2020年12月27日日曜日

ビギナーのためのカメラ選び1

 激変期のカメラ業界



 写真撮影初心者の方は、これからどのようなカメラをお求めになるのでしょうか?

 いまカメラ業界が未曽有の激変期にあるのをご存じですか?

 これからカメラを趣味や仕事に役立てたい方は、ここ数年のカメラのトレンドをよく読んでおく必要があります。見誤るとあとで後悔することになりかねません。それほど今、カメラ業界は激変中なのです。

 ここではこれからカメラ購入を予定している方に向け、いま買うべきカメラ、その選定方法をご紹介します。

 2020年は大きなターニング・ポイントにあたる年でした。

 象徴的なのは、一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)が主催するイベント「CP+」がコロナ・ウィルスの影響で中止になったことです。これは世界が注目するカメラ業界最大の祭典の一つです。各社新製品のお披露目の場であり、今後の市場を左右するイベントなだけに中止は大きな痛手でした。それに追い打ちをかけるように、カメラ雑誌の老舗「カメラマン」「アサヒカメラ」が相次いで廃刊になりました。さらにオリンパスのカメラ事業からの撤退というショッキングなニュースも飛び込み、カメラの世界は一気に不透明さが増した、そんな年だったのです。

 勿論コロナ禍という予想外の出来事が大きな要因ではありますが、それ以前からカメラ業界はじわじわと下降線をたどっていました。端的に言って、それはスマホ・カメラの台頭によるものです。統計によると世界全体のカメラの売り上げは2010年がピークでした。それはちょうどスマホのカメラが注目に値する性能を持ち始めてきたころです。

 もう重たい高性能なカメラはなくても、手軽で簡単に扱えるスマホ・カメラの方がいい、という一般的な考えが急速に普及してきました。スマホ自体も機能競争が頭打ちで、次なる差別化を模索していく中、カメラこそが次世代スマホをけん引すると読んだのです。それは見事に当たり、年を追うごとにスマホのカメラ機能は向上しました。

 そんな流れの中、各カメラメーカーがこぞって打ち出したのが、カメラの高機能化です。

 もうドル箱だったコンデジはすっかりスマホにシェアを奪われ、奪回の余地はないと見限ったようです。事実、今年はいわゆる豆粒センサーと呼ばれる1インチ以下のセンサー・カメラはほとんど新製品が出ませんでした。代わりに各社が競って発売したのは、フルサイズ・センサー搭載の高性能ミラーレスばかりでした。

 この流れは一昨年から始まったものですが、言ってみれば先見の明があったソニーにキャノンとニコンが追従した形です。この三社がいまフルサイズ・ミラーレスを巡ってしのぎを削っている状況が来年も続くとみられます。なのでカメラ購入の際は、ここに注視するのが妥当と思われます。

 ただし、いきなりカメラ初心者がこの流れに乗ろうとすると、躓きます。ミラーレスカメラの軽量小型化が進んでいるとはいえ、コンデジとは雲泥の差。ましてやスマホカメラに飽き足りなくなった人がフルサイズに進むのは、幼児がプールから大海へ飛び込むようなものです。ここは慎重なカメラ選びが求められます。

 そこで今回は年末年始、ボーナスやお年玉でカメラを買う方のために、どのような機種を選ぶべきかを考察いたしました。


 カメラ愛好家の二極分化

 これからカメラを買う人は大きく二手に分かれると、私は思います。

1 スマホ卒業派

2 本格志向派 

 この二つです。正確には第3の選択ともいえる「動画派」があるのですが、これは私の守備範囲外なので割愛させていただきます。

 1はとにかく簡単に手軽におしゃれな写真を撮りたい。というスマホから一歩進んだ写真を志向する人です。こういった方が実はカメラ購入者のシェアの大半を占めます。しかし現状カメラメーカーはこの欲求を満たすカメラを十分揃えているとはいいがたい状況です。前述のとおりスマホカメラの性能向上が著しく、ほとんどのコンパクト・カメラが優位性を示せていません。昨今厳しい財政事情の中、各社ともハイエンドカメラへの投資集中で、入門機には予算を割けないのが現状でしょう。

 そんな中、現行機種の中で、機能、写真クオリティの面でスマホより優れたカメラをご紹介します。ご協力いただいたのは、ニューヨークのカメラ販売店(義弟が店長をしております)で、デモとして店頭に出ているものをお借りしました。


