2020年12月28日月曜日

初心者のための写真機選択2

 変わりつつあるカメラの売れ筋



 先日の続きです。今回は本格志向のカメラ初心者はどのカメラを選ぶかです。

 結論から言って、フルサイズ・カメラはミラーレスであろうと一眼レフであろうと初心者には不向きです。いちばんの理由はレンズ・システムの大きさです。フルサイズのレンズ規格はそれ以外のカメラと比べけた違いに大きく重いので、これからカメラを始めようという方には、文字通り荷が重くなります。大きなカメラ・システムの取り回しには相応の技術も要求されるので、これは間違いないです。

 後述しますが仮にかなり軽量ボディのフルサイズであったとしても、現行のどのメーカーのレンズシステムもAPS-Cとは比べ物にならないほど重く大きいです。これはセンサー・サイズ上致し方ない問題で、そう簡単に解決できるものではありません。

 私が初めてAPS-Cセンサーの一眼カメラを手にしたのは、11年前に発売された、CANON EOS KISS X3でした。ガイド本まで買って気合を入れて使い始めたのですが、どうにもフォーカスがうまく合わず、何度撮ってもなんだかぼんやりした写真しか撮れませんでした。付属したキットレンズを疑い、友人の単焦点で試しましたがやはりイマイチ明瞭ではありません。結局カメラ本体の不具合であろうと思い、保証期限の切れる一か月以内に販売元に送り返してしまいました。それ以来、高額なカメラは通販やネット販売ではリスク高しというイメージが付きまとい、遠ざかるようになりました。

 しかしその翌年には出て間もないCANON EOS 60Dというカメラを運よく入手できました。今度は店の展示品で、軍艦部に目立つ傷のあるものでしたが2割引きで購入できました。万が一不具合があったら新品と交換してくれるというので、処分品ではありますが思わず手を出してしまいました。

 購入の決め手はEOSシリーズではじめてバリアングルが搭載されたから。しかも宣伝媒体では口をそろえて、ミドルクラスなのに軽量小型化に成功した、と大絶賛で宣伝されていたカメラです。今思うと、本体重量675g、ズームレンズを付けると軽く1.5キロを超えてしまいます。当時はこれでも軽くなった小さくなったと称えていたのですから隔世の感があります。

 でもEOS 60Dは当時としては新しいライブビュー機能がついて、ファインダーに慣れていない初心者にも本当に扱いやすいものが出たという感じでした。はじめはカメラ任せのオート設定ばかりで撮っていましたが、それでもその艶と立体感のある写りにいたく感激したのを覚えています。ちょうどうちの子供が幼い頃だったので、このカメラで成長記録を撮れたのは幸いでした。

 EOSシリーズはファミリーフォトだけではもったいないくらいよく撮れるのですが、一方で持ち出す機会は徐々に減ってきました。もとより「作品」を撮る意識に欠けていたので、家族以外を撮るのには持ち出しやすいコンデジが楽という考えに傾いていったのです。コンデジは少しでも新しい機能を搭載したものが出ると、飛びつきました。買い求めやすい価格というのも理由の一つでした。

 EOS入門から早や10年。今やミラーレスカメラの時代です。最新のEOS Kiss M IIは本体重量が387g。もう笑っちゃうほど軽くなりました。付属のEF-M15-45mm F3.5-6.3が重さ130gですから合わせてもたった517gという軽さです。写真撮影時の機動性というのは撮る側のメンタル、ひいては作品の出来に関わりますから、決して軽視できないのであります。

 

 ではミラーレスでフルサイズのカメラはどうかというと・・・。

 代表的なところではいま一番売れに売れているSONY a7III。本体重量556g。これはよく健闘している方でしょう。このシリーズ初代機からこの辺りのスペックでスタートしているのですから、さすがミラーレスのパイオニア、SONYといったところです。

 しかしレンズに目を向けると、これはさすがに軽いとはいいがたいです。キットレンズとして付属してくる焦点距離16-35mm標準ズームレンズにしてすでに518g。本体との総合で1.7kgを超えるわけですから、いかにフルサイズの重量が突出しているかわかります。

 最近出たソニーのフルサイズ・ミラーレスa7Cは確かに常識破りの計量小型化を果たしました。本体重量509gは私のAPS-C機EOS 60Dの755gよりはるかに軽くて小さいです。しかしレンズシステムは変えられません。最近出た評判のいいソニーのEマウントレンズFE 12-24mm F2.8 GMは847gで定価は345364円です。重さもお値段もビギナーには不釣り合いなのです。

 プロのカメラマン、ハイアマチュアならいざ知らず、趣味でこれから写真を楽しもうという人にとって、重さは最初の壁になります。カメラを持ちだす頻度も重量と比例するように変わってきます。少しでも多く写真を撮りたいのであれば、迷わず軽量小型のカメラを選ぶべきでしょう。APS-C機はこれから軽量小型がどんどん出るはずなので、期待していいと思います。

