2020年9月7日月曜日

アメリカで暮らしを買う

 ウォルマートの闇ふたたび


 アメリカで住んでいる方々は、日常生活に必要なものを、どこで買っているのでしょうか。

 一番多いのは、ずばりウォルマートだと思います。なにせこの全米をカバーする巨大チェーン店はアメリカ広しと言えども、他に比肩できる企業がないのです。強いて言えば最大のライバルはアマゾンということになるでしょう。

 アマゾンが台頭して以来、あまたの大型小売店が敗退、縮小を余儀なくされる中、ウォルマートだけは依然として全米小売業界のトップに君臨し続けています。

 その成功の理由の一つが、ウォルマート・スーパーセンターの確立です。これ以前からウォルマートは日常品の大半をカバーしていましたが、食料品だけは扱っていませんでした。既存の同業他社と同じ規模で鍔迫り合いをする大手小売店のひとつに過ぎなかったのです。しかし食料品を大幅に扱うようになり、巨大なウェアハウス規模の店舗の三分の一を食料が占めるようになりました。こうして業績は一気に拡大したのです。

 客にとっては一店舗ですべての買い物が完結するので、利便性がとても高いのです。しかも大量に商品を仕入れる強みで、すべての価格が他社よりも安くなりました。ここでウォルマートは一気呵成に、全米規模で郊外のそれまで大型店の存在しなかった地域に、スーパーセンターを投入したのです。既存の小売店はたまったものではありません。安い上に物量で圧倒するウォルマートの大攻勢に、抗う店はあっというまに一掃されていったのです。

 こんなウォルマートですから、いまや一人勝ちの状態。業界二位の「ターゲット」という店も最近食料品を扱いだしましたが、ウォルマートに遠く及ばない状況です。昨今は店舗のスタイルを上品にして、棲み分けを試みているのが現状です。

 そんなウォルマートですが、さすがに今年に入って流通に異変が起きています。コロナウィルスの影響で、商品の仕入れ状況がが思わしくないのです。春頃からトイレットペーパーやペーパータオル類が品不足になり、補充が追いつかなくなりました。多くは工場の生産ラインが滞ったことによるもので、他店も同様でしたが、時間がすぎると各店は他の流通経路を見つけて補充し始めました。が、ウォルマートは需要の多さに追いつけない状態がいまでも続いています。ペーパー類の棚が依然としてガランとしているのは、ウォルマートにしては異例なことなのです。

 夏の衣料も一部需要と供給のバランスが崩れ、夏物のスポーツウェアなどが売り切れて再入荷できず、売り場ががらんとした状態になりました。窮余の一策として、数週間も前倒しで、去年の秋物を在庫からひっぱりだして陳列し始めたのには驚いたものです。

 一番びっくりしたのは家電、とくにパソコン関連です。とにかく数ヶ月も品薄状態を解消できずにいるのです。

 私は春頃から自宅のラップトップ・パソコンが動きづらくなって、買い替えを検討していました。これまでパソコン類はたいていBest Buyで購入してきたのですが、ウォルマートに寄ったときに、同系機種がどれも50−80ドル近くも格安で販売されていたので、今回はウォルマートで買ってみようと思ったのです。いちおう下調べをして、希望のメーカー、機種、スペックを頭に入れてウォルマートに行きました。

 忙しそうな店員をつかまえて、「あのラップトップ・パソコンを見せてください」とお願いしたのです。デモ機はずらりと並んでいるのですが、その店員は機種を確認もせず、「いま在庫がありません」というのです。私は食い下がり、「では隣の機種を見せてください」と言ったら、店員はため息を付いて、「それも在庫切れ」と言うのです。私は諦めずに予算を上回る別のラップトップを指差しました。

 すると店員は「ないです、それもこれも、いまみんな在庫切れです」と言い放ったのです。

 もう何人もの客に同じことを言ったのでしょう、ああうんざりといった顔つきです。私は仕事で使うパソコンが早急に必要だったので、「じゃあ、注文だしてください。いつごろ届きますか?」と訊きました。すると店員は諦め顔で「オーダー受け付けていません。発注してもいつになるかわからないので、できないんです」

 「ほかにどれならあるんですか?」私はやけ気味に食い下がると、「これならまだ在庫があります」とクロームブックの一番安いやつを示されました。学生向きの低スペック機です。私には使い物になりません。「えっ、これだけ?」絶句しました。

 見渡すと店頭の陳列台には30台以上のラップトップが並んでいました。しかしそれらはみんなただの飾りだったのです。たった一台を除いて、パソコンの在庫はゼロ! 実際に客が買いに来るまで、そのことを知らせることすらしないのです。なんてことでしょうか。

 あの天下のウォルマートがこんな状態だなんて本当におどろきでした。

 そんなわけで、パソコンはいまだ買えてまえん。仕事に遅延が生じています。

 それはともかく、ウォルマートという巨大企業は一人勝ちのゆえのおごりが見え隠れします。利用者としてはこれ以上のほころびを見せてほしくないので、なんとか頑張って、優良店の座を取り戻してほしい、そう思うのです。

 参考までに、以下にウォルマートがアメリカでいかに大きな存在であるか、アウトラインを記しておきます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ウォルマートは全米に4230以上の店舗、海外には6100以上の店舗がある。

ウォルマートの平均的売上高は一時間に1.8ミリオンドル。一時間1億円ぐらいの売上です。

毎日37億人がウォルマートで買い物しています。これはカナダの人口より多い数です。

ウォルマートは220万人の従業員を抱えている世界最大の民間企業。

ウォルマート・スーパーセンターの扱う商品の量は14万種。

経営者ウォルトン・ファミリーの総資産は、ビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェット、マイケル・ブルーンバーグを足したよりも多い。

アメリカの富豪10人のうち、4人がウォルトン家。

ウォルマートのCEOは平均的な従業員の1034倍の収入を得ている。

2014年、ウォルマート売上高は4760億ドル。その年一番売れた商品はバナナ。

アメリカ人の95%は、ウォルマートまで15分以内のところに住んでいる。

ウォルトン家は全財産の約2%を慈善事業に寄付している。ちなみにウォーレン・バフェットは純資産の78%、ビル・ゲイツは48%を寄付している。


引用 :
SoftSchool.com / Walmart Facts
Business Insider / 12 crazy facts hardly anyone knows about Wal-Mart



 


0 件のコメント:

コメントを投稿