2021年4月3日土曜日

初めての自然風景撮影

自然風景を切り取る



春になるとカメラ片手に野外に飛び出して、ついつい自然の息吹を撮りたくなります。冬が長いほど、そのあとに訪れる春の兆しが待ち遠しく、野山を散策するのがより楽しくなりますよね。

そんなとき、風景写真を撮るためのちょっとしたアイデアを頭の片隅に入れておくと便利です。

私がフィルムカメラで写真を始めたばかりの頃は、ルールも常識も無視してただオートでピントだけを合わせることのみに集中していました。今振り返るとその頃の写真は、アイデアも工夫もない、のっぺりした記録画像に過ぎないのですが、その何枚かは(数少ないですが)なぜかその下手さ加減を差っ引いても、写真を撮る楽しさだけは伝わってくるのです。それはおそらく、写真初心者のピュアな好奇心が撮る対象をいいタイミングで切り取れたからだと思うのです。

なので今の私はその当時の初心に帰って、もっと簡単に心の赴くままにシャッターを切るよう心掛けています。一時期、芸術的な「作品」を撮ろうと躍起になって高価な一眼レフに手を出した時もありましたが、長続きませんでした。撮影業見習い時代の自分にはどうにも手に負えませんでした。(中古で買ったNIKON F100は当時の名機でした)

先輩と一緒に植物園に撮影練習に出かけても、圧倒的な撮影技術の差で、私は似て非なる写真しか撮れないのです。そのときつくづく、写真は機材じゃない、撮影の腕とセンスの問題だと思い知らされました。

映像プロダクションの仕事場で教えられた基礎の基礎は大事にしつつ、しばらくの間は安いカメラで暗中模索の日々が続きました。そんな私でも、場数をこなしていくうちに、自分のスタイルみたいなものができてきます。そこからようやく、改めてカメラ選びが始まりました。
もちろん優れたカメラがあるに越したことはないのですが、それより「相性」が大切です。スペックも参考にはしますが、それよりなにより自分に見合った機材こそ最強の武器です。
手に取ってしっくりくるのか。ファインダーを覗いてワクワクするか。操作系が自分の手に馴染むか・・・。そんなポイントを一個一個チェックしてみてください。必ずあなたの良き相棒となるカメラは見つかるはずです。そこブランドやセンサーサイズの差はありません。

はじめてカメラを趣味とかでやろうという方は、極論、フィーリングで選んでもそんな劇的に後悔することはないでしょう。イマドキのデジタル一眼レフカメラやミラーレスカメラは、基本的にシロウトでも素晴らしい写真を撮ることができます。初心者の撮影に必要な条件はすべて満たしていますから、安心して購入してください。 

あなたのお気に入りのカメラで、以下の事柄を実践すれば、風景写真はきっと上手く撮れるはずです。 ただ、そこに到達するには、ちょっとだけ時間がかかります。なのでなるべくたくさん撮影枚数をこなしてください。 

今回の記事では、言ってみればごく当たり前のことを書きます。写真やる人ならなにを今さらって感じかもしれません。表面的にはとても基本的なことです。 知ってらっしゃることは飛ばして、役立ちそうだなと思ったことだけ実践してみてくださいね。




カメラの設定

この記事の主旨は、「風景写真を撮るときのカメラの設定」を紹介することではありません。 


しかし一応前提を書いておかねば誤解を招くので、ここではいくつかのポイントをご紹介します。


露出モード

風景写真の撮影では、ほとんどの場合、絞り優先(多くのカメラではAまたはAv)で問題ありません。絞りを設定すれば、あとはカメラが適正な露出を計算してくれます。 しかし、風景写真では、さまざまな設定を試すことができます。 せっかくですから、マニュアルモードで撮影してみましょう。 自分ですべての設定を変えて露出を調整してみると、どんな写真が撮れるのかがわかります。 慣れれば自然にできるようになります。


シャッタースピード

一般的に、カメラを手で持って撮影する場合、シャッタースピードは焦点距離の逆数以上であることが望ましいとされています。 例えば、焦点距離が30mmの場合、シャッタースピードは1/30秒以上でなければなりません。 もちろん、すべてのルールには例外があります。 レンズやカメラに手ブレ補正機能が付いていれば、もう少し遅くても大丈夫な場合もあります。 また、動きを表現するために遅いシャッタースピードが必要な場合もあります。 詳しくは後述します。