 そういった観点から、いま一番初心者にお勧めできるミラーレス・カメラはどれかと考えました。以下がその候補です。


1 Nikon Z50


 今のところ、新マウント・システムのZシリーズ唯一のAPS-C機です。ニコンとしてはかなり小型の部類に入るサイズ感です。コンパクトなのにニコンのフルサイズ・カメラと同じマウント径なので、レンズを共用できるのが強みです。今はレンズの数も乏しいのですが、これからサード・パーティも加えてたくさん出るであろうレンズ群には期待できます。それにZ50のキットレンズも評判がすこぶる良いです。初心者向けにわかりやすいインターフェースも導入されており、このキットレンズと本体だけで当分腕を磨けるようになっているようです。唯一疑問なのはチルト式モニターを下向きにしたこと。ファインダーが上部にあるのでこうしたのでしょうが、他社は軒並みバリアングルにシフトしているだけに、ちょっと惜しい気がします。



2 Fujifilm X-S10

 APS-Cミラーレスの開発で、私が今一番注目しているのが富士フィルムです。フジはここ数年のSONY、CANON、NIKONによる三つ巴の熾烈なフルサイズ戦争をしり目に、着々とAPS-C機の開発に焦点を当ててきました。独自のインターフェース、操作性にこだわって一時はガラパゴス化を懸念しましたが、最近はユーザーの入り口を意識した親しみやすいものに変わってきました。その最新の成果がX-S10です。
 26M X-Trans CMOSセンサー(X-T4と画質は同じ)、最大6.0段ボディ内手ブレ補正搭載、メカシャッター8コマ/秒連写、最大30コマ/秒連写(電子シャッター&クロップ使用時)と上位機種の勝るとも劣らないフジの技術をふんだんに盛り込んだ意欲作です。もちろんフジお得意のフィルム・シミュレーションも満載で、他社には出せない色味の強みを前面に押し出してきています。加えてグリップを大幅に持ちやすくして、安定性も確保しました。今後出るであろう次世代機次第では、APS-C機の天下はフジフィルムになるかもしれません。



3 Panasonic G99

 マイクロフォーサーズ勢ではオリンパスのOM-D E-M5シリーズの売れ行きが好調ですが、PanasonicのGシリーズも侮れません。軽量小型はもちろんのこと、マイクロフォーサーズの望遠に強い特性を生かして、レンズも小さく廉価なものがたくさん出回っています。同じレンズ沼にハマるのでも、フルサイズと比較すると予算は10分の一くらいで済みます。

 G99の良いところは、独特の連射性能。LUMIXシリーズのお家芸である「4Kフォト」モードが初心者にとても便利です。この機能を使えば4K画質の静止画が30コマ/秒で記録できるため、動きのある被写体もピタッと止めて描写するのはうってつけです。本体に手振れ補正機能も付いていて、どんな被写体にも慌てることなく追従できる機動性が魅力の一台です。



4 Canon EOS M6 Mark II


 近年キャノンが独自性を打ち出してきたEF-Mマウントですが、本機が出るまで少し足踏み状態が続いたようです、本来ならあと数本は出ていてもおかしくないレンズのラインアップが滞りがちで、そんな中発売された最新機EOS KISS M2も目新しい性能の進化がイマイチです。それならば少し前にでたm6 Mark IIの方がより携帯性に優れ、コンパクト・デジカメ並みの扱いが可能です。それでいて定評あるキャノンの描写性能や色再現を堪能できます。エントリー層からミドルクラスまで末永く使えるカメラとしておすすめの一台です。



5 SONY a6400


 SONYのカメラの特徴と言えばなんといってもオートフォーカス性能でしょう。世界最速0.02秒を謳っているだけあってとにかく爆速。しかもAIを搭載したリアルタイム・トラッキングで瞳オートフォーカスが心地よいくらいうまく追従してくれます。

 これはSonyのここ数年に出たどの機種にも共通していますが、このハンディなサイズ感で人物撮影を中心とするなら、これ以上ふさわしカメラはありません。大きさ軽さだけでなく、フルサイズ機のフラッグシップα9と同じ画像処理エンジンが搭載されているのも頼もしいですね。

 もう一つ言うなら、425点像面位相差AFとコントラストAFによる広いAFカバー範囲。これも他社を引き離す精度抜群の高性能ですので、もはや向かうところ敵なしのカメラと言ってよろしいでしょう。あとは好みの問題で、操作性がイマイチだとか、デザインが気に入らないとか言われているようですが、相性もありますので、一度店頭で手に取って試してみるのがいいでしょう。とにかくいま一番案的にはいったド定番のAPS-Cミラーレス機です。


 今回は以上のカメラを希望を託すような気持で推薦させていただきました。いずれも現時点で、ビギナーにとってすこぶる扱いやすく、機能面においても過不足の少ない「よく撮れる」カメラばかりだと思います。ご購入の参考にしていただければ幸いです。


まとめ

 これからのカメラはどうしてもスマホを意識したものにならざるを得ないでしょう。逆に言えばスマホのカメラとどれだけ差異化、優越性をアピールできるかです。そいういった意味では私の拘る豆粒センサーのコンデジは不利に違いありません。かといって圧倒的な性能を誇るフルサイズでは、そもそもユーザー層、使用目的など、根本的な土俵が違います。そうなるとカメラメーカーがスマホに打ち勝つゾーン、落としどころはAPS-C(あるいはマイクロフォーサーズ)の更なる小型化、高性能化しかないと思います。

 そういった視点から来年以降、出てくるカメラを見て行けば、その先のカメラの未来もおのずと見えてくるのではないでしょうか。次回はそういった観点から、カメラの未来を占っていきたいと存じます。



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