2020年10月9日金曜日

秋を探しに

 一年で最も美しい季節


 ここ数週間はこの北米大陸で自然が最も美しく色づく季節です。晴れた日は外に飛び出して、新鮮な空気を存分に吸いたくなります。ただでさえ部屋にこもりがちだった春夏なので、せめて寒さ厳しくなる前のこの数週間、たっぷり森林浴をして大自然の美しさを目に焼き付けておきたいものです。

 そういうわけで、私は先週あたりからやたら意識してなるべく郊外に出るようにし始めました。夏場、部屋にこもりきりだったことへの反動ですね。ささやかでもいいから秋の兆しを感じたい、日増しにそんな欲求が強くなってきたのです。

 早朝は、きりっと引き締まった寒気も感じられえる今日この頃、ふらりと川べりに向かうと、川から水蒸気が立ち上る、ちょっと神秘的な風景に出会いました。ヨットがまるで雲の上を漂っているように見えます。


 ハドソン川は朝夕の温度差で、ふわっとした雲のような水蒸気がゆっくり立ちのぼり、時に幻想的な風景が広がります。この日は、瞬く間に空気中の水分が高く舞い上がり、雲と区別付かないくらい高いところに上昇する霧の塊が見て取れました。


 ストームキングと呼ばれる岩山が朝日を浴びて、対岸の山の影とのコントラストを作っていました。巨大な亀の甲羅を想起させる雄大な眺めはこの界隈でもひときわ目立つ場所です。心地よい秋風に吹かれて眺める風景は、心身の疲れも癒してくれます。

 そこから北へわずか30分ほど北上すると、ハドソン川沿いの山はすでに赤や黄、オレンジへと色を変え始めていました。ポキプシー橋の背景としては最も絵になる場所です。ここは私もお気に入りの場所で、コーヒーを飲みながら景色を眺めるとまた格別です。


 さらにハドソン川添いを北へ向かうと、いくつかのヨットハーバーを通過するのですが、その近くでとっても優雅な野鳥、オオタカに出会いました。毛並みがとてもよくて堂々とした雄のようです。たまに川の上で弧を描く姿を見ますが、このようにフェンスの上に立つ姿は初めてです。しかもなにか獲物でも狙っているのか、その場所をなかなか離れませんでした。翼を広げると50センチほどになる中型鳥ですが、狩りをするときは猛スピードで急降下し、ネズミなどを捕獲する名ハンターです。

 帰りがけにもう一つ、川の上空を飛ぶ巨大な飛行体を発見しました。アメリカ空軍の輸送機です。


 近くに「スチュアート国際空港」というのがあって、昔は軍専用の航空基地だったところから発着しているものでしょう。胴体が太く、かなりの物資を抱えて飛べる輸送機のようです。

 帰りはちょっと寄り道して牧場のある地域をドライブしました。あまりに空気がうまいので、車を駐車し舗装されていない農道をちょっと歩いてみました。



 農家のそばを歩いていて、目に飛び込んできたのが、サクランボの赤い実です。秋の収穫を象徴するようにつやつやと輝くおいしそうな実は今が食べごろ。ニューヨーク州はリンゴと並んでサクランボの生産も盛んで、この時期は多くの農場に人々が訪れます。週末は日本の朝市と同じようにファーマーズ・マーケットがどこの町でも賑わい、秋の収穫は飛ぶように売れるのです。

 小さな森の入り口には、かわいい森の番人のようなリスが。木陰をせわしなく駆け巡っていおり、そのうちの一匹が木登りをしてこちらを眺めていました。目が合った瞬間を逃さず、パシャリと一枚。あんた誰? みたいな顔でじっとこちらを眺めていました。


 のんびりしていると秋の一日はあっという間に日が暮れます。所要を済ませて帰途につくのがなんだか惜しくて、もういちど川沿いの道まで戻ってみると、ほどなくオレンジ色に輝く夕日を眺めることができました。この日はなかなかの夕焼けで、川面をゆっくり走るヨットがとてもまったりした風情を醸し出しておりました。


 鮮やかな紅葉をみるにはまだちょっと早かったのですが、それでも秋の気配はそこかしこに漂っていて、本当にいい季節を迎えたなあという実感を味わえました。また機会があったら、近所の野や山を散策したいと思います。

 最後は、帰宅して夕食をすましたときに見上げ、空に浮かんで眺めたお月さまです。

 中秋の名月。ちょっと上弦に黒い雲がかかって、なんだかドラマチックな月を見させていただきました。合掌。

 


 秋という季節はどこを切り取っても、それなりの味わいが出るものですね。みなさんもこの機会に、身近な秋探しの旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