2020年10月17日土曜日

日米比較: 2020年ベスト・ビデオゲーム

 日米微妙に食い違うゲームトレンド

 PlayStationとXboxが時を同じくして、年末に新しいゲーム機を出すということで、大いに期待が盛り上がるゲーム業界。ゲーム・タイトルのほうも、ちょっと早いのですが、年末に向けてそろそろ一年を総括するコラムが発表されだしています。今日はその中で、ビデオゲーム・ソフトについて、日本とアメリカで興味深い違いが垣間見れたのでちょっと考察してみました。

 まずは日本の今年のビデオゲームの収穫に挙げられるベスト15タイトルをWEBサイト「ゲーム売り上げ定点観測」より転載させていただきます。





1 あつまれ どうぶつの森

2 リングフィットアドベンチャー

3 ファイナルファンタジーVII リメイク

4 ポケットモンスター ソード・シールド

5 マリオカート8 デラックス

6 Ghost of Tsushima

7 世界のアソビ大全51

8 大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL

9 Minecraft

10 スプラトゥーン2

11 スーパーマリオ 3Dコレクション

12 スーパー マリオパーティ

13 脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング

14 ペーパーマリオ オリガミキング

15 ポケモン不思議のダンジョン 救助隊DX



 

 今年のゲーム界の目玉は誰が何と言おうと1位の「あつ森」に尽きるでしょう。10月の現時点で579万本という驚異的な売り上げで、2位以下を圧倒しています。殺伐としたゲームが多い中で、大人もこどももワクワク一緒に夢中になり、世代を超えて話題を共有できる楽しさが話題になりました。まさに国民的ゲームといっていい本年度随一の出来栄えでした。2位のリングフィットアドベンチャーもゲームとフィットネスを見事に融和させた新機軸が受けて堂々のランク入り。こちらも納得の100万本の大台越え達成です。

 それ以外はあまり目新しいタイトルのランク入りはなく、前年に続いて手堅い売れ筋が実績を上積みしていった印象です。

 ちょっと変わり種でスマッシュヒットしたのが、いちおうアメリカ産のゲームですが、堂々日本の侍活劇をテーマにした「Ghost of Tsushima」です。これが純然たるアメリカのゲーム製作会社Sucker Punch Productionsによるものだとは驚きです。つくりも仕様もグラフィックスもまるで日本で制作したような高度な仕上がりが話題になりました。むろんこのプロダクションの親会社がPlayStationのSONYですから、大々的なバックアップがあったことは想像に難くないのですが、企画立案はアメリカのスタッフだそうです。

 どうやって元寇などという日本人しか知らない題材を取り上げたんでしょうかね。ゲームのワンシーンを見た限りでは黒沢映画の影響がもろに出ており、彼らが「クロサワのようなカッコいいサムライ・ゲームを作ろうぜ」みたいなノリで制作したのではと想像しました。それにしても舞台設定といい、アイテムのデティールといい、サムライの刀の構え方といい、違和感がないのには驚きます。

 さて各論を述べだすとキリがないので、次に2020年、アメリカでのビデオゲームの総括も並べてみました。こちらはアメリカの人気雑誌「ESQUIRE」がまとめた2020年のベスト・ビデオゲーム15選からです。順不同で挙げられた15タイトルは、




The Last of Us Part II

Final Fantasy VII Remake

Animal Crossing: New Horizons

Ghost of Tsushima

Streets of Rage 4

Moving Out

Murder By Numbers

Doom Eternal

Dreams

Ori and the Will of Wisps

Half Life: Alyx

Journey to the Savage Planet

Paper Mario: The Origami King

Clubhouse Games: 51 Worldwide Classics

Carrion






 このリストは一雑誌が取り上げた、2020年話題のゲームということで、上記の日本売り上げランキングとは単純に比較できません、が、挙げられたゲームは他のゲーム評価サイトなどでもメジャーに取り上げられたものばかりで、かなり的確な2020年を代表するアメリカのゲーム・リストだと言えます。
 日本とダブっているのは「あつまれ どうぶつの森」「ファイナルファンタジーVII リメイク」「Ghost of Tsushima」「ペーパーマリオ オリガミキング」「世界のアソビ大全51」の
5タイトル。これを多いとみるか、少ないとみるかです。
 昔は日本産のオリジナル・ゲームが先行発売して、あとで海外移植版が追いかけてくるような流れでしたが、アメリカはアメリカで独自のゲーム感が育ち始め、ここ10年で、その文化的背景などから、評価されるゲームも日米で差異が生じてきました。
 どちらかというとアメリカはずっと、こってり系のこれでもか怒涛展開だぜ、的な迫真性を追求する作品作りがもてはやされているようです。大ヒット作「The Last of Us」の続編も前作以上に人間の底深い愛憎劇を掘り下げていて、まるでHBOやNETFILXのドラマを見ているような臨場感があります。また相変わらずシューティング系のゲーマーが夢中になる「Doom Eternal」「Half Life: Alyx」なども必ずランク入りするところはアメリカらしいといえます。
 アメリカらしさと言えば、「Ori and the Will of Wisps(オリとくらやみの森の続編)」のような独特の世界観を有した、美しいグラフィックが絶賛されるゲームも、毎年のように発表されています。さすがアメリカと思うのは、多民族国家の強みで、ゲームにしても、西洋歴史を背負ったものから、中東風味、アジアンテイスト、ラテン風と様々なバックグラウンドを自在に使いこなせるポテンシャルがあります。
 加えて根強いスーパーリアルなスポーツ系のゲームも一大ジャンルを形成してゆるぎない人気を博しています。今後もアメリカのゲームはより莫大な資産、豊富な人材を駆使して、どんどん多様化していく予感はあります。
 こういったゲームに対する日米の志向性の違いも、今後間違いなく拡大するでしょう。もちろんマリオシリーズやファイナル・ファンタジーなど日本の誇れる文化にまで定着したゲームは今後も世界的に人気を維持するでしょうが、アメリカ勢の巻き返しにも期待しています。
 このようにゲーム一つをとっても、日米文化には興味深いことがたくさんあります。私的には、ゲームを通して日米の文化を比較する、本格的な評論を待ち望んでいるのですが、まだ雑感的なものしか目にしていません。ここを掘り下げると、なかなか面白い文明論が浮かび上がるのではないかと密かに期待する日々なのですが。
 今後機会がありましたら、ゲーム・クリエーターを志す愚息と一緒にビデオゲームの今後を模索するような雑文で、問題提起していければと思っています。日米ともに切磋琢磨し刺激し合って、よりよいゲーム文化を形成できればいいですね。
 


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