2021年4月18日日曜日

おススメの洋書:児童書編1

チルドレンズ・ブックの世界



英語の勉強を兼ねて英語の文章に親しむ習慣

カンタンな英会話はできても、そこから先に進むには、英文読解が必須です。私の経験から言って、アメリカに住む日本人は、そこそこ会話のできる人は多いのですが、いざ英文となると、学校の課題でしか読まないとか、仕事で必要な書類だけ(必要に応じて)読んでいる。という方が圧倒的に多いようです。

英語の新聞なんて縁もない、ましてやアメリカの書店にはめったに行かない、という人が普通、アメリカの図書館に通う日本人なんてほんの一握りです。私も御多分に漏れず、ずっと洋書は苦手意識の塊でした。

しかし数年前から、英語の壁を超えるべく、意識して洋書を読むようにしてきました。

一つには、自分の子供たちとのコミュニケーションのなかで、自分の読書不足を痛感させられたからです。うちの子供は幼いころから家内の読み聞かせの習慣で、今でもそれぞれ自分の好きな分野の本を多く読んでいます。食卓の話題でも、家内と子供たちは共通の読書体験やお勧めの本の感想を語り合ったりと、とても和気あいあいとするのですが、自分だけ話題に入れず、置いてけぼりの悲しい思いをしてきました。

数年前、これはいかんと思い、子供部屋んjある本を拾い漁っているうちに、これは無理、いやこれなら読める、という風に少しずつ、英文にチャレンジしていくようになりました。

さらにもっと自分が興味を持てる内容はないかと、アマゾンや文学に関するウェブサイトなどを巡回するようになりました。ミステリーやサイファイが好きなのでヤングアダルト・カテゴリーの本も読むのですが、読むのが遅いので忙しい昨今今はもう少し低年齢層向けの、イラストの入った肩の凝らないエンタメ系のチルドレンブックが好きでハマっています。



欧米におけるいわゆるチルドレンズブックというジャンルは、とても幅広く大量に存在します。こういったジャンル本、日本では絵本の次のステップ、ぐらいの中途半端な立ち位置ですが、欧米では大人も楽しめる豊かな文学世界として確固たる地位を占めています。ファンタジーから冒険物、家族をテーマにした明るい読み物から、戦争や人権を扱ったシリアスなものまで実に多彩な広がりを見せています。読解の難易度も低学年用から高校生レベルまで数多く揃っているので、自分に合う本はきっと見つかると思いますよ。  

そういうわけで、私はことあるごとに日本にいる知人や親せきに英語上達には洋書、なかんずく児童書がきわめて有効ですよ、と力説してきたのです。

今回もそういった思いで、英語力を高めつつ読む楽しみにあふれる一冊の児童向け洋書をご紹介します。今回はカラフルなイラストも楽しい読み物です。タイトルは、


IF YOU COME TO EARTH by Sophie Blackall (Chronicle, $18.99.)



明るいベージュ色の肌に茶色の髪、ニョロニョロとした赤い帽子をかぶった幼い子供が、なにやら招待状らしきものを書いてます。

「親愛なる宇宙からの訪問者さん。もし地球に来たら、あなたが知っておくべきことがあります」。この物語は子供の部屋から始まり、宇宙へと飛び出し、地球へと戻り、この惑星に住む人々がどこで、どのように暮らし、何をしているのか-を紹介しています。

その過程で、宇宙を訪れた人々(そして読者)は、家族、仕事、衣服、交通手段、動物、さらにはアメリカ式手話や点字のアルファベットについても学びます。また、多様な人々が個性的かつ丁寧に描かれており、表現力とビジュアルが強調されています。

図書館のシーンでは、ナレーターが「お互いに助け合えば、もっといいことがある」と言いますが、これはその前の見開きページで描かれていた戦争の描写に対する真摯なメッセージです。作者のBlackallは、目を引く見開きページと余白のバランスを取りながら、例えば小さな鳥が何十羽も集まってできた巨大な鳥のように、ひとつの力強いイメージに焦点を当てています。

モチーフとなるリボンのイラストがアクセントとして利いており、青い川のように曲がりくねっていたり、地球外生命体の絵が描かれた画用紙が巻かれていたりと、随所に登場します。豊かなイラストの数々は、小さなことから大きなことまで、何度も見たくなるような内容です。

 二度のコルデコット賞に輝く作者のBlackall(Hello Lighthouse)は、世界中の子どもたちとの出会いをきっかけに、「私たちの心を一つにする本」というビジョンを描いたと著者ノートに記しています。

(*コルデコット賞とは児童図書館協会(ALSC)が、アメリカでその年に出版された最も優れた子ども向け絵本に毎年授与している賞で、本の表紙に金色のステッカーが貼られることで有名です)