絞り

風景写真では、画像内のすべてにピントを合わせるために、被写界深度を大きくとりたいと思うことが多いでしょう。 そのためには、絞りをF13、F16、あるいはF22などの大きな数値に設定します。 ただし、レンズの口径が小さい場合は、回折現象が問題になることがあるので注意してください。


ISO

ISOを最小に設定すると、一般的に「クリーン」な画像が得られます。 つまり、ノイズや粒状感の少ない画像になります。 カメラの最低ISO設定は、100または200であることがほとんどです。 手持ち撮影でシャッタースピードを上げる必要がある場合にのみ、ISOを上げてください。


画像フォーマット

RAWで撮影しましょう。 コンピュータで画像を編集するのが好きなら、風景写真ではRAWで撮らない理由はありません。 RAW画像ファイルは、JPEGよりも多くのデータが保存されているので、シャドー部やハイライト部のディテールをより鮮明に表現することができます。 メモリカードやハードディスクの容量は増えますが、それだけの価値があります。

カメラの設定には他にもいろいろありますが、ここでは詳しく説明しません。 あしからず。



光を探す



風景写真を撮るには、どこに行くかということだけでなく、いつ行くかということも重要です。 いやそれ以上に重要なことがあります。 それは「光」です。光の質が写真の出来を左右しますから、光が一番きれいなときに撮影すべきです。 シロウトがよく陥る、真昼の厳しい日差しはNGです。 太陽が真上にあったり、ほぼ真上にあったりすると、明るい部分と影の部分の切り替えが非常に難しくなります。 直射日光が当たると、コントラストが非常に高くなり、奥行きや質感のないシーンになってしまいます。

風景写真に最適な光は、一般的に朝と夕方にあります。 太陽が昇ってから最初の1時間の光と、太陽が沈む前の最後の1時間の光を合わせたゴールデンタイムの光が最適です。 しかし、朝の遅い時間に撮影したり、夕方の早い時間から撮影したりしても、良い結果を得ることは可能です。 これらの時間帯では、太陽の角度が低いために光が拡散し、奥行きや質感が増して、より魅力的で興味深い画像になります。



余分なものを省く

画像に何を入れるかを決めるよりも重要なのは、何を入れないかを決めることでしょう。 迷ったときは、シンプルな方がいいでしょう。 風景写真を見る人は、何が主役なのかを直感的に理解しているはずです。 フレーム内の他の要素は、見る人の目を導いたり、主役に深みや奥行きを与えて引き立てたりするためにあるべきものです。 もし、画像に興味をそそらないものがあれば、構図を少し変えて、それらを取り除くか、フレームの中で最小限にすることを考えてみてください。 そのためには、ズームアップしたり、別の角度から撮影したりする必要があります。 例えば、中景に面白みがない場合は、カメラをローアングルにして、前景をより強調し、中景を少し隠すようにします。

また、シャッターを切る前に、フレームの端に不要なものがないかどうかを確認することも忘れてはいけません。 木の枝が横や上にはみ出していると、主役の存在感が薄れてしまいます。



構図は写真の要

最高の光の中で撮影しても、構図がしっかりしていなければ、画像はうまくいかないものです。 逆に、構図が完璧であっても、光の状態が良くなければ、画像はそれほど強くはなりません。 この二つの要素は両輪で一体です。良い構図と良い光があれば、素晴らしい画像を生み出すことができます。

写真を始めたばかりの人でも、「構図のルール」のようなものは聞いたことがあるでしょう。 「三分の一の法則」「オッズの法則」「導線」などは、知っておいて損はありませんし、実践しておいて損はありません。 ここでは、これらのルールがなぜ重要なのか、そして、よりインパクトのある画像を作成するためにどのように利用できるのかをご紹介します。 良い構図(そして良い光)は、写真を構成する主要な要素の一つであり、あなたの画像を凡庸なスナップショットとは一線を画したものにします。

構図の "ルール "の面白さは、それを破ることができることです。 しかし、重要なのは、ルールを知った上で敢えて破ることを理解し、その意図を具現化することです。 時には批判に対しても「ここはこういう狙いでこう撮った」と言えるほどの大胆さがいいものを生みます。



