2020年7月20日月曜日

マンハッタン周辺の現状

ニューヨークを走ってみた



 ここ一週間、カーサービスの仕事で、お客さんを乗せて、あちこち走り回りました。
 三ヶ月あまり閑古鳥の鳴いていたこの業界ですが、徐々にお客さんが戻りつつあるようです。ただし、これは感染拡大が収まりつつあるニューヨーク州と近隣のニュージャージー州、コネティカット州に限ったことでの話です。
 全米規模で見ると、コロナウィルスは依然拡大の傾向にあります。とりわけ南部の各州は感染者数の拡大に歯止めが効かない状態です。大きな病院でも病床不足が深刻化しつつあり、これは4月頃のニューヨークを彷彿とさせる深刻な事態です。


 ニューヨークは3月の後半から急激な拡大が始まり、あわてて市内をロックダウンしました。かなり強制力の強い官庁指示だったため、多大な犠牲者が出ましたが、かろうじて最悪の事態は回避できました。
 ひごろ、自由を最優先に生活するニューヨーカーがここまで我慢したのは、私には驚きでした。行動の自由、お上の権限からの開放、それがリベラルなニューヨーカーの基本精神なのですから。逆に言えば、それほど4月5月は逼迫した恐怖のどん底にいたということです。毎日何百人という人が重症化し、死んでいくニュースはいまでも悪夢のように蘇ります。


 4月の中頃、どうしても必要に迫られて、マンハッタンのミッドタウンの行ったのですが、そのときはまさにゴーストタウンという感じでした。昼間というのに人の通行はまばら、警官や道路管理関係者と、あとは配送トラックが目立つぐらいでした。一般の歩行者はほぼ皆無。異常な光景でした。
 とりわけタイムズ・スクエア界隈は、信じられないくらいの静けさでした。日頃はミュージカルや買い物で賑わう店などがピタッとシャッターをおろしていて、まるで白昼夢を映すホラー映画のよう。気味が悪いくらいでした。


 あれから三ヶ月、再び私が訪れたのは、マンハッタン南部のSOHOでした。朝の10時ぐらいでしたが、やや人通りは戻ってきているものの、以前のSOHOとは比べ物にならないほど、いまだ閑散としています。普通は、このあたりは車でどこへ行くにも忍耐と注意が必要な地帯です。とにかくいつでも渋滞が絶えず、しびれを切らして黄色信号を通過しようとすると、前後左右から人や自転車が飛び出してくる。もう危ないったらありゃしないのです。ただでさえ、狭くて不規則に交差点、一方通行がある場所なので、運転は冷や汗モノ。ところがこの日はどっちの方角へもスイスイと移動できます。いかに車両が減っているのか一目瞭然なわけであります。

 それはSOHOだけではありません。いつもは観光客で賑わうバッテリー・パーク周辺もバス、イエローキャブ、黒リムジンが通常の10分の1以下に見えました。
 翌々日にはセントラル・パーク近くのコロンバス・サークルへも行きました。こちらは運輸関連のトラックがけっこう目立ちましたが、やはり交通量は少なめ。通行人も行楽客らしき姿は稀で、通勤者らしき人と働く人ばかりが目立ちました。一様にマスクは着用しており、このマスク習慣のないアメリカでもかなり、定着してきた印象です。

 ただ、どこのマンハッタン地域でもたまに見られたのは、小さな群衆です。これは期せずして集まってしまったもので、たまたま数人単位のグループどうしが、狭い道や店舗の出入り口で、かち合ったものと見られます。狭いマンハッタンの歩行路ではこんな不測の事態も起きがちなので、通りを歩くときはぜひ注意してください。マスクをしていないグループもいないとはいえませんから。

 ところで、いまアメリカではこのマスクを巡って、必要、不要論が激しく対立しています。
 いらない派は、外気のあるところでマスクはナンセンス。空気は四方八方へ飛ぶのでなんの効果もない、というのです。必要派はこれまでのマスク着用の実効性を元に擁護します。広いアメリカですから、いまだマスクをしていない地方もたくさんあります。地獄を垣間見たニューヨーカーだからこそ、最低の義務として公共の場ではマスクをするようになっているのでしょう。

 ニューヨーク近郊の空港へも仕事で行きました。ラガーディア空港とジョン・F・ケネディ国際空港です。両空港とも、やはり便数自体が激減している現在、交通量も以前の比ではないくらい閑散としていました。しかし確実に国内便飛行機利用者は増えているので、今後の水際対策が、第二波の抑止に大きく関わってくるものと見られます。
 特にニューヨーク州は他州からの流入が、例外的に多い州なので、まだまだ安心はできない状況です。

 ブロンクスの町も仕事で行きましたが、町は平静が見られるものの、昔のような活気はみられませんでした。マンハッタンとはちょっと違う活気のなさです。
 多くの商業施設はカテゴリーに分けられ、段階的に再開が許可されているのです。にもかかわらずブロンクスの店は閉じたまま。すでに数ヶ月にわたるロックダウンの影響で持ちこたえられず潰れてしまった店が多いのです。閉じられた商店街のシャッターが痛々しく映りました。

 都心近くはこのように、まだとても今までどおりとはいえません。ニューヨークの他の地方では大型店舗が開き始めています。場所によっては出入り口が混雑している商業施設も散見しました。ですから今、買い物に行くには要注意です。本当に必要なものだけに的を絞って買い物の回数を制限するほうが賢明です。
 このように7月中旬、この時点でもニューヨーク近辺はそこかしこに緊張が漂っています。外へ出たいのは誰しもが持つ心理ですが、いまはもう少し我慢が必要な時期であります。
 ニューヨークへお越しの用がある方はご注意を。とくに人気の観光地はまだ安全とは言えません。外出にはよく場所を選んで、事前の情報収集を怠りなきよう、お願いいたします。

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