2020年11月18日水曜日

米国ジャンクフードの人気者

駄菓子の王様トゥインキー


 アメリカの駄菓子を研究していると、嫌でも無視できない固有名詞に行き当たります。米国で市販される砂糖系のお菓子は数えきれないほどありますが、総合的に調べていくうえで、常に何かしら言及されたり、比較の対象になったりするお菓子、それが「トゥインキー」です。なぜこれほどこのお菓子がアメリカ人に親しまれているのか、興味本位で見ていくと、いろいろ面白いことがわかってきました。

「トゥインキーって何?」

 トゥインキーとは、アメリカで人気のあるクリーミーなフィリング(詰め物で、砂糖と甘味料とクリームを混ぜたもの)が入った金色のスポンジケーキのことです。それはダラスに拠点を置くインターステート・ベーカリー株式会社によって所有されている子会社「ホステス社」によってディストリビュートされています。


 よくある都市伝説では、トゥインキーの賞味期限は永遠である、または製造に使用される化学物質のために10年、50年、または100年の長時間持続することができると主張しています。この都市伝説はもちろんデタラメです。トゥインキーは乳製品を使わず防腐剤盛りだくさんのため、他のベーカリーものよりもゆっくり腐っていくのは事実です。腐る過程を実証したレポートも出回っていますが、確かに異常に長持ちするようです。

STATISUTA」という、あらゆるものの統計を調査して発表するサイトで、アメリカ人がどれだけトゥインキーを食べるのかアンケート調査した結果があります。

 過去30日間にホステス社のスナックケーキ「トゥインキー」を何個食べましたか? 

 1個から3個と答えた人が約22パーセントでトップでした。ない、またはゼロと答えた人はたったの9パーセントで、あとは多かれ少なかれ月最低一個はトゥインキーを食べたと答えているのです。

 これだけ人気のお菓子ですから、さぞ人々の受けもいいのだろうと思ったら、子を持つ親の方からは、不健康だからうちは決してアレは食べさせないだの、ダイエットの邪魔だから今は禁断の木の実だのと、愛ある回答はほとんど聞かれませんでした。中には、昔はよく食べていたが今あの人工的な甘さは時代遅れ、と切り捨てる甘党グルメもいました。それでも隠れトゥインキー・ファンは多いのか、近所のスーパーやコンビニでは大抵一番目立つ棚にずらりと並べられ、常にお菓子の売り上げのトップランクに位置しているのは明白に思えます。

 トゥインキーの消えたアメリカ

 2012年、親会社のHostessは連邦破産法第11章の適用を申請。 2011年12月25日現在のTwinkieの年間売上は3,600万個(パッケージ)で、前年比20%近く減少しました。理由は世間が健康志向となり、より健康的な食品にめがむいたためと説明。 2012年11月16日、Hostessは正式に「事業を縮小、閉鎖し、象徴的なブランドと施設を含む資産を売却する許可を求めて米国破産裁判所に申し立てを行いました。直後にすべての工場でベーカリー事業が停止されました。これを受けて、多くのトゥインキー・ファンが存続嘆願を募って活動しました。市場からは瞬く間にトゥインキーが消え、残る在庫を求めて問い合わせが殺到しました。どこそこにはまだ残っているとの情報が飛び交い、残り少ないトゥインキーを巡って水面下で争奪戦も繰り広げられたと伝えられています。

 復活したトゥインキー

 新しい親会社がホステス社を買い取ったため、けっきょくトゥインキーは翌年復活しました。製造を見直し、大きさや成分内容も見直されました。この時からです。賞味期限が飛躍的に伸びたのは。新しい賞味期限は発売後26日間です。トゥインキーが最初に発明されたとき、賞味期限はたったの2日でした。オリジナルのバナナクリームのフィリングと同様に、トゥインキーは伝統的に卵、牛乳、バターなどの本物の材料を使って作られていたからです。トゥインキーは本来、家庭で作る本物のケーキのように食べるものだったのです。それが大企業生産品として巨大化するにつれ、まるで別物のように化学的変化を遂げていったのです。

不滅のマスコット・キャラ「トゥインキー・ザ・キッド」



 製造元であるホステス社が生み出したトゥインキーのマスコット・キャラクターはその容貌のダサさで最初から笑いもののタネでした。1971年のデビュー以来20世紀末まで、唯一の味方は未就学の幼児だけで、成長した子供たちはこぞってこのみっともないカウボーイ姿のアイドルを罵倒したのです。しかし時は流れ、21世紀の現代では、希少価値とノスタルジーの対象として再び脚光を浴びています。それはもはやポップカルチャーの寵児のような扱いです。一時は冷遇されていたグッズなども復刻しました。こんなのあったのか、とびっくりするような「トゥインキー・ザ・キッド」のフィギュアやTシャツが新調され、若い世代に愛され始めています。(このように今アメリカでは昔のダサカッコいいキャラクターが改めて見直される風潮があり、この辺りも調べると面白いものが出てきてるのでまた改めてご報告したいと思っております。)


 最後に「トゥインキーの事実」というトゥインキーをネタにしたレポートのいくつかの項目がこのお菓子の偉大さを物語ってるのでご紹介します。

「トゥインキーの事実」

1 トゥインキーの有効期限は約25日です。バニラクリームを入れた甘めのケーキであることを考えれば、驚くべきことではありません。だから結局のところ、Twinkieを買いだめしても意味がありませんが、Twinkieに夢中になることはあるかもしれませんが。

