人は最初からハイレベルな高級機を買って正解だと思います。それなりの投資をすることによって、モチベーションを高めることができるからです。往々にしてはじめから性能に妥協し安価な一眼入門機を買ってもなかなか上達は望めないのが常です。

 いっぽうスマホに限界を感じてステップアップを図りたい。より良い写真を撮りたいという方々がいます。そういう人は、資金のかかる本格コースを避けて、かつ一歩上のレベルへと進む道があります。それが今回、私がお勧めするカメラ選びです。そもそも本格的にカメラをやりたい人口は極めて少数派。8割以上は気軽にカメラを楽しみたいというカジュアル派だと思います。

 なので本格を目指す少数派の方は、以下の記述を無視してプロまたはプロ級の人の指示を仰いだほうが賢明です。ここでは大多数のカジュアル派のカメラ初心者に向けて、前述したカメラ選びのお勧めをいたします。


その1:失敗しない写真はコンパクト・デジカメ

 スマホカメラに飽き足らなくなったら、1インチセンサーの高倍率のコンデジをお勧めします。多くのコンパクト・デジカメは基本性能がオートで簡単に撮れるようにできています。スマホカメラからの移行もスムーズに行えるはずです。しかしスマホと専用カメラとの大きな開きはレンズの大きさやセンサー・サイズというより、構造的な問題、つまり焦点距離の差にあります。これだけはスマホがいくら頑張ってもなかなか抜け出せない弱点です。 

 あの薄いスマホでは光学式の高倍率ズームは作ることすらできないのです。デジタル・ズームも処理能力の向上でうまくはなりましたが、やはり人工的な印象をぬぐうことは難しいのです。

 ここでもし基本知識もなくスマホから一眼カメラへ移行すると、その取扱いの差につまずいてしまいます。カメラの構え方から始まって、画角、構図選び、絞り、シャッタースピード、ISOなど考慮すべき項目が多すぎて、戸惑うこと必至です。そこへ行くとコンデジは基本オートありきなので扱いやすいのです。

 そして少し写真を味付けしたくなった時のマニュアル・コントロール機能もほとんどのコンデジに搭載されており、スマホでは味わえないさじ加減を優しく学んでいくことができます。まずはオートで構図や距離感、被写体の動きなどに慣れ、一歩上の写真が撮れることを確認できるのが、コンパクト・カメラの役目だと思います。

 また、なんといってもコンデジの多くは軽量小型で持ち運びに優れ、いざという時シャッターチャンスを逃しません。ほとんどのコンデジにプリセットのシーン別撮影ガイド機能が内蔵されているので、夜景や動きのあるシーンでもカメラ任せでいい写真が撮れます。

 しかもいまや10年ほど前の一眼を凌駕する連射やオートフォーカス機能がついているので、手振れや光量不足になやむことなく、極力失敗のない写真が撮れるように配慮されています。

 おススメは高倍率ズームのコンデジで、これならスマホにないダイナミックな写真を手軽に味わうことができます。ズーム、描写力ともに優れた機種をに選びたい方のために以下のカメラをお勧めします。

PANASONIC Lumix TX1 1inchセンサーで10ズーム、ファインダー付きで最小サイズ。

CANON G5X Mark II 明るいレンズ、5倍ズーム、多彩な機能が盛り込まれた一台。

SONY RX100  敢えて初代のRX100を選ぶのは、基本に忠実な古びない高性能だから。

RICOH GR III コンパクトながらAPS-Cセンサーを備えた究極のスナップシューター。

 上記のカメラはどれも世間から一定の評価を得ている優秀機です。いずれを選ぶかはその人次第。撮影対象や取り回しの相性もあるので、一つに絞れません。が、どれを選んでもその特性を生かせば、きっといい写真が撮れるはずです。初めてカメラに触れる人から一眼レフに慣れた人まで納得の性能を備えているカメラたちとしておススメです。


その2:身の丈に合ったカメラを選ぼう

 コンデジでは最新のスマホのカメラと大差ないのではと気になる方は、迷わず一眼、それも今ならミラーレス一眼に移行されるとよいでしょう。

 いまちょうどカメラ業界も過渡期で、かつてよく売れたずっしり重いAPS-Cセンサーの一眼レフからより軽量小型のミラーレスへとシフトしています。重さは気にならないという方は、旧来の一眼レフ・カメラでもいいでしょう。入門機としては、CANON EOS KISSシリーズ、NIKON D5600 いずれかを選ぶのが無難です。(個性で選ぶならPENTAXもありかと)

 しかしながら今後の展開を考えると、いま各社が競って出しているミラーレス機のほうが将来性があります。なにより最新技術の更新が目覚ましく、一年前と今年の機種でさえ大きな進歩があったりします。

 ただここで注意したいのは、初めての人がフルサイズを選ぶ危険性です。確かにAPS-Cよりセンサーの大きいフルサイズの方が、撮影において様々な優位性があります。プロ級の人の中には初心者こそ最高のカメラを持つべきだという意見もあります。ただここで敢えて言うならば、フルサイズは先の楽しみにとっておいた方が、スキルアップのモチベーションになると思います。最初から最高のものを手にすると、それだけで満足してしまうことがあるのです。確かに高性能のカメラのおかげでそこそこいい写真は撮れるでしょう。でもそれはあくまでカメラの力によるもので、あなたが磨き上げた腕ではないのです。

