2020年9月11日金曜日

アメリカのジャンク・スナック王

 エンテンマンズのパワー


 アメリカが誇る(というか嘆いて欲しい)ジャンクなスナックを紹介するシリーズの第二弾です。前回は全米駄菓子界のプリンセス、「リトルデビー」「ドレイクズ・ケイク」「ホステス」をエントリーしましたが、今回もジャンク・スナック界の貴公子あるいはプリンスをご紹介します。

Entenmann's

 この名を知らないアメリカ人はいないでしょう。なにせこのEntenmann's、どんなスーパーマーケットを訪れても、いやでも目につくポジションに必ず特設コーナーを設けているのです。この売り場の独特のポジション取りは、いかなる広告よりも強力で、店の一角じたいがエンテンマンズの出店ブースのような、前線基地の役目を果たしているのです。

 エンテンマンズの独自性は、パッケージにも現れています。ほぼすべての商品を同一のボックス型の紙箱に統一し、白とブルーのスッキリしたデザインを末永く使い続けています。またエンテンマンズは世界で最初にシースルーの箱パッケージを発明したスナック・メーカーです。これにより消費者は中身がどんなものか、実物を見ることができ、売上の大幅な伸びにつながったと言われています。

 エンテンマンズの主力商品はまずドーナツでしょう。ツルンと光沢のあるチョコレートがコーティングされたRIch Frosted Donuts。これが何故か、アメリカ人にものすごく人気があるのです。

 エンテンマンズの広報にはこんなセールストークが書かれています。

「チョコレート好きの方、万々歳!」

私たちの濃厚なフロストチョコレートドーナツは、チョコレート天国の味わいです。まさにチョコレート好きに絶好の一品。しっとりとしたイエローケーキをリッチでシルキーなチョコレートでコーティングしたこのドーナツは、チョコレート好きにはたまりません。

「外出先で最高の朝食をお探しですか?」

濃厚なフロストチョコレートドーナツは、週末にコーヒーを飲みながら日曜新聞を読むのもぴったりですし、外出先でも簡単に朝食として食べられます。忙しい朝だからといって、味に妥協する必要はありません。

私共ののチョコレートドーナツは、車の中でも、職場のデスクでも、外でキャンプをしているときの朝食のおやつにも最適です。ドライブや旅行のおやつにも最適です。誰もが笑顔になること間違いなしです。

このドーナツは朝食だけではありませんよ

濃厚なフロストチョコレートドーナツは、おいしいデザートにもなります。ディナーパーティーの後にゲストにお出ししたり、深夜のおやつとしてお一人でお楽しみください。深夜のおやつに、氷で冷えたミルクグラスにドーナツを沈めて食べるのは最高です。

 このくどいばかりの宣伝文句は他の商品にも繰り返し転用され、まるで呪文のようにあま〜いジャンク・スイーツの世界へといざないます。

 ドーナツのほかには、「ニューヨーク・スタイル・クラム・ケーキ」とか「バナナ・ケーキ」とか「マーブル・ローフ・ケーキ」、「チーズ・ダニッシュ・ツイスト」などが売れ筋です。それ以外にも季節ごとにスペシャル・ケーキを用意し、これからの季節はパンプキン風味を素材にしたハロウィン向けのケーキが発売されます。

 これはアメリカ市民に紛れ込んだ私の一般的な見解ですが、味や食感はジャンク・スナックの中では、上等な部類に入ると言えるのではないでしょうか。甘さもアメリカの水準からするとやや抑えている感があります。値段も味相応にちょっと高めの設定で、独自のステータスを保ち、他社とは一線を画しているように思えます。健康のことを度外視さえすれば、多くのアメリカ人に支持され続けている実績は納得できます。

 私はその昔、通勤経路の近くにエンテンマンズの卸売倉庫があって、よく立ち寄ったものです。一部が一般消費者に開放され、山積みされた在庫商品が半額近い卸値で買えたのです。これらは売れ残ったものや賞味期限が迫ってきたものですが、多くの地元民や遠路はるばる買い求めに来る人でいつもごった返していました。私も会社の同僚向けによく数箱をまとめ買いして社に持ち帰っておりました。それはなかなか評判でしたが、中には私をエンテンマンズの回し者扱いする人もいたものです。

 そんな思い出も込みで、今回はエンテンマンズをご紹介させていただきました。決して上品とは言えないまでも、甘さだけで押し通す凡百のジャンク・スナックとは一線を画するエンテンマンズ。これからもアメリカの駄菓子業界で独自の地位を守り続けていくことでしょう。



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