1 SONY RX100 VII


 スマホには搭載できない1型センサーを採用する、高級コンデジの先駆けです。2012年6月に発売された初代モデルから、2019年8月に発売されたRX100 VIIまで、すべての発売モデルが現行品としてラインナップされている稀有なシリーズです。とにかく簡単にきれいな写真が撮りたい方にはうってつけのカメラと言えるでしょう。VIIではAF速度が0.03秒から0.02秒に短縮。AFエリア数は、像面位相差315点・コントラスト25点から、像面位相差357点・コントラスト425点へと増えました。わずかな差に思えますが、バージョンアップするたびに確実にブラッシュアップされる最強のコンデジと言えるでしょう。


2 RICOH GR III


 高画質コンデジの代名詞的な存在としてマニアックな人気を誇るリコーGRシリーズ最新作。3月中旬に登場したこの最新モデルは、シリーズ初の手ぶれ補正機構を搭載しながら、旧モデルよりもボディを小型化した点がすごい。APS-Cという、一眼で使用するセンサー搭載でこのコンパクトさは他にない魅力です。単焦点ながら一眼レフカメラに匹敵する高画質を求めるなら、本機はその期待に応え得るハイエンドなコンデジと言えるでしょう。


3 Canon PowerShot G5 X Mark II

 以前はG7 Xを推奨していたのですが、このG5 X Mark IIはズームがより上の5倍です。かねてより私はスマホとコンデジの差はズームにあると指摘してきました。スマホのデジタルズームは明らかに質が劣り、この1インチセンサー搭載の光学5倍ズームはとても自然できれいな写真を写せます。今後はどのメーカーであれ、センサーサイズと絞りの調整機能、そしてズーム性能の良さがスマホに差をつけるカギとなるとみております。さらにこのG5 X Mark II、ポップアップ式のファインダーが付いています。これは構えて写真を撮るという、極めて基本的なスタイルを知るうえで、スマホ派の方には是非覚えて頂きたい撮り方です。写真を撮る楽しみはここから始まると言っても過言ではありませんので。


4 NIKON Coolpix A1000

  

 こちらは広角24mm相当から超望遠840mm相当をカバーする光学35倍ズームを搭載するコンパクト・デジタルカメラです。豆粒サイズのセンサーですが、望遠端の描写は細部までしっかりと捉えてることができます。動物園や屋外スポーツ、イベントなどで遠くのものをぐっと引き寄せる醍醐味を味わえます。うれしいことにRAW撮影にも対応しているので、パソコン内で写真を編集が可能です。常用感度はISO 100~6400で、輝度差の大きな撮影シーンでも白とびや黒つぶれを抑え、目で見た明るさに近い階調豊かな撮影を可能にするアクティブD-ライティングを搭載しています。またレンズシフト方式手ブレ補正(VR)機能により、手ブレ補正効果3.0段を実現。夜景や薄暗い室内の撮影でも手ブレを抑えてシャープな画像を得ることができ、さらに電子ビューファインダーもついた機能てんこもりの一品です。なんでも器用に撮りたい方に是非お勧めしたいです。


5 Panasonic Lumix LX9

 

 パナソニックからは開放F1.4の大口径レンズを搭載したLumix LX9がおススメです。あこがれのライカ・レンズ搭載で、手軽にボケ味豊かなポートレートなどが撮れるのが魅力です。チルト式のモニターで自撮りもできますし、パナソニック独自のクリエイティブ・コントロールで多彩な効果の写真をパソコン要らずで作れます。パナソニックお得意の4Kフォトで秒間30コマの高画質な連続写真が簡単に撮れるもの便利。焦点を自在に選択できるフォーカスセレクトというコンデジには珍しい機能もあります。画像はとてもシャープで手振れも気にせず、ほとんどのシーンで三脚なしでも撮れるのがうれしいのです。残念ながらアメリカでは売り切れまじかで、ほとんど中古市場でしか見られなくなりました。


前半のまとめ

 コンパクトカメラを始めるならば、以上のカメラが扱いやすく、手堅い撮影ができるでしょう。いずれもオート設定で撮れば、失敗写真も少なくて済みます。さらにもう少し凝ったことがしたいのであれば、一眼上級機にないような遊び心のある初心者アシストも楽しめるので、これらのカメラは当分、使っていて飽きることはないでしょう。次回は本格志向の初心者向きデジタル・ミラーレスをご紹介いたします。お楽しみに。

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