2020年9月13日日曜日

アメリカで人気の日本の小説

 村上春樹を洋書で読む



 文学の世界で、アメリカ人が知る日本人作家といえば、村上春樹がダントツです。

 これは中国でも同じだそうで、同氏の書が翻訳されている世界各国軒並み、日本人作家といえばまず挙げられるのが、村上春樹だということです。

 一昔前ならアメリカでは古典の森鴎外、俳句の松尾芭蕉、近代文学では安部公房あたりが、日本ならび日本語を勉強する人たちから人気を得ていたということです。でも時代は変わりました。村上春樹はその無国籍的な物語世界が読み安さに繋がり、高い評価を受けています。ともすれば日本人の描く小説は日本人にしかわからない人情の機微だとか、日本独特の文化、風習を注釈なしに逐語訳されたものが多いので、とっつきにくかったのです、加えて英語訳の難易度が高く、原作者の微妙で曖昧な表現をうまく英語に翻訳消化しきれないものが多かったのです。

 村上春樹の場合は、文体が独特なのに明瞭で、リーダビリティが高いので、一度物語世界に踏み込んでしまうと、ぐいぐい引き込まれていきます。

「風の歌を聴け」「羊をめぐる冒険」「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」「ダンス・ダンス・ダンス」「ノルウェイの森」「中国行きのスローボート」「TVピープル」「ねじまき鳥クロニクル」「海辺のカフカ」「1Q84」「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」などなど、振り返ると私もけっこう読んでいました。とくに初期のクールで簡潔な文体の中にそこはかとなく溶け込む透き通った物悲しさに惹かれました。とくに「羊をめぐる・・・」などは多感な学生時代に読んだので、打ちのめされるほどの感銘を受けたものです。

 さすがノーベル賞候補だけあって、ほとんどの作品は英訳されているようです。日本の作家でこれだけの分量を英訳された作家は他におらず、その人気の高さがうかがえます。アマゾンのキンドル版でも主だった作品は出ているので、書店で手に入らなくても、すぐに何かしら読むことができます。

 読書で得る感動は世界共通なので、お友達に日本文学を勧めるならやっぱり村上春樹が一番だと思います。アメリカで一番読まれている村上作品は「ノルウェイの森(Norwegian Wood」ですが、それと合わせて「海辺のカフカ(Kafka on the Shore)」や「色彩を持たない・・・(Colorless Tsukuru Tazaki and His Years of Pilgrimage)」などが読みやすいので、入門にはよろしいかと。

 どうせ読むなら、ぜひ日本語版と英訳版をひとセット揃えてチャレンジしてください。とにかく面白いので飽きずに読了できるはずです。まず日本語版を読んでから英訳本を読むと理解が早まり、英文解釈のいい勉強になると思います。

 いやいや文学の洋書は敷居が高いよ。そういう方にはもっと優しい村上春樹本があります。

「かえるくん、東京を救う」英訳完全読解(NHK出版)と


「象の消滅」英訳完全読解(NHK出版)です。


 これらはNHK ラジオ「英語で読む村上春樹〜世界の中の日本文学」からの書籍化です。いずれもキンドル版が出ているので、すぐにでも手に入ります。

 文学としてはもとより、英語の勉強にも最適な一冊なのでまずはココからがよかろうと思います。本作は同氏の作品を英訳し、原作と見開きで並行して読めるようになってます。わかりやすい解説も加えた非常にためになる一冊なので、これから洋書を読もうとする人にも、村上春樹は初めてという人にもちょうどいい入門書です。ぜひお試しください。



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