2020年7月31日金曜日

歯の治療現場へ行く

抜歯しました



 コロナウィルスが全米で猛威を振るう真っ最中ですが、私、歯医者に行きました。
 パンデミックを受け、行政指導で春先から三ヶ月ほど臨時閉鎖されていましたが、ようやくの再開です。通知を受け、たくさんの患者が殺到したため、再予約を申請してから二週間待たされました。
 予約の時間に行ってみると、入口の外で待つ人が数人います。その後ろに立つと、前の人が中に入るよう促します。言われるままにドアを開けると、扉にはマスク着用義務のサインがデカデカと。ソーシャルディスタンスを意識して、マスクをしつつエクスキューズミーを静かに連呼しながら、中に入りました。

 かつてはなかった受付専用の窓口が設置され、その場所に先客がいて係の人と話をしています。椅子は通常通り10脚ほどあるのですが、間隔を開けて座っているのは二人のお年寄りのみ。その間に座れるような空気ではありません。患者は互いに視線をチラチラと寄せて、距離感を図り合っている感じです。狭い待合室には5人ほどしかいないのになんだか息苦しい雰囲気。
 私が受付申請を待つ間に、すぐに後ろに二人加わり列ができました。ますます圧迫感のあるシチュエーションです。ようやく受付の女性に私の名前を告げると、彼女が額の温度を測り、直近2週間で他州に行ったかとか、グループで集まったかとかの問診がありました。その後、受付の女性は待合室が混み合ってきたことに気づき、私を含め数人に外で待機するよう言いました。
「え?」と思いました。この日は摂氏32度を超える猛暑です。歯がズキズキする中、マスクをして外で立つのは厳しすぎます。彼女は、順番が来たらお電話しますので、車でお待ち下さいと言うのです。
 やっぱりここはアメリカですね。全員車での来院を見越しての処置です。みんな文句を言うこともなく外に出ていくので、私もやむなくエアコンの利いた待合室を出ました。
 車で待つこと20分ほどで、呼び出しがかかり、無事治療にこぎ着けました。しかしこんな経験はなかったので、これもコロナの時代の対応策かと得心した次第です。
 
 ここの歯科医は部屋が完全個室型で、各部屋にカーテンが敷かれ安全対策は基準内に見えました。治療は普段どおりで、他の患者との接触も最小限に抑えられ、まずは安心して受けられました。再開通知を受けたときは、行くのを躊躇しましたが、歯は悪化の一途をとっていたので、もう待ったなしでした。結果、行ってよかったと思っています。
 
 当初、家内は歯医者にゆくこと自体を懸念しました。たくさんの患者が出入りする室内で、治療中大きく口を開けていなければならない歯の治療はリスクが高すぎると思ったのでしょう。私も3ヶ月前なら、一も二もなく同意していました。
 
 しかし他州の感染増加を尻目に、いまニューヨーク州の感染率は大幅な減少傾向にあります。ニューヨーク州、なかんずくマンハッタンを中心とする5ボロー地域は、春の早い時期にパンデミックが起きた大都市圏ですが、その後強力なロックダウン政策の施行で大幅にピークを早まらせることができました。今、南部の州から燎原の火のように感染は全米に拡大していますが、今ならニューヨークは小康状態。いつまた他州からの流入で感染第二波が押し寄せるとも限りません。
 私は、歯の治療を受けるのは今しかないと思いました。私の虫歯はもう待ったなしの危機的状況でしたから。
 
 本来は4月初旬に治療を終えるべく予定していたこの虫歯。いやこの歯の異常は前の年の冬頃、歯のクリーニングをしてもらったときに発覚していたのです。犬歯ととなりの歯の間に虫歯ができ、知らずしらすのうちに根本まで悪化していたのです。そうと知ったときはもはや手遅れで、担当医から強力に抜歯を勧められ、やむなく予約をとったのです。
 ところが保険の適用を巡ってスグにはできず、さらに私の常用する血圧治療薬が抜歯の際、出血多量のリスクがあるとかで、かかりつけの心臓医からアドバイスとお墨付き書類を得なければならなくなりました。
 そんなこんなで歯の治療ははどんどん先延ばしとなり、ようやく4月に予約ができたのです。
 そして起きたのがコロナ騒動です。
 歯医者から予約延期の通知が予定日直前に届き、再開の今月まで待たざるを得なくなったのです。この間約3ヶ月。虫歯発見から数えると半年以上になります。
 度重なる延期の末、虫歯はどんどん悪化し、歯がぼろぼろと欠けはじめました。今日ようやく歯医者さんに診てもらったのですが、歯はもはや根っこにしか残ってなかったのです。 
 しかしこの歯医者さん、私が最も信頼のおく名医。歯科世界のブラックジャックとも言えるスーパードクターで、これまで何度もうちの家族がお世話になっています。今回も全く痛みも不快感もなく、抜歯を終えることができました。歯の傷が癒えるまでしばらく不自由ですが、長期に渡っていた懸念が払拭できて安堵しました。いつまたパンデミックが起きて、病院の門が閉ざされるかわかりません。
 歯だけでなく、健康に関することで先延ばししていい案件などありません。みなさんにも、できるときに、できるだけのことはやっておくことをオススメします。

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