2020年10月22日木曜日

大人気ピックアップ・トラック

 アメリカならではのトラック文化

王者の貫禄。一番人気のフォードF-150


 アメリカに来た方なら、大きなピックアップ・トラックがやたらと町や高速道路にあふれていることに気が付くでしょう。それもそのはず、アメリカで車の売り上げ上位はセダンでもなく、SUVでもなく、ましてや廉価な小型車でもありません。一番人気は常にピックアップ・トラックなのです。

 そうアメリカで一番売れている車はここ10年余り、フォードのピックアップトラックF-150だってご存じですか。これはもう絶対王者であり、いかに日本車が売れているアメリカでも、このF-150には及びません。さらにこのトラック人気が牽引力となって以来、GMやシボレーなども今まで以上にこのクラスのピックアップトラックに力を入れています。それらはライバル車として常に売り上げ上位を独占しています。近年この傾向はますます顕著になり、不動の地位を気づきつつあるといえます。

GMCの人気者、SIERRA


伝統を引き継ぎ進化するDODGE RAM


 なぜアメリカではこんなにトラックが人気なのでしょうか。いや昔から米国ではピックアップトラックは一定のファン層がありました。商業目的だけではなく、そのスタイルとパワー、さらにダイナミック感が魅力なのです。日本人から見ればただのおっさん臭いトラックが、アメリカの若者にはマッチョなプロレスラーのようなカッコよさに映ったのです。

 その支持を受けるようにピックアップトラックは年々洗練されて行き、アメリカ車独自の進化を遂げました。近年のフォードFシリーズも様々なグレードが追加され、外装のゴージャスさはもとより、インテリアも座ってみると、とてもトラックの中とは思えないほどの気品にあふれています。なによりサイズ感が素晴らしく、後部座席もアメリカのでっかい大人が三人ゆったりと座れる空間を確保しています。運転座席から見るフロント部ももはや高級SUV車に伍するほどの充実ぶり。こんな車をを荷台に何か載せて行き来するだけではもったいないと思わせるような素晴らしさです。

 そういうわけで、アメリカ人の車購入の選択肢としてはピックアップトラックはまったく理にかなったものです。日常のちょっとした買い物や、子供の送り迎えでもごく普通の主婦が、あの巨大な車体を軽々と操って行き交う、それがアメリカの日常風景なのです。

 もちろん大きさに見合うように、エンジンや足周りも乗用車とはけた違いのパワフルなものになっています。2020年のF-150にはなんと6種類ものエンジンバリエーションが揃っています。3.3リッターのエンジン用には6速オートマチック、V8エンジン用には10速オートマが用意されています。日本ではこのクラスの小型トラックは鈍重のイメージがありますが、いやいやF-150クラスのピックアップトラックはいずれもパワフルで機動性に富み、高速道路ではブンブン加速して乗用車を追い抜く姿が当たり前です。

近年ぐっと洗練されたシボレーのSILVELADO


高級SUV並みのインテリア

 

ゆったりくつろげる五人乗り


 このピックアップトラック人気の秘密はもう一つ、仕様の割にはとても安い値段設定なのです。アメリカでは商用車販売は税金が安めに設定されており、かつまた保険料もスポーツカーなどより安いのが普通となっています。フォードで言えば、人気の中堅SUVエクスプローラーが標準価格$32,765であるのに対し、より大きなエンジン、車体を持つF-150は$28,745と40万円近くも安いのです。昔は燃費の悪さが足を引っ張っていましたが、いまはそれもかなり改善され、もともとガソリン代の安いアメリカではそれほどネックにはならないのですね。それでいてゆったり5人乗りですから、家族向けとしても、とても魅力的な車なわけです。

 このように日本とアメリカでは車に対する人気、評価もぜんぜん違います。広大な大地、広い道路事情など環境要因も小さくありません。低燃費、コンパクトさがウリだった日本車も徐々に大型化されています。今後のアメリカでの車事情がどうなっていくのか、注意して見守りたいと思います。

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