2020年7月5日日曜日

縮小、アメリカ独立記念日

ミニマル・インデペンデンス・デー



 2020年、今年の7月4日、アメリカ独立記念日は、歴史に残るほど、小さな祝日となってしまいました。第2次世界大戦中でも、こんな自粛ムードはなかったと聞きます。
 町の古老サンデル翁85歳によると、戦争末期の1945年の夏もいつもどおりの、独立記念日で、町はお祝いムードに沸いたと言います。パレードが町の大通りを練り歩き、鼓笛隊がにぎやかな軍楽を響かせたそうです。この年、日本は各地で空襲が相次ぎ、日本が最終決戦に向け、生きるか死ぬかの瀬戸際をさまよっていた頃です。特にこの日はすごかった。香川県高松市に100機以上のB-29爆撃機が現れ、無数の焼夷弾を雨あられと叩き落とした日です。この日だけで日本は10万人近くの犠牲者を出しました。




 アメリカ国民はそんな詳細もつゆ知らず、独立記念日を楽しんでいました。星条旗を飾り、野外でバーベキューを楽しむ市民。国力の違いがありありと浮かんできます。
 ところが今年はどうでしょうか。今年のアメリカ独立記念日は、かつてないほど小規模なものとなりました。まるで敗戦国ですか。いやそこまでは言いませんが、とにかく今までないほど地味で華やかさのないホリデーとなってしまいました。
 町は日中こそ人通りが多めでしたが、例年と比べると全くの閑古鳥です。多くのレストランは開店したものの、室内の席数は通常の25%までと定められ、外に出されたテーブルだけが、かろうじて埋まる状態でした。
 パレードがないのはなんとか我慢しましょう。これまでも、私は毎年パレードを見てきたわけじゃありません。家内の実家にでかけたり、仕事のときもありました。でも独立記念日の華と言えば花火です。日本人に負けず劣らず、アメリカ人も花火見物は大好きです。とりわけ独立記念日には全米いたる所で花火イベントが催されます。私などはある年の独立記念日、花火見物のはしごをしましたから。打ち上げ時間に地域によって差があるので、事前に情報さえあれば、数カ所の花火を見て回れるのです。
 ところが今年は多くの地域でキャンセルが相次ぎました。うちの町でもみんな楽しみにしていましたが、結局今年は見送られることになりました。驚いたのは、隣というか、ハドソン川を隔てて向こう岸にあるウェストポイント陸軍士官学校の花火もキャンセルなのです。こちらもかなり有名で伝統的な行事なので、なんとか実施すると期待していたのですが、残念です。
 最後の望みはテレビで見るマンハッタン名物、メイシーズ主催の花火大会です。こちらは数週間前から実施を約束していました。ただし、人混みを避けるため、数夜に渡って、マンハッタンのどこかで行われるとしか、告知がなかったのです。これは賢明な判断でしょう。どこか場所が指定されたら、見やすいスポットに人が群がるのは目に見えていますから。そして当日の今夜がメインイベントです。今夜はマンハッタンの複数の場所で同時に行いました。そのラストのメインイベントで行われたのが、エンパイヤステートビルディング。マンハッタン内外、近辺の人はわざわざ出歩かなくても家の窓から観られるくらい大規模な花火でした。
 私たちのように、遠方の者はテレビ中継で見られます。近頃はみんなテレビ画面が大きくなって、それなりに花火の美しさ、豪快さを堪能できます。もちろん実際に見るのとは大差がありますが、ないよりずっとマシです。アメリカの花火は日本のような繊細さとは無縁。ただしスケールは半端ありません。豪快そのものです。火薬の量が違うのでしょうね。赤白青と、アメリカ国旗を基調としたエンパイヤから四方八方に放たれる花火はなかなか圧巻でしたよ。
 萎縮したニューヨーク経済、アメリカ社会を鼓舞するように、夜空に広がる光の祭典をみながら、世界の回復を心から祈る夜でした。

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