2020年10月25日日曜日

小さな生き物たち

かわいい冒険者たち


 NETFLIXで今めちゃめちゃハマっている番組があります。

TINY CREATURES」というのですが、アメリカでもあまり話題にならなかったようです。しかしこれを埋もれさせるのは勿体ない! 私はそう思いました。NETFLIXは常に大作、話題作がひしめいていて、ともするとささやかな、しかしよく作られた名作が埋もれてしまいがちです。そういったものに限ってまた気が付くとリストからなくなっていたりするので、今のうちにご紹介しなければと思いました。

 今回ご紹介するのは、ペットを飼っている方、動物好きの人にはたまんない愛しさにあふれる番組「TINY CREATURES」です。もう全力で「激おススメ」としてご紹介します。



 オムニバス形式の短編ドキュメンタリーで、どの話から観てもいいのですが、まず第一話が必ずアナタの胸に刺さります。私は予備知識もなく、ただの動物ドキュメンタリーだと思って見始めたのですが、予想外の展開に思わず笑ってしまいました。

 主人公はARIZONAに棲むカンガルーラット。体長は約7〜8cm、尾長8〜10cm。体の半分近くが頭で、しっぽが体長より長いのです。カンガルーのような長い後ろ足が一番の特徴で、自分の体長の10倍ほどのジャンプ力があるそうです。このちっちゃな生き物がアリゾナの砂漠地帯で数々の脅威にさらされながらも、けなげに生きていく生態がじつにドラマ仕立てで、リアルに描かれています。このような動物の生態を追ったセミドキュメンタリー仕立ての映画は昔からたくさんありました。日本ではかつて「子猫物語」が大ヒットしました。「TINY CREATURES」では、一貫して人のナレーションとバックグランド・ミュージックだけでドラマを盛り立てていきます。英語がわからなくても、ストーリーは一目瞭然。カンガルーラットに降りかかる災難が観る者の心をつかんで離しません。



 驚くのはそのカメラワークです。

 ガラガラヘビ、サソリ、サラマンダー、タランチュラ、鷹、さらには人間までがこの子の命を脅かします。圧巻はスコーピオンマウス対サソリの対決。カンガルーラットがサソリに襲われあわやというところで、劇的に月光を背にしたネズミが登場します。これがサソリの天敵スコーピオンマウスで、こいつが命を懸けてサソリとバトルするシーンがすごいのです。この戦いのすさまじさ、スローモーションによる戦闘描写はまさに圧巻の一語です。いったいどうやって撮影したのかと目を疑うような迫真の映像なのです。


 ここ以外でも、鷹が空から急降下してあわやカンガルーラットを鷲掴みか? というシーンも信じがたいカメラワークで描写されています。どうみてもCGなどではなく、本物の動物のビデオです。どのシーンもできすぎというか、あまりにも人間臭いドラマチックな演出なのが笑えてしまいます。でも本当に面白い。

 第二話の舞台はニューヨーク、マンハッタンに移り、大都会の摩天楼で暮らすハムスターの冒険になります。快適なマンションの一室から逃げ出したハムちゃんが都会の片隅で猫やネズミに追われる大災難の一日を追います。

 第三話はミネソタのゴルフ場の地中で暮らすアナホリフクロウと、毎回小さな可愛い生き物が主人公を務めます。などなど毎回主人公を変えてハラハラドキドキの展開となります。


 いずれも実際の動物の生態をベースにしながらも、ちょっとありえない事件の連続で観るものを引っ張っていきます。昭和の昔に「野生の王国」という素晴らしい動物ドキュメンタリーがあって毎週欠かさず観ていた頃を思い出しました。アメリカに来てからは「プラネット・アース」やナショナル・ジオグラフィックのシリーズを観まくりましたが、いずれもビデオカメラの描写の素晴らしさに感動したものです。

 いったいどうやってあんな動物たちの生態を描写できるのか、想像するだけで、カメラマンの仕事に感服します。その一方で、今回のTINY CREATURES」シリーズは動物愛護の観点から、やりすぎとの批判が出ることも想像に難くありません。でも私の観た感想では、動物に対する愛しさがにじみ出ているので、こういうものありかなと思いました。

 今回のTINY CREATURES」はシナリオありきで、それに実際の動物たちのリアクションを見事に組み合わせてできた新機軸としてもっと評価されてもいいと思います。ただ家族向けではありますが、小さいお子さんにはちょっとリアルすぎるので、小学生以上のご家庭ににお勧めです。もちろん大人一人でも、カップルでも十分楽しめます。日常からちょっと抜け出したいときは、こういう無垢な動物の健気さをみて、心洗われるのがいいのではないでしょうか。


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