この本は、絶妙な人間の経験をダイジェストに描いたカタログと言えます。妖精のような赤い帽子をかぶり、白い肌と黒い髪をした子供が、「宇宙からの訪問者」と語りかけながら、物語を構成しています。

壮大な見開きで太陽系を旅し、地表に降りてきて、一転、今度はキルティングの風景を紹介したりします。体や老い、家や旅、食べたり飲んだり、人間関係など、地球側の存在について、実に様々な視点で地球に生きる人や生き物、それらと関わる環境などの描写が続きます。

倒れている男性にティッシュを差し出す図書館員、会話を楽しむ食卓の仲間など、様々な体型、民族、能力を持つ人間たちがお互いを思いやる姿。世界中を旅したという作者ブラッコールにとっても、アートワークは過去最大規模のものでしょう。

鳥、海の生き物、どんぐりなど、自然界の総合百科事典的な絵が、細部まで丁寧に、鮮やかな色で描かれています。宇宙からの訪問者に向けての本なのに、地球に棲む私たちの方がつい引き寄せられるような魅惑に溢れています。

この本は、見知らぬ人、訪問者、古い友人、新しい友人など、だれとでも話題を共有することができる本です。英語はほんのちょっとしかなく、ほとんど絵本です。なので英語初級者にはちょうどいい入門本となるはずです。



コルデコット賞を2度受賞しているソフィー・ブラッコールの『If You Come to Earth』は、彼女がユニセフやセーブ・ザ・チルドレンの支援のために世界中を旅して出会った何千人もの子どもたちからインスピレーションを受けて作られたそうです。ベッドルームから世界を回り、再び戻ってきたクイン君は、この美しい地球のために団結して立ち上がろうという呼びかけを読者に伝えています。

お互いを思いやり、似ているところも違うところも含めて、お互いを大切にすること。私たちは、老若男女を問わず、包括性や多様性、喜びや痛みなど、すべての人々について学びます。この本は、すべての生物と私たちがこの世界に住む方法をまとめたものであり、同時に私たちよりも大きなものを感じさせてくれます。If You Come to Earth』を読んで交わされる会話は、無限の可能性を秘めていると思います。

手作りの活字、Blackallによるハンドレタリング、墨と水彩で描かれたアートワーク、表紙の暗い空に散りばめられた金色のエンボス加工の斑点など、この本はとても美しく作られています。緻密なディテールが、好奇心旺盛な若者にも受け入れられるように、思慮深い文章を生き生きと表現しています。画家としての作者ブラッコールのバラ色の頬で温められた美しく多様な肌色は、グローバルな人間性を見事に表現しています。見どころがたくさんあり、すべてが完璧にデザインされています。

If You Come to Earth』はアートとしても一級品であり、なおかつとても心温まる作品であり、ものすごくお勧めの一冊なのです。ぜひ機会があれば手に取って読んでいただきたいと存じます。





最後に、この本を読んだ欧米の読者たちの感想を載せておきます。


「この本は、私たちがどのように似ていて、世界中でどのように違うのかを描いた美しい本です。私は、Blackallが描いたさまざまなキャラクターを見るために、イラストをじっくりと眺めていました。家族、仕事、シェルター、趣味など、世界の比較に関する知識を更新したいと思っているなら、この本は有効です。」

「Sophie Blackallがまたやってくれました。彼女はコルデコット賞のシールを自分で持ち歩くべきだ。If you Come to Earth』は並外れた作品で、2021年の多くの賞に値する作品です。これまでに作られた中で最も壮大で美しい絵本の一つです。誰もが持っているべき本です。本当に素晴らしい作品です。」


「子供たちに地球と生命を説明する素晴らしい方法です。科学や宇宙との関連性も高い。

こんなに美しいイラストの絵本は見たことがありません。何がどうなっているのかはわからないが、何か不思議な感じがするのだ。」


「この本が発売されると知ってから、ずっと読みたいと思っていましたが、嬉しいことに期待を裏切られませんでした。子供が宇宙からの訪問者に手紙を書き、人々の住む場所、顔の表情、見える天気、移動方法、大人の仕事、食べるもの、ここに住む生き物、音楽、自然の一部であるもの、人が作ったものなど、私たちの地球について知っておくべきことをすべて伝えます。」


「傑作です。寛大で、温かく人間味があり、思慮深く、灯台がたくさん出てきて(彼女は灯台が好きなのです!)、オリバー・ジェファーズの『Here We Are』やルース・ベイダー・ギンズバーグにとても優雅に敬意を表していて、図書館の中での感動の瞬間に唖然としたり、物語が刺繍されたイラストがあったり、心のこもった一冊です。私は星をつけるのをケチっているのですが、ここではそのうちの5つを今年の絵本として紹介します。今年のブックオブザイヤー?」


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