2020年9月8日火曜日

アメリカのオンライン授業

 手腕問われる学校


 新学期になって最初の週が終わりました。生徒、保護者、教職員と三者それぞれが暗中模索での船出となりました。

 うちの子ふたりはニューヨークの公立高校と州立大学ですが、どちらもオンライン授業での新学期となりました。高校の場合は、2つ選択肢があって、全てオンライン、もしくは週に2,3日交代制の登校で他の日はオンラインというやり方です。当初教室にはカメラが先生向けにしかなくて、自宅の生徒は先生しか見えませんでした。これでは授業の臨場感に欠け、どのクラスメートが一緒に同じ授業を受けているのか全くわかりません。もちろん参加生徒の名簿はあるのですが、家のパソコンのモニター越しにクラスメートが見えないのは、窮屈で閉塞感があるし、先生とマンツーマンのようで、気が抜けないというのです。もちろん先生からはモニター上の生徒を含め、教室の生徒全員を見て講義しているのですが、自宅と学校、両生徒同士でギャップがあるのは否めないのです。

 これは新学期始まって早々そういった要望が、複数寄せられたということです。いま学校側は、先生視点のカメラを設置するか検討しているということです。しかしそうなると、こんどはひょっとしたら教室側の生徒からも、オンライン側のクラスメートを見たいという意見がでるのではないかと邪推してしまいます。

 要はなにが言いたいかと言うと、自宅オンラインの生徒と、教室の中で授業を受ける生徒との間に、差ができてしまっては、あとから保護者側からクレームが出るのではと懸念するのです。それでなくてもアメリカは教育の平等にうるさいので、ささいなことでも重箱の隅を突くように言われがちなのです。日本でもモンスター・ペアレントがたびたび取り沙汰されますが、こちらでは弁護士を巻き込んだ訴訟問題も珍しくないのです。

 いまのところ、うちの娘はオンライン授業でやっていけそうですが、やはり友達に会えない日常は味気なく、自宅での授業は早く終わってほしいと感想を述べています。

 いっぽう上の娘が通う大学は、学校側の決定で、今季の授業をどうするかは基本、講師の判断に委ねられました。すなわち先生が今季はオンラインでやるか、教室でやるか決める権利を与えられたのです。というのも、いまアメリカでは大学内でのコロナ感染が一番の問題となっているからです。ABCニュースの報告によると、アイオワ大学では授業を再開した直後一週間に600人の生徒らの感染が確認されたそうです。

 こういった学内の感染拡大は中西部の州に多く、アラバマ大学でも8月19日以降、1000人以上の感染が確認されたそうです。このような1000人規模の学内感染報告は全米十校以上にのぼり、依然予断を許さない状況なのです。いずれも学内でのパーティ等が主な原因で、マスクを付けずに大人数が一箇所に集まる姿がたびたび報道されています。

 しかしながら、生徒の多くは高い授業料を払って入学したのに、オンライン授業では身が入らないと反発しているほうが多数派です。いっぽう教授、講師側は、キャンパス内では生徒たちの行動をコントロールできないと、感染拡大の不安を顕にしています。

 うちの娘も学内授業のほうが断然身が入ると、オンキャンパスを希望していました。私はパーティなんかに参加しない。ただ授業を受けたいだけ。そう言っているのです。  

 しかし娘の受ける選択科目のすべての教授、講師が今季はオンラインのみと決定したのです。選択の余地はありません。それでいて教授からは一冊100ドル以上もする、教科書を必ず買うように指示されたといいます。BlackboardというZoomに似た機能のオンライン講義専用アプリを使って、可能な限りライブ感を出して授業するそうです。しかしフタを開けてみると、講師の一人は、完全にエクセルとパワーポイントだけで授業を始めたというのです。臨場感もなにもあったものじゃありません。まるで機械かロボットから講義を受けているようで、まったく身が入らないと、娘は憤慨しています。

 こういった異例の事態で始まった新学期。教える側も学ぶ方も、なかなかじゅうぶん納得のいく結果は得られそうにありません。みんながそれぞれの意見や疑問を出し合って、少しづつ軌道修正しながらこのコロナの時代を進んでいくしかない、そんな状況を感じています。

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