 写真を撮る喜びというのは、いろいろ試行錯誤しながらよりいい写真に近づいていくプロセスを楽しむことであって、一発で満足できる写真を手にしたらそれで完結してしまいます。きっとそういう人はその後あまりカメラに熱意を持たなくなり、使用頻度もどんどん落ちていくはずです。それこそ高価なカメラは宝の持ち腐れですよね。

 なので最初は身の丈に合ったカメラを持つべきなのです。自身の成長とともにカメラも更新していけばいいのです。


 そのような前提で考えて、今お勧めなカメラをいくつかご紹介します。以下はいずれもAPS-Cサイズのセンサー機です。

SONY a6400 コンパクトボディに最速オートフォーカスを搭載したトップセラー。

NIKON Z50 付属レンズでも既にプロ級の写真をたたき出せる新標準機。

FUJIFILM X-S10 他社にはないフジ独自の多彩な色味を高画質で楽しめます。

PANASONIC G9 PRO 高速連射、人体認識機能。動きのある被写体に強い行動派むけ。

OLYMPUS OM-D E-M5 Mark3 ボディ内手振れ補正が付いていて、多機能ながらバッグに収まるようなコンパクトさのマイクロフォーサーズ機。コスパも最高です。


その3:性能より使い勝手

  いくらスマホ全盛の現代でもカメラを手にしたことのない人は少ないでしょう。しかしここは初心に帰って、全くの白紙からカメラを見るようにしましょう。うろ覚えの知識でマニュアルを読まず、手探りで使い始めると習熟に時間がかかります。ぜひカメラの基本操作だけは、メーカーの指示に従って順に覚えて行ってください。それだけなら1時間もかかりません。その後はカメラによって特徴は様々です。近頃のカメラは機能が盛りだくさんで、全部覚えて使うには時間がかかります。まずは自分が撮りたい対象を決め、納得のいくまで繰り返し撮り続けてください。頻繁に使う操作は徐々に絞られてきて、やがていちいちダイヤルやカメラの部位を見ずとも操作できるようになってきます。

 多くのカメラ上達法にはAモードつまり、絞り優先から始めましょうと書かれていますが、最初はフルオートでいいと思います。ただしどのシチュエーションでカメラがどの設定を判断したのかは、学習材料になります。いい写真が撮れた時はシャッタースピード、絞り値、ISOなどの数字に留意しましょう。のちにマニュアルモードで撮影する際に役立つ情報です。カメラの各種パラメーターは始めはとっつきにくいようですが、慣れると頼りになるものです。ここは一歩先へ進むために、しつこいくらい数字にこだわってみてください。

 数か月使ってみて、それでも操作が煩わしい、理解できない部分があったら、それはカメラとの相性が悪いのかもしれません。カメラ全体で見れば統一した操作手順もたくさんあるのですが、メーカーによってカメラのインターフェースはまちまちです。使い勝手が悪いのなら思い切って早めに他社製に切り替える英断も必要です。私は昔SONYのカメラの操作方法にどうしても馴染めなくて、PANASONIC機に変えたら、すんなり使えるようになった、なんてこともありました。人によって逆のケースもあるでしょう。あなたの使い方にあったカメラを選ぶのは、その後に大きく影響しますので、店頭でしつこいぐらい手に取って手に馴染むものを見つけてください。


その4:レンズ沼にハマるな

初心者が気にすることではないのですが、カメラを始めて間もなく、キットレンズに物足りなさを覚える人がいます。そういった人は、まず周りのアドバイスに従って、単焦点レンズを試すようになると思います。素晴らしいボケが簡単に作れますので、そのふんわり感に魅せられるのです。それは端的に写真を撮る醍醐味の一つなので否定はしませんが、そのボケに満足してほかのスキルがおろそかになることは避けたいです。しかし一度、キットレンズと明るい単焦点を較べるとその差に驚いて、じゃあ次は広角レンズ、望遠レンズといろいろ試したくなります。挙句はやっぱり大三元のレンズ、と憧れを描くようになり、またそれに見合ったハイアマチュア向けのカメラにアップグレード、と先を急いで限りなく散財していく・・・というのがカメラを趣味とする者の宿命のように言われています。

 本人がそれを望むのなら無下に邪魔するつもりはありませんが、あとで後悔しないようにカメラ本来の楽しみを味わってから先に進んでください。ビギナー用カメラ、乏しいレンズ、限られた条件下でどれだけ自分の腕を磨けるのかを見極める方が、そのあとはより楽しいカメラライフが待っています。

 先を急がず、一台のカメラを使い倒してみてください。サブ機は買い足してもいいですが、長く付き合う相棒のようなカメラに出会えれば最高の喜びとなります。

 どうかあなたにとって素晴らしいカメラライフが開かれますように。




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