2020年7月24日金曜日

タオル vs 手ぬぐい

日米タオル比べ


 


 日本とアメリカでは、タオルの大きさが違う。これ皆さんは気にしたことがありませんか。そんなに大差ないように思われがちですが、このサイズの微妙な差は、国民の生活習慣に由来しているのです。


 アメリカのホテルでは、部屋にかならず三種類のタオルが用意されています。すなわちアメリカ人は日常生活の中で、主に3つのタオルを使い分けるのです。

 一番大きいのがバスタオル。二番目がハンドタオル、そしてウォッシュクロスです。

 アメリカの人はバスタオルをシャワーのあとに体を拭くだけではありません。体に巻いて、しばらくその格好でいることが多いです。なので大柄な人でもくるっと体を覆えるように日本のそれより遥かに大きく作られています。

 中間サイズのハンドタオルが、日本の手ぬぐいに相当するのですが、これも日本製より分厚くて吸水性に富んでます。いわゆるパイルと呼ばれるループ状の糸が太めのコットンを使うのが主流となっています。素地の部分もふわふわで柔らかい生地が多く、二枚ほど重ねて畳むとまくらやクッション代わりにもなりますよね。一方手ぬぐいは、ご存知のように薄い生地が多く、乾きやすい特徴があります。そうでないものもありますが、傾向としては日米のタオルのそういった違いが見られます。


 アメリカのホテルに来た日本人は大抵の人が、ハンドタオルを持ってシャワーを浴びます。風呂場で手ぬぐいを使う感覚で普通にそちらを選択するのです。そしてそれで体を洗います。

そのとき日本人はふと気になります。「このタオルちょっと短かすぎるなー」と。しかも分厚すぎて水含むと重たい!

 一方でもしアメリカ人がそれを見たら戸惑うでしょう。体を洗うのは四角いちっちゃなタオル、すなわちウォッシュクロスが常識です。「あいつなんでシャワーにハンドタオル持ち込むんだ」って思うこと間違いなしです。


 どうしてこんな違いが出るのでしょうか。

 アメリカのハンドタオルは、平均24インチx15インチです。面積は360 sq in.

 日本人が最も日常で多く使う手ぬぐい。それは34 in x 13.5 in。面積は 459 q in.です。

 日本のほうが長く、面積も大きいです。なぜでしょう?

 日本人はこのサイズにこだわります。なぜなら、体を洗うのに丁度いいサイズだからです。

 なぜ? とアメリカ人に聞かれたらどう答えますか。小さな体の日本人が、なぜアメリカより長いタオルをつかうのか?


 それはズバリ、背中を洗う習慣があるからです。そう言うと、当然アメリカ人はムッとするでしょう。勘違いされたくないので言いますが、決してアメリカ人を見下しているのではありません。風習の差です。 

 背中をしっかり洗う日本人、適当に洗うアメリカ人。ここにタオルの大きさの差が出るのです。

 ある時、私は親しい知り合いのアメリカ人に手ぬぐいを渡して、言いました。

「日本製の手ぬぐいを持ってください。両端を掴んで背中に回す。のこぎりのように左右に振ってごらん。ほうら、背中を洗えるでしょう。そのために日本のタオルは長いのです」

なるほど、と言って納得するかと思いきや、そのアメリカ人はちょっと自尊心を傷つけられたのか、憮然として言いました。

「ぼくは毎日背中も洗ってる」と。

 はい、確かにそうです。でも残念ながら、ウォッシュクロスでは背中をまんべんに洗うのはかなり無理があるのです。背中全面に届く人は意外に少ないのです。日本人は背中も、胸や手足と同様にきっちり洗いたいと思い、そんな意識がタオルを長くしました。

 いや厳密には背中目的ではないでしょうが、自然とそういう発想でサイズが決まったのだと思います。人間の体の皮膚はどこでも同じ条件で汚れるのですから、そう思うのも自然なことじゃないでしょうか。 

 アメリカ人の多くはそこまで細かく考える必要はない、ということなの知れません。


 日本には銭湯、つまり公衆浴場というものがあります。数十人を収容できて、他人同士のコミュニケーションにも役立てる場所です。アメリカでは、かつて床屋がその役割を担っていました。古き良きアメリカでは、床屋が地域のコミュニケーションの場でした。

 最近はどうかわかりませんが、日本では昔から銭湯でよく見かけるのが、親子による背中のウォッシングです。とくに子供が親に対して背中を洗う習慣。見ていて微笑ましいですよね。それぞれ自前の手ぬぐいで洗えるのですが、敢えて親愛のコミュニケーションとして、洗いにくい背中を洗ってあげるのです。日本人にとって、それはとても心地よい光景なのです。


 誤解を承知で言わせてもらえれば、日本人は背中を大切にする民族です。それは衣服を着ていても同様です。日本人は相手の背中を見て状況を想像し、気持ちを感じ取ったりするのに敏感です。


 タオルの長さにも、民族の機微が現れている。そんな考え方も一興ではないですか?  


0 件のコメント:

コメントを投稿