2 トゥインキーが発売されたばかりの頃は、賞味期限が短かった。これは主に、トゥインキーに含まれる乳製品が平均2日しか賞味期限を持たなかったことが原因です。これは明らかに利益率を低下させていました。そこで彼らは人工的な材料で代用するようになり、最終的には賞味期限を25日に延ばすことに成功しました。

3 トゥインキーは、ジェームス・A・デュワー、コンチネンタル・ベーカリーの副社長が最初に考え出したもので、ホステスのブランドで販売されていました。彼は、イチゴの季節外れの時に、クリームたっぷりのイチゴのショートケーキを作るのに使われていた機械を利用する方法を考え出そうとしていました。

4 1980年代、Hostess社はイチゴクリームたっぷりのTwinkieを発売しようとしたが、成功しなかった。

5 トゥインキーは元々バナナクリームが入っていたので、色や形が似ている。第二次世界大戦のおかげで、トゥインキーの中身がより美味しくなったのです。第二次世界大戦中はバナナが不足していたため、バニラクリームに変更されました。第二次世界大戦が終わり、バナナが手に入りやすくなった後も、人々はバニラクリームの方が好きだったので、元の形には戻りませんでした。

6 2006年、ホステスはキングコングのDVDリリースのプロモーションの一環としてバナナ入りトゥインキーを復活させた。

7 "Twinkie "という名前もJames Dewar氏が考え出したものである。トゥインキーという名前もジェームス・デュワーが考え出したもので、マーケティング会議に向かう途中、「トゥインクル・トーズ・シューズ」の広告看板を見て「トゥインキー」という名前を思いついたそうです。

8 トゥインキーに含まれる人工的な成分の中に、トゥインキークリームの滑らかな感触を与えるセルロースガムがあります。このセルロースガムは、ロケット燃料にも含まれています。

9 トゥインキーに含まれているのは燃料だけではありません。人工的なバターフレーバーを構成する化学物質は、それ自体が石油由来なのです。

10 トゥインキーのもう一つの怪しくて興味深い成分は、「コーンデキストリン」です。これは、トゥインキーにほどよくしっとりとした粘り気を与えています。この素晴らしい成分は、封筒の裏などに使われている接着剤にも含まれています。

11 トゥインキーを構成する39種類の成分のうちのあるものは、厳密には保存料というより、保存剤そのものであることがわかっています。トゥインキーに含まれる他の化学物質の中には、保存の代償に副作用があるものもあります。それは主に乳製品の代用品として使用されるものです。

12 そのわずかに不健康な性質(150カロリーずつ、脂肪のかなりの量が含まれている)にもかかわらず、倒産前のホステス社は、1分間に1000個以上のトゥインキー、または年間約5億個を生産していました。

13 ホステス社によると、標準的な電源付き電子レンジでトゥインキーを爆発させるのに約45秒かかるそうです。(意味不明。なんでそんなこと公表するの?)

14 映画「ゾンビランド」で食べたトゥインキーは偽物でした。菜食主義者であるウディ・ハレルソンは、本物のトゥインキーを食べることはありませんでした。彼が食べていたトゥインキーはコーンミールから作られたものでした。ベジタリアン仕様だったのです。

16 記者の間では「トゥインキー・ディフェンス」というスラング用語が使われています。これは、ジョージ・モスコーネ市長とハーヴェイ・ミルク監督を殺害したダン・ホワイトの裁判で初めて登場しました。被告ホワイトの弁護団は、ホワイトは重度のうつ病に苦しんでおり、トゥインキーを常食にしていることを、彼のうつ病の兆候として利用していると主張したことから派生したスラングです。(注:実際には、被告はそんなに激しくトゥインキーばかり食べてたわけじゃなかったそうです)

17 現在の公式世界記録は、1分間に食べたトゥインキーの数が14個で、これは競争食の小林尊氏が記録したものですが、この人は1分間に24個食べました。彼は最初に水につけて2個ずつ食べて、1分で24個も食べたのです。ギネスブックに登録されているはずです。

18 栄養士のマーク・ハウブは、ジャンクフード以外はほとんど食べずに体重を落とすことができるかどうかを確かめるために「トゥインキー・ダイエット」を行ったことがあります。体重減少は、どのような食べ物を食べるかよりも、摂取カロリーに主に結びついているという彼の理論をテストしたのです。彼は主にトゥインキー、ドーナツ、ドリトス、オレオ、糖質の高いシリアル(ただし、プロテインシェイクを飲み、マルチビタミンを取った)の1日1,800カロリーの食事に固執しました。最終的に、彼の体格指数は28.8から24.9に低下し、彼がダイエットにこだわった2ヶ月間に27ポンドを失い、201ポンドから174ポンドに減少しました。彼の理論から体重の減少を予想していた彼が驚いたのは、彼の「悪玉」コレステロール値が通常の健康的な食事よりも20%低下し、「善玉」コレステロール値が20%上昇したことでした。さらに彼は、トリグリセリドなどの「悪い」脂肪レベルを39%も落としてしまったのです。

 などなど、まさにトゥインキー・トリビアの数々がその人気を物語っているのです。

 もうここまでくると、単にお菓子の話ではないですね。食文化にまつわるエピソード群です。これほどまでにアメリカ人に親しまれるトゥインキー。私も自分の子供たちが幼いころはよく一緒にいただきました。遠足のお供にも欠かせないアイテムでした。長じて健康を考えるようになってからはすっかり遠のいてしまいましたが、買い物に出かけるたびにみかけるトゥインキーはいまも昔も変わりません。

 きっとこれからもアメリカ人の空腹を満たし、健康の議論の的となり存続し続けるのことでしょう。

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