前ボケは主題を活かすスグレ技




風景写真を撮るときには、強い前景要素がとても重要です。 前ボケは、画像の導入部や第一印象と考えてください。 第一印象を良くするチャンスは一度しかないと言われています。 それが前景の役割です。 強力な前景要素は、見る者を惹きつけ、画像の奥深くにある主役へと視線を導きます。 奥行きを感じさせ、あたかも自分がその場に立っているかのような感覚を与えることができます。

強い前景要素は、小さな木や岩、茂みやその他の植物など、何でも構いません。 一般的には、画像の下3分の1の位置に配置され、カメラの近くにあります。 カメラを低くして前景にできるだけ近づけることで、ダイナミックな構図を作ることができます。



すべてにピントを合わせる

風景写真では、前景以外のすべてのものにピントを合わせたいものです。 被写界深度(どれだけピントを合わせるか)は、カメラの絞りの設定で調整します。 F13やF16といった大きめの数値に設定して、画面の3分の1程度にピントを合わせればよいでしょう。 お使いのカメラには、ファインダーや背面液晶にグリッド線が表示されているものが多いと思います。 下から3番目のグリッドラインに近いところにピントを合わせれば、全体にピントが合う可能性が高いです。

ただし、被写体とカメラの距離が極端に近い場合は例外です。 その場合は、1枚の画像の中で、前景の被写体とそれ以外のものにピントを合わせることができないことがあります。 前景にピントを合わせても、背景が少し軟らかくなってしまう場合は、2〜3枚の画像をそれぞれ別の部分にピントを合わせて撮影し、Photoshopで重ね合わせてみるとよいでしょう。 しかし、まずは、絞りを調整したり、フォーカスポイントを変えたりして、1枚の画像ですべてが納得のいくシャープさになるようにしてみてください。 



パースを変える



多くの初心者カメラマンは、カメラを目線の高さで構えたり、三脚を立てたりして撮影します。 被写体によっては、それでよい場合もありますが、視点を変えることで、写真の印象が大きく変わることがよくあります。 地面に近い位置から撮影して、イメージを変えてみてください。 前景の被写体を強調したり、中景の退屈さを解消したりすることができます。 三脚や一脚を使用している場合は、高い位置から撮影してみましょう。 三脚にカメラを取り付け、10秒タイマーをスタートさせ、頭上にカメラを構えます。 



スケール感を出す




風景の撮影では、被写体や風景のスケール感がわかりにくい場合があります。 風景の大きさを感じさせるものをフレームの中に入れてみましょう。 それも、身近なもので、周囲との相対的な大きさを目で見てすぐに判断できるようなものがいいでしょう。 そのためには、シーンの中に人を配置することも効果的です。風景を撮るときはもちろん、何を撮るにしても、通常、人がフレームに入らないようにしますが、時として人の姿は、
写真をパースペクティブなものにし風景のスケール感を演出します。



三脚

風景写真では、三脚が必要になることがあります。 あまり三脚を使わない私でも、必要と判断すれば使えるよう用意はしています。いざという時のために、しっかりした三脚を一台備えていれば、長い目で見ていろんな用途に使えます。
とりわけ早朝や夕方の光量の少ない時間帯には、シャッタースピードを落としてISO感度を低く保つために三脚が必要になります。 川の流れや、夜の光跡を撮りたい場合も三脚は必須になるので、練習も兼ねて使い慣れておきましょう。
夜景撮影が好きな方は三脚は必須です。 いくら手ブレ防止がすごいレンズやカメラでも限界はありますから。



まとめ
冬から春にかけて自然の風景は劇的に変わります。緑の樹々や色とりどりの花々、蝶や鳥など、どうしても撮りたいシーンが増えてしまいます。衝動の赴くままに、シャッターを切りまくりたいところですが、ときに立ち止まって、一枚一枚丁寧に撮ることも忘れないでください。
不思議なもので、写真は時に撮る側の心の動きを読むかのように写ります。焦って撮ったものはなんか落ち着きがなく構図がずれてたりします。心のゆとりがあって、被写体に愛情を感じり、心ときめいたときの写真は、たとえちょっとボケていても味わいのある作品になったりします。だからカメラはやめられないんです。どうか春の陽気を満喫しながら、すてきな風景を撮りに行ってください。



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