2020年7月13日月曜日

アメリカで売れる日本のSUV

日本車は生き残れるか



 日本車がアメリカ市場に参入して以来、すでに70年近くの月日が流れました。いまどんな日本車が売れているのでしょう。
 まず全体像から言うと、アメリカの自動車市場は堅調ですが、セダン・タイプの車は2014年をピークに売れ行き下降傾向が続いています。入れ替わるようにSUVタイプの車が売上を伸ばし、2018年から販売台数は逆転しています。これはアメリカの自動車史上、画期的な転換期に達したと言われています。日本のワンボックス・カーというカテゴリーは存在しないので、実質上いま一番売れるのはSUV(クロスオーバー含む)です。(厳密にはアメリカでワンボックスカーに相当するカテゴリーはピックアップトラックで、これはSUV以上に売れていますが)
 米国においてミッドクラスのSUVは激戦区で、日本のメーカーは人気、売上ともにリードしているものの、決して予断をゆるさないデッドヒートを繰り広げています。
 とくにこのクラスは競合車がひしめいているのも特徴です。
 
 トヨタ:RAV4 
 日本でも第5世代のRAV4が復活して話題になりました。アメリカでもRAV4は、デビュー以来ずっとトップクラスの人気を維持し続けており、実質SUVのパイオニアにしてブームの牽引役を担ってきました。ひさびさにフルモデルチェンジした最新のRAV4は、スタイルが斬新です。多角形を多用してよりアグレッシブな印象を与えました。4WDで走行中、車が自動でガソリン効率を計算し2WDに切り替わる省エネ設計。ハイブリッド・モデルも発売と同時にこのクラスで一番の売上を記録しました。
 スバル:フォレスター
 この車種も歴代シリーズが売れに売れまくっています。私も過去愛車として使用していました。なんといってもステアリング性能がとても素晴らしい。多くのアメ車を乗っていて気になるのが、このハンドルの切り回し感です。遊びが大きいせいか、大味の調整がどうしても気になります。とくにヘアピンカーブが連続するコースなどだと、その差は歴然です。その点フォレスターは、どんなコーナーリングでもイメージ通り、寸分の違いもなく走行してくれます。このきめ細かさこそ、日本の匠だと感じるのです。
 マツダ:CX-5 
 アメリカでは、現行マツダ車のラインアップはシンプルです。このSUVでは小さいモデルから順にCX-3、CX-5、CX-9。セダンのほうはMazda3、Mazda5。あとはCX-30やハッチバックといった派生バージョンのみです。これまでアメリカの数ある自動車メーカーの中で埋もれがちだったマツダ車ですが、全車種フルモデルチェンジした5年前を契機に、アメリカでも一気にマツダ人気に火が付きました。なんといってもスポーツカーと見紛うばかりのスピード感に溢れたデザインが注目されました。そしてアメリカでも称賛を浴びるあのマツダの赤色です。ソウルレッド・プレミアム・メタリックと呼ばれる独特の光沢をはなつ色彩が、路上でもとても目を引く魅力に満ちています。
 日産:ローグ
 2007年アメリカでデビューするや、売れに売れた商品です。アメリカではサブコンパクトSUVにカテゴライズされるこの車ですが、日本人には普通にミドルサイズです。5人乗り仕様ですが、室内はやや狭めで体格の大きいアメリカ人には後部座席3人は無理。しかし適度な小型感がウケたのか、若い人を中心に支持者層はどんどん広がりました。パワー不足は否めませんが、安定した走行には定評があり、今後もこのクラスの標準車として人気を維持し続けていくでしょう。
 ホンダ:CR-V
 アメリカで道を走っていて、どのSUVが多いかと言うと、このCR-Vに並ぶものはないでしょう。それくらいすごいシェアを誇っています。エンジンの基本性能が素晴らしく壊れにくいのも評判で、4,5世代前の古いモデルが普通に今も走り回っています。一回り小さな弟分のHR-Vもデビューしてすぐ若い世代を中心に大人気となりました。この二台でホンダはアメリカの中、小型SUVの市場をリードしていくことは想像に難くありません。

 さてこれら日本車はすべて人気、売上トップクラスではありますが、そううかうかしてはいられません。アメ車はもとより、ヨーローッパ勢も小型中型SUVに本腰を入れてきています。

 シボレー:これまでEQUINOXはやや大ぶりで、サイズ的に必ずしも日本のミドルSUVと競合しなかったのですが、デザインを一新して新たにこの市場に参入してきました。しかしシボレーはその上のクラスのBLAZERがものすごいスポーティかつ斬新なデザインで再スタートを切ったので、こちらのほうが注目度が高めでしょう。
 ドッジ:かつてDURANGOはガソリン消費率がひどかったのですが、新型は軽量化を図り人気も上々です。JOURNEYは廉価版SUVですが3列シートの強みがあります。
 ジープ:数年前にデザインを一新して以来、これまでのワイルド系おっさん自動車メーカーが生まれ変わりました。デザインではいまアメリカで一番来ているメーカーでしょう。主力商品CHEROKEEは細目のハロゲン・ヘッドライトが精悍で話題を呼び、RENAGADEもユーモラスで独特の箱型スタイルが可愛いと話題になりました。
 GMC:多くの自動車ブランドを傘下に置くアメリカ最大手のGM。TERRAINやACADIAがこのクラスの競合車種となりますが、これまでは大型車主流の販売戦力だたので、いまだ人気車種を生み出すには至っていません。
 フォード:日本車をとても意識したサイズ感のESCAPE。エンジン仕様やパワートレイン、内装に至るまで日本車かなと思わせる出来ですが、売れ行きはいまいちのようです。しかしフォードといえばEXPLORER。こちらはもはや大型SUVの売れ行きナンバーワンの地位を不動のものにしています。なにせ全米の警察が主要パトロールカーとして導入していますから。
 フォルクスワーゲン:ヨーロッパ勢ではスワーゲンのTIGUAN、ATLASが日本車の強力なライバル。燃費も日本のそれと引けを取らず、安定した走行性能でもアメ車を頭一つ先んじています。落ち着いたデザインも日本にはないタイプで評価も別れます。
 ヒュンダイ:侮れないのが韓国産のヒュンダイとKIAです。日本では知られていませんが、アメリカの自動車レビューで影響力のある、US News誌などでは近年、日本車、アメリカ車より高い評価点が付くのが目立ちます。それに裏付けされるように、販売実績も右肩上がり。TUCSONやSANTAFEが売れ筋ですが、気がつくと現時点SUVは7車種も出ています。小型から大型、ハイブリッドに電気と、まさにスキのないラインアップ。いかにアメリカ市場に力を入れているかがわかります。

 以上、中型SUVを中心としたアメリカでの車事情をお伝えしました。依然として日本車の人気および信頼性はゆるぎませんが、今後は間違いなくエレクトリック・カー、そして自動運転が販売戦略のキーポイントとなって行くでしょう。日本車がリードを守っていくのかどうか、今後の動向に注目が必要です。

0 件のコメント:

コメントを投稿